第39章 ②
カイルとリーゼが町へ戻る時、私も付いて行った。
リーゼの親へ会うためだった。
ニコも来た。
「僕は必要?」
「紙を見る人」
カイルが持ってきた生活費の計算を、もう一度確認してもらう。
私よりニコの方が早い。
リーゼの家は、革製品を売る店の近くにあった。
父親と母親が待っている。
父親はカイルを見ると、少し怖い顔をした。
殴った人だった。
でも、追い返しはしなかった。
二人は結婚を認めている。
家も別。
仕事も続ける。
子供が産まれる前に、婚姻の手続きをするという。
「何か困っていることは?」
私が聞くと、リーゼの母親が答えた。
「出産の後、誰がリーゼと赤ん坊を見るかです」
カイルは仕事がある。
リーゼの母親も店で働いている。
ずっと休むことはできない。
「私が見る」
全員が私を見た。
「森から通うのか?」
カイルが聞く。
「リーゼが森へ来る」
「産まれたばかりの子を連れて?」
駄目らしい。
考え直す。
「じゃあ、町へ泊まる」
「ニコは?」
「僕も町に泊まれる」
ニコが自分で答えた。
ギルドへ通うには、その方が近い。
イナだけは森に残せない。
連れてくる。
カイルの家へ、私とニコとイナ。
入るだろうか。
多分、狭い。
「出産の後で決める」
まだ三か月ある。
家の広さも見る。
必要なら、近くに部屋を借りればいい。
リーゼの母親も、仕事を休める日を確認する。
交代なら何とかなる。
話は決まった。
結婚式は一か月後になった。
大きな式ではない。
家族と、親しい人だけ。
ルークとサラへ手紙を出した。
二人とも帰ってくると返事が来た。
ミラにも知らせる。
すぐにカイルの店へ行ったらしい。
その日の夕方、カイルが森まで来た。
「ミラに怒られた」
「何て?」
「何で六か月まで黙ってたって」
同じだった。
兄妹だった。
結婚式の日。
町の小さな広場に家族が集まった。
ルークは、また背が伸びていた。
サラも髪が長くなっている。
ベルタも一緒だった。
ミラはリーゼの服を整えていた。
白い服ではない。
淡い青の服。
お腹が苦しくならないように、ミラとエマが直した。
カイルは商人が用意した上着を着ている。
少し緊張していた。
二人は町の書記の前で、名前を書く。
夫婦になること。
同じ家で暮らすこと。
産まれてくる子供を、二人の子として届けること。
一つずつ確認する。
小さい文字はない。
ニコも読んだ。
最後に、カイルとリーゼが署名した。
皆が拍手する。
私は二人を見る。
カイルが初めて森へ来た時は、十歳だった。
妹とニコを守りながら歩いていた。
今は、自分の家族を作ろうとしている。
「おめでとう」
私が言うと、カイルが笑った。
「ありがとう」
リーゼも頭を下げる。
「これから、よろしくお願いします」
「うん。困ったら来て」
カイルが笑う。
「最初から、それなんだ」
大事だった。
困ってから、一人で抱えない。
結婚しても同じ。
家族が一人増えた。
三か月後には、もう一人増える予定だった。




