↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
342/425

第40章 ②

次の日、ニコとギルドへ行った。


ギルドマスターの部屋で、送られてきた記録を見せてもらう。


古い紙だった。


端が傷み、文字も少し薄くなっている。


小さい。


目から離す。


ニコが横から読む。


「もっと近くで見た方がいいよ」


「見えてる」


見えにくいだけだった。


行方不明になった子供の名前は、ニコラウス。


八年前、三歳。


髪と目の色はニコと同じ。


いなくなった場所も、カイル達がニコを拾った場所から遠くない。


父親は貴族。


家名も書いてある。


でも、服装が違った。


記録には、家の紋章を縫い取った上着を着ていたとある。


カイル達が覚えているニコの服は、それより質素だった。


自分達の服よりは良かった。


でも、貴族の子供が着るようなものではない。


紋章もなかった。


「着替えさせられた可能性はある」


ギルドマスターが言う。


「誘拐?」


ニコの顔が強張る。


「可能性の一つだ。今は何も分からない」


名前。


年齢。


外見。


場所。


同じところは多い。


それでも、ニコがニコラウスだと証明するものはなかった。


捜索の依頼も、七年前に終了している。


理由は書かれていなかった。


「知らせる?」


私が聞く。


「何をだ」


「似た子がいるって」


「知らせない」


ギルドマスターは記録を閉じた。


「これだけでは、本人だと断定できない。相手が貴族なら、なおさら軽々しく話を持ち込めん」


同じ考えだった。


ニコを見る。


「調べたい?」


少し考えてから、首を横に振った。


「今はいい」


なら、今は終わり。


記録は元の箱へ戻された。


話が済んだので帰ろうとする。


ギルドマスターが止めた。


「もう一つ、ニコのことで話がある」


また何かあった。


ニコが緊張する。


「悪い話ではない」


机の引き出しから、別の紙を出した。


町の名前。


学園の名前。


授業の内容。


文字。


計算。


歴史。


地理。


法律。


商業。


他にも並んでいる。


ニコの目が紙から離れなくなった。


「この町で教えられることは、もう少ない」


書記からも同じ話があったらしい。


仕事に必要な知識なら、これからも教えられる。


でも、ニコはそれだけでは足りない。


「推薦を出せる」


「学園に?」


ニコが聞く。


「ああ。試験に受かれば入れる」


「本もある?」


「図書室がある」


ニコの目が輝いた。


多分、もう行きたい。


私は紙を見る。


「遠い?」


「馬車で二日だ」


遠かった。


「毎日帰れない?」


「全寮制だ」


聞いていない。


紙を見る。


書いてあった。


小さい文字ではない。


見落とした。


「休みは?」


「長い休暇には帰れる」


毎日ではない。


ニコは十一歳だった。


もう十一歳。


でも、十一歳だった。


「費用は?」


「入学試験の成績次第で免除される。首席なら、寮費と食費も学園が負担する」


首席。


簡単に言う。


「受からなかったら?」


「推薦は出さない」


ギルドマスターが答えた。


自信があるらしい。


私はニコを見る。


「行きたい?」


ニコはすぐに答えなかった。


紙を読む。


私を見る。


また紙を見る。


「もっと勉強したい」


小さな声だった。


でも、迷ってはいなかった。


寂しくなる。


家には私とイナだけになる。


それでも、ニコが行きたいなら止められない。


「試験を受けよう」


ニコが頷く。


出生の記録を見つけた日。


ニコには、もう一つの道も見つかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。