表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
305/311

第35章 ⑥ 

研究所の騒動から、一週間ほど経った。


何も起きていない。


町で新しい騒ぎが起きることもない。


中央研究所が動いたという話も聞かない。


私が知らないだけかもしれない。


でも、少なくとも家の周りは静かだった。


朝起きる。


ご飯を作る。


畑を見る。


町へ行く。


帰ってくる。


少しずつ、いつもの暮らしに戻っていた。


壁際の荷物は、そのまま。


使う物だけ出している。


少し邪魔だった。


でも、まだ片付ける気にはなれない。


もう大丈夫。


そう思って全部戻した日に、何か起きそうだった。


気のせいかもしれない。


それでも戻さない。


今日も朝ご飯を食べた。


片付けをしていると、イナが外へ出ていった。


いつものことだった。


しばらくして。


戻ってくる。


でも、家には入らなかった。


戸の前を行ったり来たりしている。


ルークが外へ出た。


「どうした?」


イナはルークを見る。


それから走った。


少し進んで止まる。


振り返る。


「イナ?」


ルークが近付くと、また走る。


森の奥。


洞窟の方だった。


ルークも追いかけていく。


私は二人を見送った。


何だろう。


また何か見つけたのかもしれない。


私は鍋を洗う。


しばらくして。


外から足音が聞こえた。


速い。


戸が開く。


「みー!」


ルークが息を切らしていた。


「どうしたの?」


「赤ちゃん」


「ん?」


「洞窟の前に、赤ちゃんがいる」


私は手を止めた。


意味が分からない。


「赤ちゃん?」


ルークが何度も頷く。


「イナが見つけた」


私は手を拭いた。


家を出る。


ルークが先を走る。


カイルも来た。


ミラも来る。


サラとニコまで付いてこようとする。


「二人は家にいて」


「いく」


サラが言う。


「ニコも」


今は駄目。


何があるか分からない。


私はカイルを見る。


「二人といて」


カイルは少し迷ってから頷いた。


「分かった」


私はルークとミラを連れて洞窟へ向かう。


入り口の前にイナがいた。


その横に籠。


見間違いではなかった。


布が動いている。


近付く。


中を覗く。


小さな手。


赤ちゃんだった。


生きている。


息もしている。


泣く元気もある。


私は周りを見る。


木。


草。


洞窟。


人はいない。


足音も聞こえない。


もう一度、籠を見る。


赤ちゃんを見る。


「……何でここに!?」


赤ちゃんは答えない。


当然だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ