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神々のいない食卓~日本の消えた異世界で、料理好きの俺は和食を作る~  作者: ちゃむたろう
第一章 日本のない世界で、妹に料理を

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第2話 この世界の飯は、まずい

妹のリナが三歳になった。


そして俺は七歳。


この世界に来て七年。


いい加減、認めなければならない。


「……まずい」


目の前の皿を見ながら、俺は呟いた。


今日の夕飯は、黒麦の粥と、焼いた何かの肉。


たぶん山羊に近い動物だ。


肉そのものは悪くない。


なのに臭い。


硬い。


焦げている。


「レン?」


母さんが不安そうにこちらを見る。


「いや! 美味しいよ!」


危ない。


前世の俺と同じことをするところだった。


母さんは忙しい。


父さんは朝から森へ薪を取りに行き、母さんは畑仕事と裁縫。


料理に手間なんてかけていられない。


そもそも、この村では皆こんなものを食べている。


食える。


腹が膨れる。


腐ってない。


それで十分。


でも。


「おにーちゃん」


隣を見る。


リナが硬い肉を一生懸命噛んでいる。


噛む。


噛む。


まだ噛む。


「……かたい」


ぽつり。


俺の中で何かが切れた。


よし。


やるか。


「母さん。明日の夕飯、俺に作らせて」


「え?」


当然、止められた。


七歳児に火を触らせる親はいない。


しかし俺には秘密兵器がある。


魔法だ。


この世界では五歳頃から魔力が現れ始める。


俺にもあった。


それも、かなり多いらしい。


村の神官には、


「この子は将来、立派な魔術師になるかもしれん」


と言われた。


だが。


俺の興味はそんなところにはない。


俺が習った最初の魔法は火球だった。


掌の前に炎の球を作り、飛ばす。


みんなは感動していた。


俺は別のことを考えていた。


これ。


飛ばす必要、なくない?


「火よ」


指先に小さな炎を灯す。


そこから出力を落とす。


弱く。


もっと弱く。


消えないギリギリまで。


「レン!? 何してるの!」


「大丈夫!」


母さんは青ざめたが、俺は慎重に鍋底へ炎を当てた。


魔法で直接火力を調整する。


焚き火よりずっと便利だ。


火球の威力を上げる訓練ばかりしているこの世界では、たぶん誰もこんな使い方をしていない。


今日使うのは昨日と同じ硬い肉。


まず筋を断つ。


と言っても包丁がひどい。


石よりはマシ程度だ。


そこで肉を薄く切る。


少量の塩。


庭に生えている香草。


さらに、酸味の強い木の実を絞る。


前世でいえば柑橘に近い。


酸と塩で少し置く。


「何してるの?」


リナが覗き込む。


「魔法だ」


「まほー?」


「料理の魔法」


嘘ではない。


次に鍋へ少量の獣脂。


香草と刻んだ根菜を炒める。


ジュッ。


香りが立った瞬間、母さんが目を丸くした。


「……いい匂い」


肉を入れる。


強火。


表面だけ焼いたら一度取り出す。


そこへ水。


鍋底についた旨味も全部こそげ取る。


野菜を煮て、最後に肉を戻す。


火魔法を弱くして、じっくり。


「火って、こんなに弱くできるのね……」


母さんが驚いている。


できる。


魔法が「炎を作るもの」なら、炎の大きさを変えればいい。


当たり前だ。


一時間後。


完成。


肉と野菜の簡単な煮込み。


現代日本なら家庭料理ですらないレベル。


でも。


リナが一口食べた。


目が丸くなった。


もう一口。


さらに一口。


「おにーちゃん!」


「ん?」


「これ、すっごくおいしい!」


その笑顔を見た瞬間。


前世の記憶が蘇った。


妹の、少し困ったような「美味しい」。


でも今は違う。


リナは笑っている。


心から。


俺はしばらく何も言えなかった。


「……そっか」


胸の奥が温かくなる。


「そっか。美味いか」


「うん!」


その日。


俺はこの世界で初めて、


もう一度料理を始めることを決めた。


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