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神々のいない食卓~日本の消えた異世界で、料理好きの俺は和食を作る~  作者: ちゃむたろう
第一章 日本のない世界で、妹に料理を

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第4話 七歳児、屋台を出す

村では月に一度、小さな市が開かれる。


近くの集落から人が集まり、野菜、肉、布、薪、道具を交換する。


貨幣もあるが、物々交換も多い。


俺はそこに目を付けた。


「母さん。屋台やりたい」


「だめです」


即答だった。


「お願いします」


「だめ」


「鉄板が欲しいんです」


「なおさらだめ」


七歳児が商売したいと言えば当然である。


しかし父さんが面白がった。


「まあ、ミラ。俺が付いてればいいだろ」


「あなたはレンに甘すぎるの!」


最終的に条件付きで許可が出た。


父さん同伴。


火は魔法ではなく、かまどを使用。


危険なことは禁止。


そして売る料理は一種類だけ。


俺が選んだのは、肉串だった。


単純だ。


この世界にも焼き肉はある。


だからこそ違いが分かりやすい。


問題は安い肉。


市で売れ残った硬い獣肉を格安で仕入れる。


筋を取る。


小さく切る。


塩。


香草。


潰した酸味のある実。


そして少量の果実。


甘味と酸。


前世で言えば簡単なマリネだ。


一晩漬ける。


当日。


串に刺して焼く。


ただし直火で黒焦げにしない。


表面は強火。


中は弱火。


最後に漬け汁を煮詰めたものを塗る。


ジュウウウッ。


香りが広がった。


「……何だ、この匂い」


最初の客は旅商人だった。


「肉串か?」


「はい。一串、小銅貨一枚」


「高いな」


確かに普通の焼き串より少し高い。


俺は笑う。


「まず食べてから文句言って」


「生意気なガキだ」


旅商人は一本買った。


噛む。


止まる。


俺を見る。


もう一口。


「……小僧」


「はい」


「もう二本くれ」


勝った。


そこからは早かった。


匂いにつられて人が集まる。


「肉が柔らかい!」


「何だ、この汁!」


「本当にあの安い獣肉か?」


「香草ってこんな使い方するの?」


夕方前。


用意した五十本は全部売れた。


俺は初めて、この世界の金を自分で稼いだ。


「レン!」


リナが走ってくる。


母さんと一緒に見に来たらしい。


「ぜんぶなくなった!」


「売れたんだよ」


「すごい!」


その笑顔を見て、俺は満足した。


が。


「お前が肉串の小僧か?」


背後から声。


振り返る。


見知らぬ男が立っていた。


細身。


長い外套。


腰には剣。


そして胸元には、見たことのない銀色の飾り。


輪の中に、奇妙な枝のような模様。


「……誰?」


男は俺の串焼き台を見る。


「その調理法。どこで覚えた?」


「自分で考えた」


「ほう」


男の目が細くなる。


「では、あの火の使い方も?」


心臓が跳ねた。


魔法?


今日、魔法は使っていない。


まさか以前のことを知っている?


男は笑った。


「安心しろ。捕まえに来たわけじゃない」


そして懐から一枚の古い紙を出した。


地図だった。


「東へ行く予定はあるか?」


「ないけど」


「なら覚えておけ」


男の指が、地図の端を叩く。


巨大な大陸。


海。


島々。


俺は何となく眺め――


固まった。


待て。


これ。


似てる。


ユーラシア。


アフリカ。


輪郭は違う。


でも。


似ている。


あまりにも。


「……これ、世界地図?」


「そうだ」


喉が乾く。


なら。


日本は?


俺は東の海を見る。


探す。


探す。


何度見ても。


ない。


日本列島が。


存在しない。


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