↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
364/425

第43章 ➂

師匠が帰った。


翌日。


私はサラと畑にいた。


昨日耕した畑ではない。


その隣だ。


「ここから」


「うん」


「ここまで」


「うん」


サラが歩く。


私も歩く。


少し広い。


いや。


結構広い。


昨日、師匠に止められた場所より広くなっている気がする。


気のせいだと思う。


多分。


「ここ全部?」


サラが聞く。


私は周りを見る。


森ではない。


家の近くの開けた土地だ。


草が生えている。


石もある。


畑にするには大変そうだった。


今までは。


「できる?」


「できる」


即答だった。


便利。


「じゃあお願い」


サラが地面を見る。


考える。


長い。


昨日より長い。


「サラ?」


「モグル考えてる」


邪魔してはいけないらしい。


待つ。


サラが顔を上げた。


「できる」


「何匹?」


聞いてみた。


サラが首を傾げる。


「すごくいっぱい」


増えた。


いっぱいの上があった。


「大丈夫?」


「うん」


サラが地面に手を置く。


「モグルすごくいっぱい」


地面が動いた。


ぼこ。


ぼこぼこ。


昨日より広い。


遠くまで動いている。


草が浮く。


石が出る。


根が上がる。


土が崩れる。


地面が波打ちながら、端から順番に畑になっていく。


私は見ていた。


「おお」


凄い。


昨日より凄い。


しばらくして止まった。


サラが立ち上がる。


「終わり」


私は土を触る。


柔らかい。


石も端へ集められている。


草の根もまとまっていた。


完璧。


「サラ」


「なに?」


「凄く便利」


「うん」


嬉しそうだった。


畑を見る。


広い。


これなら色々植えられる。


ジャガイモ。


豆。


葉物。


カルト芋も増やせる。


ニコが喜ぶ。


トマトみたいなものも欲しい。


あれも。


これも。


考えていると。


「おばさん」


ルークの声がした。


振り返る。


ルークが立っていた。


新しく出来た畑を見る。


私を見る。


また畑を見る。


「何してるの?」


「畑」


「それは分かる」


最近、よく言われる。


「昨日より広くない?」


「増やしたから」


「師匠、増やすなって言ってなかった?」


「帰ったから」


ルークが黙った。


何か変なことを言っただろうか。


「師匠が帰ったから増やしたの?」


「違うよ」


「じゃあ何で?」


「サラがいるから」


サラが頷く。


「できる」


「そういう問題かな……」


ルークまでツッコミを始めた。


師匠がいなくても大丈夫そうだった。


「これ、全部使うの?」


「使うよ」


「何植えるの?」


考える。


色々。


でも。


「まだ決めてない」


「決める前に増やしたの?」


「土地は逃げないから」


「畑も逃げないよ」


確かに。


ルークがため息をついた。


師匠に似てきた。


七年一緒にいたからだろうか。


「増やすのはいいけど、世話できる?」


「サラがいる」


「うん」


サラが頷く。


ルークがサラを見る。


「そういえばサラ、これからどうするの?」


サラが首を傾げた。


「ここにいる」


「それは分かってるけど」


「?」


本当に分かっていないらしい。


ルークが言い直した。


「修行終わっただろ。仕事とか」


「畑」


「畑?」


「うん」


サラが新しく出来た畑を見る。


「おばさんとやる」


私はサラを見る。


初めて聞いた。


「畑やるの?」


「うん」


「冒険者は?」


「ならない」


即答だった。


ルークは少し驚いたようだった。


「前から決めてた?」


「うん」


「いつ?」


サラが考える。


「ずっと」


ずっと。


それでは分からない。


「修行に行く前から?」


私が聞く。


「うん」


そこまで前だった。


「修行終わったら帰る」


サラが言う。


「おばさんといる」


それが当たり前みたいに言った。


私は少し困った。


七年も修行した。


上級まで魔法を覚えた。


だから、その魔法を使う仕事をするものだと思っていた。


冒険者とか。


魔法を使う仕事とか。


でも考えてみれば、サラがそんなことを言ったことは一度もない。


修行に行ったから。


その先も何かあるのだと、私が勝手に思っていただけだった。


「せっかく上級になったのに?」


聞いてみる。


サラが畑を見る。


「使ってる」


そうだった。確かに使っている。


とても役に立っている。


ルークが笑った。


「師匠が聞いたら泣くよ」


「昨日見てたよ?」


「昨日はまだ、これが仕事になるとは思ってなかったと思う」


仕事。


そうなのだろうか。


家の畑だけど。


まあいい。


本人がやりたいなら。


「じゃあ、一緒にやる?」


「うん」


サラが笑った。


決まったらしい。


ルークもそれ以上は何も言わなかった。


少しして。


「ニコのこともあるしな」


ルークが言った。


サラが頷く。


「うん」


私はサラを見る。


「伯爵家?」


「うん」


やっぱり。


「無理に連れていかないって約束したよ」


「今は」


サラが言った。


覚えていた。


伯爵が言った言葉。


今は、それでいい。


サラはあの時、ずっとニコの隣にいた。


聞いていたのだ。


「また来るかもしれない」


「そうだね」


「ニコが嫌なら守る」


「ニコ、寮にいるよ」


「何かあったら行く」


迷いがない。


そのために家に残るわけではない。


サラは最初から帰ってくるつもりだった。


でも帰ってきた今。


守りたいものが一つ増えていた。


いや。


増えてはいないか。


昔からだった。


小さい頃から。


サラはニコを守っていた。


最初はイナからカルト芋を。


今は伯爵家から。


随分大きくなった。


守るものも大きくなった。


「普段は畑?」


ルークが聞く。


「うん」


「ニコに何かあったら?」


「行く」


「分かりやすいな」


「うん」


サラも頷いた。


私も分かりやすくていいと思う。


私は新しい畑を見る。


これだけ広ければ収穫も増える。


家で食べるだけでは余りそうだ。


余ったら売ればいい。


市場。


屋台のおばちゃん。


商人。


色々ある。


「もう少し増やせるかな」


口に出ていた。


ルークがすぐに反応した。


「待って」


サラは隣を見る。


「できる」


「サラも待って」


「どこまで?」


「聞かないで!」


ルークが止める。


私は考えた。


まだ土地はある。


サラもいる。


人手の問題はかなり減った。


だったら。


もう少しだけ。


本当に少しだけ。


増やしてもいいと思う。


「おばさん」


「なに?」


「今、何考えてる?」


「何も」


「嘘だ」


失礼だ。


まだ何もしていない。


考えているだけだ。


多分。


師匠が帰った翌日。


ツッコミはいなくならなかった。


ルークに引き継がれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。