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神々のいない食卓~日本の消えた異世界で、料理好きの俺は和食を作る~  作者: ちゃむたろう
第五章 食卓は村を越えて――料理が商売になる日

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第51話 村の外へ、その先へ

祭りの日の朝は、まだ空が白む前から村が起きていた。


家を出ると、冷たい朝靄の向こうで何本もの煙が立ち上っている。いつもの炊事の煙とは違う。広場に並べた臨時のかまどから、薪の爆ぜる音と一緒に香ばしい匂いが流れてきた。


焼いた肉。燻製。煮込み。パン。


少し離れたところからは、甘酸っぱいラミの実を煮詰める匂いもする。


「兄ちゃん、はやく!」


俺より先に起きたリナが、両手で小さな籠を抱えて走っていく。中には母さんが焼いた薄いパンが入っていた。本人は立派に店を手伝っているつもりらしく、朝から妙に得意げだ。


「転ぶなよ!」


「ころばない!」


言った直後に石につまずいた。


なんとか踏ん張ったので、籠は無事だった。


空の向こうが薄い桃色に染まり始める。


俺は村の広場を見渡した。


いつもなら子供が走り回り、大人が立ち話をするだけの場所に、今日は木の台が何十も並んでいる。布を張った簡単な屋台には、村の農家が持ち寄った野菜や干した果物が積まれていた。


その隣では、俺が最初に料理を教えたおばちゃんたちが燻製肉を切っている。


さらに向こうではバルクが、包丁だけでなく、小さな燻製用の金具や鍋まで並べていた。


「……増えたなあ」


思わず口から出た。


俺が七歳になる前、この村で「料理」といえば、焼くか煮るかがほとんどだった。


それが今では、煙の量を変えて燻す人がいる。


肉を塩漬けする日数を記録する人がいる。


骨を捨てずに鍋へ入れる人がいる。


俺の知らないところで、俺が一度も作ったことのない料理まで生まれていた。


「何ぼーっとしてんだ!」


聞き覚えのある声に振り向く。


赤茶色の髪を朝から跳ねさせたカイルが、屋台の前で腕を組んでいた。


「カイル?」


「手伝え!」


「なんで俺が?」


「火が安定しねえ!」


見ると、大きな鉄板の上で薄切りの肉が次々焼かれている。その横には、ラミの実と香草を使った濃い色のソース。


俺が以前作ったものに似ている。


でも、同じではない。


カイルはソースに刻んだ乾燥果実を入れていた。


「これ、何?」


「ベルクの市場で見つけた。酸っぱいだけの実だけど、煮ると甘くなる」


一口舐める。


最初に酸味。


その後から甘味。


肉の脂と合う。


「美味しい」


俺が言うと、カイルが笑った。


「だろ?」


その顔が、ちょっと悔しいくらい嬉しそうだった。


「レン式?」


わざと聞いてみる。


カイルは鼻で笑った。


「俺の料理だよ」


それでいい。


たぶん、それが一番いい。


俺が教えたものを、そのまま何百人が作る世界より、そこから百種類の別の料理が生まれる方が面白い。


「火は?」


「自分で何とかしろ」


「さっき手伝えって言っただろ!」


朝から喧嘩になった。


でも、そのやり取りすら楽しかった。


太陽が山の向こうから顔を出す頃には、ベルク方面の街道から荷馬車が見え始めた。


一台。


二台。


その後ろにも続いている。


商人。


料理人。


職人。


見物に来た町の人。


いつもなら村人しか歩かない道を、知らない顔が次々とこちらへやってくる。


馬車の車輪が土を削り、馬の鳴き声に子供たちの歓声が重なる。


「ほんとに来た……」


思っていたより多い。


ハーゲンが「少し声をかけておきました」と言っていたが、この人の「少し」は信用してはいけないらしい。


入口近くには、村の大人たちが案内役として立っている。


その中には父さんもいた。


「荷車はあっちだ! 広場の中まで入れると動けなくなるぞ!」


普段は静かな父さんが、今日は大声で指示を出している。


母さんも、いつの間にか他の女性たちと一緒に料理を配る側へ回っていた。


俺の家族が、俺と関係なく祭りの中で役割を持っている。


それが妙に嬉しかった。


「レン!」


今度はベルクから来た一団の中にノアを見つけた。


ローデンのところの荷車を引いている。その横にはミナもいる。


「来たの?」


「仕事だよ」


ノアは胸を張った。


荷車には肉と骨、それから大きな鍋。


その後ろからローデンが現れる。


「こいつが村見てみてえってうるせえから連れてきた」


「言ってねえ!」


「昨日三回聞いただろ。『レンの村ってどんなとこだ』って」


「言うな!」


ノアの顔が赤くなる。


ミナは構わず広場を見回していた。


「おいしいにおい、いっぱい」


「いっぱい食べていいよ」


「働いてからな」


ノアが言う。


以前なら、その言葉を聞いて俺は「俺が食べさせる」と言っていたかもしれない。


今日は言わなかった。


ノアにはノアのやり方がある。


「じゃあ仕事終わったら、一緒に食べよう」


それだけ言うと、ノアは小さく頷いた。


祭りが始まった。


村の広場を人の声が満たす。


鍋を叩く音。


値段を交渉する商人の声。


子供の笑い声。


肉が鉄板へ落ちる音。


時々、ゼクトの怒鳴り声。


「勝手に蓋を開けるな!」


何事かと思えば、冷却箱の実演に人が集まりすぎていた。


箱を開けるたびに、町の人たちが「本当に冷たい!」と騒ぐので、ゼクトの機嫌がどんどん悪くなっている。


「見せるために持ってきたんじゃないの?」


「一回見れば分かるだろう!」


「みんな初めて見るんだから仕方ないよ」


「魔石は無料ではない!」


その隣では、バルクがちゃっかり箱用の金具の注文を取っていた。


商売が早い。


俺は広場を歩く。


一軒ずつ見る。


村のおばちゃんが作った燻製は、俺が作るものより煙の香りが強かった。


ヨルンは野菜を売りながら、町から来た農家と土の話をしている。


料理人ギルドの印をつけた保存食も並んでいた。


少し離れた場所ではエルナが、食事の前に自然と「いただきます」と言った町の子供を見て驚いている。


誰が教えたんだろう。


もう分からない。


俺が最初に言った。


リナが真似した。


家族が使った。


村人が使った。


それをベルクの誰かが聞いた。


今、その言葉を知らない子供が覚え始めている。


料理と同じだ。


一度手を離れたら、もう俺だけのものではない。


広場の端に、サヨが立っていた。


白装束ではなく、今日は母さんから借りた普通の村娘の服を着ている。


人混みを眺めながら、静かに笑っていた。


「どうしたの?」


声をかける。


「不思議だと思って」


「何が?」


「ここへ来た時、私は箱を一つ抱えていました」


サヨの視線が広場の向こうへ向く。


そこには米は並んでいない。


第41話で決めた通り、まだ売らない。


種籾は別の場所で大切に保管している。


それでも、米を育てた経験は村に残った。


水の扱い方。


苗の様子。


乾燥。


脱穀。


次の種を選ぶこと。


「私は、残すことは隠すことだと思っていました」


サヨが言う。


「でも、ここでは違うのですね」


広場では、カイルが自分の料理を知らない誰かへ渡している。


ゼクトが冷却箱の仕組みを説明している。


ノアがローデンに怒鳴られながら皿を運んでいる。


「見せて、教えて、真似されて。それでも残るものがある」


俺は頷いた。


「たぶん、増えるものもある」


サヨは少し目を細めた。


その時だった。


村の入口から、今までより大きな馬車が入ってきた。


ざわめきが少しずつ止まる。


荷車ではない。


黒く磨かれた車体。


扉には見覚えのある領主家の紋章が刻まれている。


「何だ?」


「領主様か?」


人が道を空ける。


馬車から降りてきたのは、オルバン本人ではなかった。


第49話で会った補佐役のセイルだった。


その手には細長い木箱と、一通の封書がある。


嫌な予感。


そして同時に、少しだけ期待もした。


セイルは広場を見渡した。


煙。


屋台。


冷却箱。


ベルクから来た商人。


村人と町の料理人が同じ鍋を囲んでいる光景。


普段ほとんど表情を変えない男が、ほんの少しだけ驚いた顔をした。


「……聞いていた以上ですね」


「何が?」


「あなたが始めたことです」


俺は首を横に振った。


「もう俺だけじゃないよ」


セイルの視線が広場を回る。


「そのようですね」


その返事が、なんとなく嬉しかった。


セイルは父さんと母さんにも挨拶し、それから正式に封書を差し出した。


「領主オルバン様より、レン殿への推薦状です」


周りがざわつく。


俺は封筒を受け取った。


昨日見た紙よりずっと立派だ。


厚い紙。


赤い封蝋。


見慣れない紋章が二つある。


一つは領主家。


もう一つは、大きく翼を広げた鳥と、その後ろに塔が描かれていた。


「これは?」


「学都アウルム。王立アウルム学院の紋章です」


学都。


その響きだけで、頭の中に知らない景色が広がった。


「どんなところ?」


思わず聞く。


セイルは、持っていた木箱を開けた。


中から一枚の地図が出てくる。


村周辺の地図とは比べものにならないほど細かい。


ベルク。


街道。


川。


山脈。


そして、そのさらに西寄りに、大きな丸印があった。


アウルム。


「人口はベルクの十倍以上。王国でも有数の学術都市です。学院だけでなく、魔術工房、薬師組合、大図書館、鍛冶研究所、商業組合の本部も置かれています」


一つ聞くたび、胸が高鳴った。


大図書館。


魔術工房。


鍛冶。


商人。


きっと食材も、ベルクより多い。


知らない料理人もいる。


知らない魔法もある。


「料理は?」


セイルが一瞬止まる。


「……もちろん、あります」


大事なところだ。


「市場は?」


「三つあります」


「魚は?」


「川魚のほか、北方から塩蔵の海魚も入ります」


海魚。


その一言で一気に行きたくなった。


「香辛料は?」


「レン」


母さんに止められた。


質問しすぎたらしい。


でも、もう頭の中では勝手に料理が始まっている。


見たことのない魚。


知らない香草。


魔術で温度を測れるかもしれない。


古い文献だってある。


もしかしたら――。


「東方の資料もある?」


俺の声が少し変わった。


セイルは頷く。


「学院の大図書館には、東方から集められた古文書も保管されています」


サヨがこちらを見る。


「ヒムカのものも?」


「内容までは分かりません。ただ、百年以上前に収集された文書もあると聞いています」


ゼクトの工房で見た文字が頭に浮かぶ。


**熱。移。**


もし同じような文字が、もっと残っていたら。


日本につながる何かがあるかもしれない。


一気に十歩先へ走りそうになった頭を、俺は自分で止めた。


まだ、何があるかは分からない。


帰れる道があるとも限らない。


日本の答えが見つかるとも限らない。


それでも。


知りに行く価値はある。


俺は地図から顔を上げた。


父さんと母さんを見る。


母さんは少し寂しそうだった。


父さんも、いつものように簡単には顔に出さない。


そしてリナは――。


「兄ちゃん、がっこういくの?」


さっきまでパンを配っていた手を止めていた。


俺はしゃがむ。


「まだ決めてない」


嘘はつかなかった。


「でも、行きたい?」


三歳児なのに、ときどき逃げられない質問をする。


俺は広場を見る。


ここまで、村の外へ出たかった。


知らない料理を見たかった。


日本のことを知りたかった。


でも、最初に村を出た時の俺と今の俺は少し違う。


あの時は、外の世界ばかり見ていた。


今は、振り返れば帰る場所が見える。


父さん。


母さん。


リナ。


サヨ。


ヨルン。


村のみんな。


俺がいなくても燻製を作る人。


俺がいなくても新しい料理を考える人。


俺がいなくても「いただきます」と言う人。


だから。


「行きたい」


今度は、はっきり言った。


リナの顔が少しだけ曇る。


胸が痛んだ。


でも次の瞬間、リナが俺の服を掴んだ。


「じゃあ、おいしいの、おぼえてきて」


「え?」


「リナにもつくって」


思わず笑った。


「もちろん」


「いっぱい」


「いっぱい覚える」


小指を出す。


リナも小さな指を絡めた。


第21話で村を出た朝と同じだ。


でも約束の意味は違う。


あの時は、初めて外へ行くのが怖かった。


今は、外に何があるのか知りたくて仕方がない。


夕方。


祭りが終わり始めた頃、俺は丘の上から村を見下ろしていた。


屋台は少しずつ片づけられ、広場にはまだ薪の匂いと料理の香りが残っている。ベルクへ戻る馬車が街道を小さくなっていき、子供たちは最後まで走り回っていた。


一日だけの市場だった。


でも、昨日までの村と少し違って見える。


道はベルクへ続いている。


ベルクの先にも道がある。


学都アウルム。


さらにその先には、まだ見たことのない土地がある。


東にはヒムカ。


そして世界地図のどこにもない、日本。


俺は手の中の推薦状を見る。


料理を始めた時、こんなところまで来るとは思っていなかった。


ただ妹に美味しいものを食べさせたかっただけだった。


そのために火を使った。


包丁を作った。


魔物を食べた。


村で料理を教えた。


町へ出た。


米を育てた。


保存する方法を考えた。


気づけば、料理の向こう側に世界があった。


なら、見に行こう。


まだ知らない味を。


まだ知らない魔法を。


まだ知らない歴史を。


そして、俺がいたはずなのに消えてしまった国を。


風が吹き抜ける。


祭りの煙がゆっくり空へ流れていく。


その向こうに、街道が伸びていた。


次に村を出る時、俺が向かうのはベルクよりずっと先だ。


俺は推薦状を握り直した。


世界は、思っていたよりずっと広い。


そしてたぶん。


食べたことのないものも、まだ山ほどある。


第五章あとがき


第五章「食卓は村を越えて――料理が商売になる日」、ここまでお読みいただきありがとうございました。


第四章では、一粒の稲を「どう残すか」を中心に描きました。食べてしまえば終わる。でも、残すだけでも意味は失われていく。育てて、増やして、食べて、また次へつなぐ。そんな「文化を生かして残すこと」が第四章のテーマでした。


そして第五章では、その次の段階として、**「残したものを、どう広げるのか」**を書いています。


米が増えたなら売ればいい。冷却箱ができたなら遠くへ運べばいい。料理が美味しいなら作り方をみんなに教えればいい。


一見すると、どれも簡単な話です。


けれど、広げようとした瞬間に、料理は一皿の中だけでは終わらなくなります。


米を売るなら、次に植える種を誰が守るのか。


保存技術が生まれれば、食べ物を遠くへ運べる一方で、高く買ってくれる場所へ食材が流れてしまうこともある。


料理を広めれば、良い真似だけではなく、雑な模倣も生まれる。


さらにレン自身の名前まで価値を持ち始め、「レンが作った」「レンが教えた」という言葉そのものが商品になっていきました。


料理を広めるということは、レシピを広めるだけではない。


食材を作る人、運ぶ人、売る人、料理する人、食べる人。その全員が関わる仕組みまで考えなければ、本当の意味では広がっていかないのだと思います。


レンにとって、この章はかなり大きな変化の章でもありました。


最初の頃のレンは、何か問題が起きれば「自分が料理を作れば何とかできる」と考えるところがありました。


それは彼の長所でもあります。


目の前で困っている人がいれば、まず動く。できることを探す。


でも、その行動力は何度か失敗にもつながっています。


第五章では少しずつ、


「自分が全部やる必要はない」


と考えられるようになってきました。


冷却箱ならゼクトが魔術を考え、バルクが金属を扱い、村の職人が木を加工する。


米ならヨルンが農業を知っている。


料理の基準ならローデンがいる。


商売ならハーゲンがいる。


レンは前世の知識を持っていますが、万能ではありません。


むしろこれから先、世界が広がれば広がるほど、レンの知らないことの方が増えていきます。


だからこそ、今回の第46話では、貴族の料理人ディルクをレンより明確に上手い料理人として登場させました。


包丁。


火入れ。


盛り付け。


大人数への料理。


厨房全体を動かす技術。


そのどれも、今のレンより上です。


ただ、その次の第47話では逆に、レンだからこそできることも描きました。


高級な材料をさらに美味しくする技術ではなく、


**「安いものを、どうすれば美味しく食べられるか」**


という発想です。


これはレンが前世で、裕福ではない家庭の中で妹へ料理を作り続けたからこそ身についたものです。


レンの強さは、日本の料理を知っていることだけではありません。


誰かに食べてもらいたくて、何度も失敗し、その中で積み重ねてきた経験そのものが彼の強さになっています。


ノアについても、第五章では一つ進んだ姿を書くことができました。


レンが食事を与えれば、その日は助けられる。


でも、ノアの人生をレンが代わりに生きることはできません。


だから第44話では、ノア自身が働き、自分の給金でミナへパンを買いました。


レンは入口を作っただけです。


そこから歩いたのはノアでした。


個人的には、第五章でとても大事にしたかった場面の一つです。


そして章の最後、第51話。


村で開かれた市場には、もうレンの料理だけが並んでいません。


カイルはレンから学んだものを自分なりに変えて、新しい料理を作っています。


村人たちは自分たちで燻製を作っています。


ゼクトやバルクは冷却箱を改良しています。


「いただきます」という言葉も、レンの知らないところで使われ始めています。


第一章では、


**レンが料理を作り、誰かが食べる。**


そこから始まりました。


今は、


**レンがいなくても、料理や考え方が残り、誰かから誰かへ渡っていく。**


ところまで来ています。


これは、この物語全体でもかなり重要な変化です。


なぜなら、消された日本を取り戻すために必要なのも、おそらく同じことだからです。


一人だけが覚えている文化は、その一人がいなくなれば消えてしまう。


でも、料理を食べた人が味を覚え、名前を覚え、作り方を誰かへ伝えれば、それはもう一人の記憶ではなくなります。


レン自身はまだ、その意味をすべて理解してはいません。


ただ、彼の料理は少しずつ、消されたはずのものを世界へ戻し始めています。


そして次の第六章から、舞台はいよいよ村とベルクを離れます。


向かう先は、**学都アウルム。**


魔術。


歴史。


大図書館。


新しい食材。


新しい料理人。


同年代の友人やライバル。


そして、これまでとは少し違う形で始まる人間関係。


七歳だったレン自身も、ここから少しずつ成長していきます。


もちろん、料理をしなくなるわけではありません。


むしろ、今まで感覚で使っていた魔法を体系的に学ぶことで、


**「料理×魔法」**


はここからもう一段階先へ進んでいきます。


そしてアウルムの大図書館には、百年以上前に集められた東方の文献が残っています。


ゼクトの工房で見つけた、


**「熱」**


**「移」**


という文字。


サヨたちが守ってきた「日本」という言葉。


世界から完全に消されたはずの国の痕跡が、なぜ別々の場所に残っているのか。


学都編では、料理と成長を中心にしながら、その謎にも少しずつ近づいていきます。


村から町へ。


町から、もっと大きな世界へ。


レンの食卓は、まだ広がり始めたばかりです。


第五章までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。


次章、


**第六章 学都アウルム――七歳、学校へ行く**


へ続きます。


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