第37章 ①
買ってきた布は洗った。
灰汁を入れた湯で煮る。
よく濯ぐ。
干す。
乾いた物を畳んだ。
オムツ。
敷く布。
拭く布。
分けて置く。
小さな桶も用意した。
赤ちゃんのお尻専用。
間違えないように、持ち手へ布を結ぶ。
赤い布。
目立つ。
多分、間違えない。
汚れたオムツを入れる桶も別にした。
こちらには蓋をする。
水差しを置く。
最後にカバンを開けた。
保温水筒を出す。
五百ミリ。
朝、町へ持って行った物とは別の水筒。
地球にいた時は、温かい飲み物を入れていた。
今日からは、お湯を入れる。
赤ちゃん用。
火にかけていた湯を注ぎ、蓋を閉めた。
これで夜中に起きても大丈夫。
次にタオル地のハンカチを出す。
まだ使っていない。
地球の物だった。
少し迷う。
残しておきたい。
でも、麻布より柔らかい。
洗えば何度も使える。
今日から、おしり拭きにする。
全部、寝床の近くへ置いた。
準備は終わり。
夜中。
赤ちゃんが泣いた。
大きな声ではない。
ふえ。ふえ。
そんな声。
目を開け抱き上げる。
濡れていた。
保温水筒から、小さな桶へお湯を注ぐ。
水を足し指で確かめる。
ぬるい。
タオル地のハンカチを濡らし、軽く絞る。
拭く。
新しいオムツに替える。
赤ちゃんは少し泣いた。
抱き上げ背中を軽く叩く。
すぐに静かになった。
息子も夜泣きはしなかった。
お腹が空いた時。
オムツが濡れた時。
用事がある時だけ泣いた。
この子も、今のところは同じらしい。
助かる。
寝かせる。
私も寝る。
朝、目を開ける。
赤ちゃんが起きていた。
泣いてはいない。
でも、落ち着かない様子で足を動かしている。
抱き上げる。
分かった。
大だった。
サラが起きる。
ニコも起きた。
二人とも、赤ちゃんを見て寄って来る。
「待って」
二人が止まった。
「今は、そこで見てて」
サラが首を傾げる。
ニコも同じように傾げた。
赤ちゃんのオムツへ手を掛ける。
少し開く。
閉じる。
やはり大だった。
サラとニコが一歩近付く。
「来なくていい」
二人が止まる。
昨日は近くても良かった。
今日は駄目だった。
イナも来る。
鼻を上げて匂いを嗅いだ。
そして止まる。
少し考えた後、離れていった。
正しい判断だった。
私は専用の桶を取る。
保温水筒のお湯を少し。
水を足す。
指を入れる。
大丈夫。
タオル地のハンカチを濡らす。
赤ちゃんの足を持ち上げる。
オムツを外す。
懐かしい。
懐かしいけど。
嬉しくはない。
オムツで汚れを落とし拭く。
濡らしたハンカチで拭く。
肌が赤くなっていないか見る。
大丈夫そう。
乾いた布で水気を取る。
新しいオムツを当てる。
終わり。
赤ちゃんを毛布へ戻す。
サラとニコがすぐに寄って来た。
終わったことは分かるらしい。
二人で顔を覗き込む。
赤ちゃんも二人を見る。
私は汚れたオムツを持って外へ出た。
中身を落とす。
水で流す。
濯ぐ。
後でまとめて洗って煮る。
紙オムツなら包んで捨てられた。
これは捨てられない。
布だから何度でも洗う。
家へ戻る。
手もよく洗う。
朝ご飯を作る。
昨日買ったカルト芋が目に入った。
赤ちゃんにも食べられる。
柔らかく煮て潰せばいい。
でも、芋はお腹が張る。
最初から使わなくてもいい。
芋を戻す。
ニンジンを一本取った。
皮を剥く。
先の方を少しだけ切る。
小さく刻み、鍋へ入れる。
柔らかくなるまで煮る。
その間に、みんなの朝ご飯も作った。
ニンジンが柔らかくなる。
取り出し匙で潰す。
湯を少し足す。
粒が残らないように、もう一度潰した。
量は少し。
この子が以前、何を食べていたのかは分からない。
だから一種類ずつ。
少しずつ。
赤ちゃんを抱いて座る。
匙の先へ、潰したニンジンを少し載せる。
口元へ運ぶ。
赤ちゃんは匙を見る。
口を開けた。
食べる。
口を動かす。
飲み込む。
嫌そうな顔はしない。
サラとニコが隣で見ている。
近い。
でも、今度は見ていてもいい。
「食べた」
サラが言う。
「たべた」
ニコも言う。
赤ちゃんへ、もう一口。
また食べた。
少し待つ。
顔を見る。
口の周りを見る。
変わった様子はない。
もう一口。
今日はここまで。
残ったニンジンは私が食べた。
赤ちゃんは、もっと欲しそうに口を動かしている。
でも、最初だから少しだけ。
次に食べさせる時、少し増やせばいい。
カルト芋も、そのうち。
お腹の様子を見ながら。
サラが赤ちゃんの口元を見る。
ニコも見る。
少し黄色い。
「拭いていい?」
サラが聞く。
私はタオル地のハンカチを見る。
駄目だった。
それはお尻用になった。
別の柔らかい布を濡らし、サラへ渡す。
「優しくね」
「うん」
サラが赤ちゃんの口元を拭く。
ニコも手を出そうとする。
でも、拭く場所はもう無かった。
少し残念そうだった。
オムツを替える。
ご飯を食べさせる。
洗う。
また干す。
やることが増えた。
でも、やり方は分かる。
道具も用意した。
これなら大丈夫。




