第41章 ⑥
会議室は静かだった。
若い役人が依頼書を見ている。
年配の役人も手を伸ばした。
紙を受け取る。
もう一度読んだ。
「確かに妙だな」
そう言った。
何が妙なのかは分からない。
でも。
役人達の顔は真面目だった。
「何がおかしい?」
ギルドマスターが聞く。
年配の役人は紙を机へ置いた。
「普通は逆です」
「逆?」
「まず本人確認を行う」
「その後、保護や引き取りの話になる」
なるほど。
順番がおかしいらしい。
「この依頼書は、本人確認の前に保護下への移送を求めています」
「見つけたから返せ、という形だな」
商人が言った。
役人は頷いた。
「そのようにも読めます」
おばちゃんの顔が険しくなる。
「九年も探してなかったのに?」
「探していなかったかどうかは分かりません」
役人は即座に否定した。
「それも調べます」
公平だった。
私は少し安心する。
年配の役人が新しい紙を取り出した。
「グライナー伯爵家には追加の資料提出を求めています」
「どんな?」
「捜索記録です」
部屋が静かになる。
「行方不明になった当時の届出」
「捜索の記録」
「聞き込み」
「懸賞金」
「探索依頼」
指を折りながら並べる。
「探していたのであれば残っています」
当たり前だった。
探せば記録が残る。
商人も頷く。
商人だから帳簿は大事らしい。
「九年分か」
「はい」
若い役人が言う。
「特に近年の記録は重要です」
「何故だ?」
ギルドマスターが聞く。
「九年前は手掛かりがなくても仕方ありません」
「ですが、九年間まったく進展がなかったのに、学園の首席発表直後に発見したとなれば話は別です」
部屋が静かになった。
全員が同じことを考えたらしい。
私も考えた。
首席。
首席だった。
「首席取ったから?」
思わず言った。
役人達が私を見る。
「可能性の話です」
年配の役人が答えた。
「現時点では何とも言えません」
でも否定もしなかった。
ニコが黙っている。
私は隣を見る。
ニコは机を見ていた。
少しだけ唇を噛んでいる。
「ニコ」
声をかける。
ニコが顔を上げた。
「首席が悪いんじゃないよ?私はニコが頑張った結果だから嬉しいよ」
しばらく沈黙。
それから。
「うん」
小さく頷いた。
年配の役人が書類をまとめる。
「本日の確認は以上です」
「結論は出たの?」
私は聞いた。
「まだです」
予想していた。
大体まだだった。
「ですが一つだけ言えます」
役人は私を見た。
「現時点で、あなたを誘拐犯と判断する証拠はありません」
良かった。
私は誘拐犯ではなかったらしい。
最初から違う。
役人達は席を立った。
書類を箱へ入れる。
帰る準備だった。
その時若い役人が振り返る。
「そういえば」
嫌な予感がした。
大体こういう時は面倒事だ。
「グライナー伯爵家の方々も、数日後にこちらへ来る予定です」
やっぱり面倒だった。
私は天井を見た。
首席の表彰を見に行った。
帰ってきたら誘拐犯になった。
今度は伯爵家が来るらしい。
首席は大変だ。




