第41章 ④
翌朝、ニコと学園を出た。
伯爵夫婦は、朝早く町を離れたらしい。
私達も馬車へ乗り、二日かけてノルベルクへ戻った。
町の入口では、ギルドの職員が待っていた。
「ギルドマスターがお待ちです」
何かあったらしい。
ギルドへ行き、そのまま奥の部屋へ入る。
中にはギルドマスターと商人。
カイルとミラ。
それから、屋台のおばちゃんもいた。
「おかえり」
ミラが言う。
「ただいま」
ニコが答えた。
全員の顔が怖い。
私に怒っているわけではない。
多分。
「何があった?」
ギルドマスターが一枚の紙を机へ置く。
「グライナー伯爵家から、正式な調査依頼が届いた」
私達が馬車に揺られている間に、魔導通信で送ったらしい。
内容を読む。
小さい。
紙を離す。
隣からニコが読んだ。
「未成年者の略取及び身元隠匿の疑い」
「何?」
「僕を誘拐して、身元を隠したんじゃないかって」
「誰が?」
部屋が静かになる。
ギルドマスターが私を見る。
「お前が」
私だった。
「いつ?」
「九年前だ」
「私、洞窟にいたよ?」
「ああ」
ルークとサラとイナが暮らしていた洞窟へ、私も住ませてもらっていた。
それから町へ来た。
おばちゃんの屋台へ行った。
ギルドで料理を売った。
商人と食べ物を作った。
温泉を見つけた。
家も建てた。
その後だった。
「三人を見つけたのは私だよ」
おばちゃんが腕を組む。
「温泉の小屋に、カイルとミラとニコがいた。三人まとめて、この人の家へ連れていった」
私は家にいた。
子供が三人届けられた。
「俺達がニコを拾ったのは、その前だ」
カイルが言う。
「街道の近くで一人だった」
「服は、私達のより良かった。でも、貴族の服ではなかった」
ミラが続ける。
「家の紋章もなかった」
九年前にも聞いた話だった。
ギルドマスターが別の紙を出す。
私達が初めて町へ来た頃の記録。
料理を売った日。
商人と取引を始めた日。
温泉の工事。
家を建てた時期。
カイル達三人が保護された日。
その後、六人でギルドへ来た日の記録もある。
ニコの身元が分からないことまで書かれていた。
「隠してない」
「ああ。最初から話している」
「なら終わり?」
「相手が納得すればな」
面倒だった。
伯爵家の紙には、調査が終わるまでニコを伯爵家の保護下へ移すようにとも書かれている。
「行きません」
ニコが言った。
声は震えていない。
「この依頼だけで引き渡すことはない」
ギルドマスターが答える。
良かった。
「事情を確認するため、領都から役人が来る。それまで勝手に町を離れるなとも言われている」
「森の家には帰れる?」
「町の外だぞ」
「家なのに?」
森へ帰れないらしい。
「追放ではないの?」
「何故、残念そうなんだ」
残念ではない。
出ていけと言われたら、出ていくだけだった。
今回は反対だった。
ニコが私の袖を掴む。
私は、その手を握った。
首席の表彰を見に行った。
帰ってきたら、誘拐犯になっていた。




