第39章 ⑨
三か月の試用期間が終わり、ミラとフリッツは結婚した。
今度は準備する時間があった。
ミラの衣装は、エマと仕事場の仲間達が作った。
本人も縫いたがったらしい。
でも、自分の服は自分で寸法を測れない。
途中まで手を出して、最後は椅子へ座らされたと言っていた。
白い布ではない。
淡い青色の服だった。
袖と裾に、フリッツの工房で染めた濃い青の布が使われている。
フリッツも同じ色の布を胸元へ付けていた。
二人で作った衣装だった。
式には、カイルとリーゼ。
ルークとサラ。
ニコ。
ハンスとエマ。
商人とギルドマスターも来た。
フリッツの両親もいる。
母親は泣いていた。
ミラの手を握り、何かあれば頼ってほしいと言った。
家へ押しかけるとは言わなかった。
少し安心した。
式が終わる。
食事をする。
テオは歩けるようになっていた。
人の間を進み、皆に食べ物をもらっている。
私が止めた時には、両手にパンを持っていた。
一つ取り上げる。
泣いた。
もう一つは残した。
初孫には少し甘くなる。
仕方ない。
リーゼは椅子へ座っていた。
いつもより食べる量が少ない。
顔色は悪くない。
でも、時々お腹へ手を当てている。
私はカイルを見る。
カイルが目を逸らした。
怪しい。
「何かある?」
「ある」
今回は素直だった。
リーゼが笑う。
「二人目ができました」
早い。
違う。
テオが産まれてから一年は過ぎている。
普通かもしれない。
「いつ分かった?」
「少し前」
「何で今まで言わなかった?」
カイルの肩が動く。
「今日、皆が集まるから」
理由はあった。
ミラの結婚式で言う必要があるかは分からない。
私はミラを見る。
ミラは笑っていた。
「おめでとう」
先に言った。
なら、いい。
皆も二人を祝う。
おめでたいことが増えた。
フリッツの母親までリーゼへ近付き、体を冷やしてはいけないと言っている。
世話を焼きたい人らしい。
リーゼの家には行かないでほしい。
カイルが止めるだろう。
止めなければ、私が後ろから拳骨を落とす。
帰る時間になる。
ミラはフリッツと、二人で借りた家へ戻る。
結婚しても家は変わらない。
それでいい。
ルークとサラは、もう少し町に泊まる。
カイル達も自分の家へ帰った。
私はニコと森へ戻る。
イナも一緒だった。
歩きながら、ニコへ話しかける。
ミラの衣装。
テオが食べすぎたこと。
リーゼの二人目。
返事はある。
でも、短い。
前なら、二人目が産まれるまでに必要な金額や、町の子供の人数を調べ始めていた。
今日は何も聞かない。
最近、ニコの元気がなかった。
ギルドから帰ると、考え込んでいる。
本を開いても、同じ頁を見ている。
食事を残すほどではない。
眠れてもいる。
聞けば、何でもないと答える。
ギルドで何かやらかしたのかもしれない。
でも、大事ならギルドマスターが何か言ってくる。
ニコはもう十一歳だった。
言いたくないこともある。
自分から話すまで待つ。
そう決めた。
ただ。
何か隠している気がする。




