↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
346/425

第41章 ① 

あれから一年が過ぎた。


ニコは十二歳になった。


長い休みには森へ帰ってきた。


背が少し伸びていた。


持ち帰った本も増えていた。


服より本の方が多い。


ミラが縫った服は、まだ着られた。


袖だけ少し短くなっている。


直してもらうように言うと、自分でやると言った。


失敗した。


結局、ミラへ持っていった。


学園からは、毎月手紙が届いた。


授業のこと。


寮の食事。


図書室で見つけた本。


同じ部屋の子の寝言。


困っていることは書かれていない。


聞いても、特にないと返事が来た。


本当にないのかは分からない。


でも、帰ってきた時の顔を見れば大丈夫そうだった。


家は静かなまま。


私とイナだけの生活にも慣れた。


食事を作りすぎることは減った。


食器も最初から一枚だけ出せる。


少し寂しい。


でも、楽だった。


そんな頃、学園から手紙が届いた。


一年を通した成績が決まったらしい。


ニコが首席になった。


驚いた。


ギルドマスターへ見せる。


驚かなかった。


書記にも見せる。


やはり驚かなかった。


何故、私だけ驚くのだろう。


手紙には、表彰式へ来るように書かれていた。


保護者も出席できる。


行く。


馬車で二日。


遠い。


でも、行く。


表彰式の日。


学園の大きな広間には、生徒と保護者が集まっていた。


服が綺麗な人が多い。


貴族だと思う。


私の服も綺麗だった。


ミラが作った。


白髪は隠せない。


気にしない。


前の方に生徒が並ぶ。


ニコを見つけた。


一年で少し大きくなった。


私に気付き、笑う。


手を振ろうとしたが、隣の教師を見てやめた。


真面目だった。


名前が呼ばれる。


「一年次首席、ニコ・ノルベルク」


ニコが前へ出る。


学園長から紙を受け取る。


広間に拍手が響いた。


私も叩く。


手が少し痛くなるまで叩いた。


ニコが一礼して戻る。


その時、斜め前に座っていた女が立ち上がった。


年は三十代くらい。


良い服を着ている。


ニコを見たまま、動かない。


顔色が悪かった。


隣の男が腕を支える。


「どうした?」


女は答えない。


ニコの髪。


目。


顔。


一つずつ確かめるように見ている。


やがて、小さな声を出した。


「ニコラウス……?」


ニコには聞こえなかったらしい。


自分の席へ戻る。


女だけが、まだ見ていた。


式が終わる。


ニコが私のところへ来る。


「来てくれた」


「首席、おめでとう」


「うん」


嬉しそうだった。


鞄には、青い革紐と五十円玉が付いている。


一年経っても、失くしていない。


帰る前に食事へ行こう。


そう話していると、教師が近付いてきた。


その後ろに、さっきの女と男がいる。


女は近くでニコの顔を見る。


手を伸ばしかけ、止めた。


「お名前を、もう一度聞いてもよろしい?」


ニコが私を見る。


私は女を見る。


「先に、自分から名乗って」


女の目が私へ向いた。


驚いている。


何故だろう。


知らない人へ名前を聞くなら、自分から名乗る。


普通だった。


男が一歩前へ出た。


家名を告げる。


聞いたことがあった。


八年前の記録に書かれていた、貴族の名前だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。