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神々のいない食卓~日本の消えた異世界で、料理好きの俺は和食を作る~  作者: ちゃむたろう
第二章 料理が村を変える

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第20話 東から来た、米に似た穀物

冬が来た。


雪。


雪。


雪。


俺は異世界の冬を舐めていた。


「さっむ!」


家から出られない。


でも。


今年の我が家には食料がある。


燻製肉。


乾燥茸。


漬物。


根菜。


黒麦。


村全体でも例年より蓄えが多い。


子供が腹を空かせて泣く声も減った。


俺の料理が世界を救った。


……なんて大層なことは言わない。


ただ。


少しだけ。


この村の冬を楽にした。


それで十分だった。


そんなある日。


雪まみれの馬車が村へ入ってきた。


ハーゲンだ。


「レン君!」


「この雪でよく来たな!」


「君に見せたいものがありましてね!」


袋を渡される。


開ける。


小さな粒。


淡い褐色。


俺は一粒摘まんだ。


匂い。


形。


「……これ」


心臓が跳ねる。


「どこで?」


「東方交易品です」


「食べ方は?」


「煮て粥にするそうです。あまり人気はありません」


俺は震えていた。


米。


いや。


完全な米じゃない。


籾の形も違う。


でも。


近い。


あまりにも近い。


「これ、もっとある?」


「町なら多少」


「種は?」


「種?」


「育てられるやつ!」


ハーゲンが驚く。


「おそらくありますが……」


俺は袋を抱きしめた。


炊ける。


もしかしたら。


白飯に近いものが。


前世。


炊飯器を開けた瞬間の湯気。


妹が好きだった卵かけご飯。


母さんのおにぎり。


神社の祭りの日。


全部が一気に蘇る。


「どこから来た?」


もう一度聞いた。


ハーゲンが地図を広げる。


東。


大陸の東端。


そして。


日本があるはずだった海の近く。


「この辺りです」


そこには小さな地域名。


ヒムカ。


俺の手が止まった。


「……ヒムカ?」


「知っていますか?」


知っている。


詳しくはない。


でも神社の家で何度か聞いた。


日向。


神話。


天孫降臨。


頭の中で警鐘が鳴る。


偶然。


偶然だ。


似た音なんていくらでもある。


その時。


袋の底から何かが落ちた。


からん。


小さな金属片。


鏡の破片のようなもの。


俺が拾う。


表面に刻まれていたのは。


三本足の鳥。


「……八咫烏?」


呟いた瞬間。


窓の外から、


ガァ。


声がした。


見る。


雪の積もった柵。


一羽の真っ黒な鴉。


俺を見ている。


ガァ。


もう一声。


そして飛び立つ。


東へ。


俺は無意識に立ち上がっていた。


「レン?」


父さんが呼ぶ。


聞こえない。


ヒムカ。


米に似た穀物。


三本足の鳥。


日本が存在しない世界で。


日本神話の欠片が。


全部。


東にある。


「……行きたい」


俺は呟いた。


「何?」


「東じゃない」


今すぐ東の果てへ行くのは無理だ。


七歳。


金もない。


知識もない。


でも。


最初の一歩なら。


ハーゲンを見る。


「町へ連れてって」


彼が笑う。


「ようやくその気になりましたか」


俺は頷いた。


村の外へ。


もっと広い世界へ。


料理を探すため。


食材を探すため。


そして――


消えた日本の痕跡を探すために。


その夜。


地下に封じられた石板。


誰も触れていないはずの「天照大御神」の文字の下に。


新たな一文が浮かんでいた。


『葦原中国、未だ滅びず』


俺はまだ。


その言葉を知らない。


同じ頃。


遥か遠い神殿で。


二羽の鴉が片目の老人の肩へ舞い戻った。


「東へ導くか」


老人が低く笑う。


「ならばよい」


その手には一本の槍。


「目覚める前に、今度こそ根を断て」

これで第二章完です。

書きためてある分が以上になりますので、明日以降は6話ずつ投稿できればいいなと思います。

続きが気になる方や、もっと読みたいよ!っていう人がいれば更新頻度を増やしますので、応援メッセージ下さいね!つまらないっていう人も教えてください!

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