第39章 ⑥
五日後。
フリッツが、もう一度森へ来た。
今度はミラと二人だった。
カイルもニコもいない。
手には紙を持っている。
「それは?」
「収入と貯金を書いたものです」
「答えは?」
「書いていません」
ならいい。
二人を椅子へ座らせる。
再面接を始める。
「ミラのどこが好き?」
フリッツはすぐに答えなかった。
前とは違う。
考えている。
「上手く言えません」
「うん」
「最初は、綺麗な人だと思いました」
そこは同じだった。
「でも、今は……」
フリッツがミラを見る。
「ミラさんは、困っている時ほど大丈夫と言います」
今度は私が止まった。
「何で分かった?」
「返事が短くなるからです。笑っていても、俺の顔を見なくなります」
ミラが少し下を向く。
当たっているらしい。
「そういう時、どうする?」
「前は、大丈夫と言うなら大丈夫だと思っていました」
「今は?」
「何かあったか聞きます。話したくないなら、話せるまで待ちます」
「待つだけ?」
フリッツは困った。
また考える。
「俺が原因かもしれない時は、自分が何をしたか考えます。仕事や家のことで疲れているなら、俺にできることを探します」
「分からなかったら?」
「ミラさんに聞きます」
完璧ではない。
でも、分かったふりはしなかった。
「ミラの味方になれる?」
「なりたいです」
「なれる、じゃないの?」
「絶対になれるとは、まだ言えません」
正直だった。
「間違えると思います。でも、間違えたままにはしたくありません」
ミラがフリッツを見る。
前の綺麗な答えより、良かった。
次。
一番大事なこと。
「親とは別居する?」
フリッツの背筋が伸びた。
「します」
「親は?」
「反対しています」
「何て言った?」
「俺は長男だから、結婚したらミラさんが家へ入り、工房と家の仕事を手伝うものだと」
駄目だった。
予想通り。
「フリッツは?」
「断りました」
「それで?」
「別居を認めてもらえないなら、工房を出ると伝えました」
「仕事は?」
「まだ辞めません。先に、別の染色工房で雇ってもらえるか確認します」
勢いだけで辞めるつもりではない。
「ミラに、親を説得してもらう?」
「頼みません」
「何で?」
「俺の親だからです。俺が話します」
良かった。
「私も行く」
フリッツが驚く。
「いいんですか?」
「先に自分で話した。次は一緒に話す」
親と喧嘩をしたいわけではない。
近くに住んでもいい。
家業を継いでもいい。
行き来もすればいい。
でも、住む家は別。
そこだけは譲らない。
「面接は?」
フリッツが聞く。
「合格」
肩から力が抜けた。
「ただし」
また固まる。
「別居が決まるまで、結婚は保留」
「はい」
フリッツは、今度は迷わず答えた。
ミラも頷く。
次は、向こうの親との面接だった。




