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1566/1568

1566:慰労会。

 創星神さまの集会から一夜明けた。

 

 私の部屋の机の上にはシェクトさまから譲り受けた石が鎮座しているのだが、灯りを落とすと石もまた光を弱くしていた。都会のネオンのようにけたたましく光らなくて良かったとベッドから降りた私はふうと息を吐く。

 さて、今日は忙しい日々の終わりを告げる時がきたと、机の上の石の前で背伸びをした。ぽきぽきと鳴る骨の音を聞いていれば、クロが寝床の篭から起き、ヴァナルと雪さんと夜さんと華さんと毛玉ちゃんたちも起きて、顔をぐしぐしと前脚で掻いたり、後ろ脚で器用に首元を掻いたりと忙しない。庭ではルカの嘶きが響き、珍しくお猫さまであるトリグエルさんが私の部屋に顔を出し『やっと屋敷が静かになるな』と言い残してベッドの中へと潜り込んでいく。

 

 「自由だなあ」


 そう私が呟けば、侍女の方が扉をノックする音が聞こえてきた。どうぞと私が声にすれば、侍女の方が静かにゆっくりと部屋の中へと進んだ。今日はエッダさんが介添えではないから、彼女は休みの日のようである。慰労会に参加してくれると良いのだがと思いながら、違う方の着替えの介添えは少し緊張すると感じながら朝ご飯の時間となった。


 食堂へと赴けば見知った顔が並んでいた。長期休暇を利用した南の島の面子だから、同席しているクレイグとサフィールも緊張は少ないようだ。少し違うのはアリーさまがいるくらいであろう。

 アリーさまは特に気にした様子もなく、椅子に腰かけて『腹が減った!』という顔にありありとなっていた。おそらく早く起きて警備部の訓練に加わっていたのだろう。お昼には慰労会が開かれるために、今日の朝は少し質素なものとなっている。とはいえ調理部の方たちが手を抜くことはなく、美味しい品を提供してくれているけれど。

 

 「いただきます!」


 私の声に皆さまが箸やスプーンを手に取って食べ始めた。どんどん減っていく朝ご飯が彼らの胃の中に納まっていく。美味しい料理を食べるのも良いけれど、美味しい料理を誰かが食べている姿を見るのも良いものだ。そんなことを考えながら朝食を終え、慰労会の準備を始めようと私は早々に席を立つ。ジークとリンも同時に席を立ち私たちは頷き合う。


 「皆さまは時間までごゆるりとお過ごしください」


 私の声にクレイグが『ナイがさっさと飯を切り上げたぞ』とサフィールに伝えていた。聞こえているぞと突っ込まないでいれば、フィーネさまが食べる手を止めて私を見る。


 「ナイさま、ありがとうございます。お手伝いすることがあれば遠慮なく教えてくださいね!」


 客人に手伝わせるわけにはいかないが、手が足りなければ借りるのもアリだろうか。そうならないように私が差配しなければと苦笑いを浮かべた。どうやらアリアさまとロザリンデさまも手伝い候補として名乗りを上げてくれる。とはいえ自国と各国のお偉いさんの手を煩わせるわけにはいかないのだが、固辞するのも失礼にあたる。


 「ありがとうございます」


 私は当たり障りのない言葉を紡いで食堂をあとにした。いつも通り執務室へと向かい自席に腰を下ろす。ソフィーアさまとセレスティアさまと家宰さまも時間を同じくして顔を出してくれた。今日を超えれば忙しい日々は去るので頑張りましょうと彼らに私が声を掛けると、既に何年か一緒に過ごした面子故に各々のやるべき仕事を捌いていく。


 そうしてお昼前。慰労会の時間がやってきた。


 迎賓室には応援に駆けつけてくれた方と屋敷で働く非番の方たちが集まっており、開催の挨拶を待ち構えている。これは早く始めた方が良さそうだと私は少し高くなっているステージに上がった。


 「皆さま、一週間お疲れさまでした。各地から駆けつけてくださった方も、この場を借りて感謝を申し上げます。料理はたくさん用意して頂いているので、遠慮なく食べてください。では、乾杯!」


 長い口上は必要ないと私は短く感謝を皆さまに述べる。そうして乾杯の音頭が鳴れば、会場がざわめき始める。並べられた料理へと一目散に向かう方たちや、隣近所にいる方と談笑を始めていたり、お酒はどこだと探し始めた方がいて眺めていると面白い。さて、私は挨拶回りに赴くかとジークとリンに目配せをしてステージから降りる。ふいに侯爵家警備部の隊長さんと視線が合い、私は彼の方へと足を向けた。


 「隊長。警備の人員割り当てや各所からの応援の対応、お疲れさまでした」


 「いえ。ご当主さまの命に従い、私は指示を出したまで。なにごとも起きなかったのはご当主さまの実力でしょう」


 ねぎらいの言葉は昨日彼に掛けているものの、今日は慰労会なのだからもう一度伝えても構わないだろう。隊長さまは私の前でぴしりと背を伸ばして返事をくれた。本当に何事もなく終えられたので安堵している。

 あの場で創星神さま方に突っかかる人がいなくて本当に良かった。いたら私の命はあったのか……と妙なことを考えてしまう。だからこそ隊長さんたちや家宰さまは人員の手配に細心の注意を払っていたはず。こうして私が領主として立てていられるのは彼らの力が本当に大きい。


 「ありがとうございます。今日はお楽しみください」


 「はい。楽しむと同時に部下が羽目を外し過ぎないように目を見張らせておきます」


 お互いに笑い合って、私は場を離れた。会場内をまた歩いていると亜人連合国の皆さまが団子になって、なにやら話している姿が見える。今回もお世話になったと私は皆さまの下へと足を向けた。


 「亜人連合国の皆さま、今回もお力添えを頂き感謝申し上げます」


 私は小さく頭を下げて、食材の提供や料理のレシピの公開にも感謝していることを伝えた。本当に亜人連合国の皆さまにはお世話になってばかりである。この御恩を返すことはできるのか少々不安であるものの、先ずはお礼の言葉を述べなければ感謝の気持ちは伝わらない。

 

 「気にしないでくれ。恩恵を受けているのは我々の方だ」


 「そうですね、若」


 ディアンさまとベリルさまがお互いを見て頷き合う。私が知らないところで獣姿の創星神さまがいつか手合わせしてみたいと願い出たそうである。獣姿の創星神さまはどうやらご自身の『武』を示すことを楽しみにしているらしい。

 巨大な竜のお方五頭と対戦してみたいとは本当に奇特な方というべきか。しかし創星神さまとディアンさまたちの対決を見てみたい気持ちが私にはある。結果は決まっているだろうが、ディアンさまたちは善戦しそうだ。でも、どっかーん、どっかーーんと激しい戦いになりそうだから、地上への影響が少ない場所でやって欲しいものである。そんなことを頭の中で考えていれば、ダリア姉さんとアイリス姉さんが小さく笑っていた。


 「そうよ、ナイちゃん。創星神さまと関われるなんて一生なかったのだから協力するのは当然よ」


 「ねー。ナイちゃんは自分が遣り遂げたことを誇って良いんだよ~」


 笑みを深めたエルフのお姉さんズは手を伸ばして私の頭を撫でる。なんとなく私はお姉さんズの妹分として見られているよなあと目を細めた。どんどん私の立場が変わる中で、出会った頃から扱いが変わらないのは有難い。私がご意見番さまの最後を見届けたということが大きく関係しているかもしれないが、今更ダリア姉さんとアイリス姉さんの態度が変われば私は寂しいと感じてしまうはず。


 「ありがとうございます。今日はお楽しみくださいね」


 私の声に亜人連合国の皆さまが返事をくれる。そうして私はまた次の方への挨拶へ向かおうと彼らの下を離れて、会場をウロウロと回る。時折、屋敷で働いている方が『お疲れさまです』と声を掛けてくれたり、逆に私が『お疲れさまです』と声を掛ける。

 提供された料理をお皿に取り分けて楽しそうにしているから慰労会は成功しているのだろう。副団長さまと猫背さんとアリーさまはいずこにいるのかと、私が顔をきょろきょろと動かしていれば銀色の髪を長く伸ばした方と金髪の方の姿を捉える。彼らの下へ行こうと考えるものの、なんとなく行かない方が良いかと足を止め、少し見守ることにしてみた。覗きをしているようで申し訳ないが、邪魔をすれば空気を壊してしまう。ジークとリンも理解してくれているのか、なにも言わず黙って私に付き合ってくれた。


 「美味しいです! エーリヒさまが作った品を食べられて私は幸せ者です……!」


 「大袈裟ですよ、フィーネさま」


 凄く嬉しそうに笑うフィーネさまにエーリヒさまが言葉を返している。フィーネさまの後ろには護衛の方が数名控え、エーリヒさまの一歩となりにはユルゲンさまが立っていた。妙なことにはならないかと私は場を離れようと踵を返す。

 彼らの近くではアリアさまとロザリンデさまが一挙手一投足を見守っているようだ。仲が良いなと私は笑みを浮かべて、多くの方が集まっている会場で私はウロウロと彷徨う。すると軽食コーナーで良く見知った顔を見てしまい私は苦笑いを浮かべる。そうして私は声を掛けるかと足を向けた。


 「ヴァルトルーデさま、ジルケさま」


 「ナイ」


 「どうしたー?」


 私が声を掛ければ二柱さまは口の中のものを嚥下してから言葉を紡いだ。どうやら喋り掛ければ食べる手を止めてくれるようである。そう考えてしまうのは失礼かもしれないが、二柱さまの食欲は旺盛だ。二柱さまが食欲がないと言い始めれば、大陸が終焉に近づいていそうである。


 「二柱さまもお疲れさまでした」


 私が言葉を紡げば、ヴァルトルーデさまとジルケさまが目を細めた。


 「創星神がああやって集まることは初めて」


 「だよなあ。親父殿と母上殿がああやって他の創星神に声を掛けたこと自体が珍しいつーか……てか、ナイ。あんな数の創星神に囲まれて腰抜かさねえのは本当にすげえことだからな?」


 なんとなく話は聞いていたものの、神さま同士が集まることは稀有な事例なのだとか。八百万の神さま的な話では集まって騒いでいたような感覚があるため、少し不思議な感じを受ける。とはいえグイーさまの娘さん方も他の創星神さまも言っていたのだ。事実だろうと私は目を細めると、ヴァルトルーデさまとジルケさまがまた言葉を紡ぐ。


 「ナイがいなければ西大陸に創星神さま方が降りることはなかったはず。だから感謝してる」


 「だな。普通に接待できる奴なんてナイ以外に考えられねえし……一先ず、お疲れさん、だな」


 何故か二柱さまに感謝された。偉業を成し遂げたなんてこれっぽっちも思っていないが、ただ神さま方との関わりが深くなっている。だから、これ以上神さま界隈に足を踏み入れませんようにと私は願うしかないのだった。

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― 新着の感想 ―
創世神様方へのおもてなし、ご苦労さまでした。今回、協力した関係者で慰労会が行われました。世界初の、複数の創世神様をおもてなしするという偉業…アルバトロス国王の胃痛仲間が増えました!ww(尚、楽しんでい…
更新お疲れ様です。 創星神様方の集いから一夜明け、応援に来て下さった方々と、本日の門番と当直の方々以外の家人の皆さんも参加の慰労会の日w 実際の所、倒れる人が続出してもおかしくなかった状況下、神様方…
ヴァルトルーデ様とジルケ様が挨拶回で歩き廻るはずが無いし、居場所は当然ビュッフェ会場の料理陳列台ですよねぇ……2柱様といえど創星神様方々が居られた時には料理を堪能しきれなくて慰労会を楽しんでいるご様子…
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