1562:取られた。
グイーさまと獣姿の創星神さまが二柱さましてどこかへ消えたのだが、数瞬後にお互いに傷だらけになって戻ってきた。グイーさまは右の瞼が腫れあがり、獣姿の創星神さまの頬が腫れている。
テラさまや他の創星神さまは『なにをやっているのやら』と呆れているけれど、グイーさまと獣姿の創星神さまはお互いの強さを讃え合っている。若い男性の創星神さまと綺麗な創星神さまが呆れつつ、お皿に取り分けた料理を口にしていた。
二柱さまは仲が良いのか、集会が始まってからというもの隣り合っている姿を良く見ていた。七色の創星神さま曰く、二柱さまの星は隣同士だから良くつるんでいるとか。七色の創星神さまにはつるむ方はいないのかと問えば、話すことが苦手だし、会話をしても楽しくないと言われたことがあるため、創星神さま同士の付き合いは控えているそうである。
「この機会に仲の良い方が増えると良いですね」
『ン。イシソツウハヒサシブリ』
私の足下で食事を楽しんでいる七色の創星神さまであるが、意思疎通をしたのはいつ振りなのだろう。聞くだけ野暮そうだし、これは聞かない方が賢明だと私は他に食べたいものがないのか七色の創星神さまに聞いてみる。
すると七色の創星神さまはぽよんと身体を揺らして考える素振りを見せた。これは多分少しの時間が掛かるなと私が苦笑いを浮かべると、若い男性の創星神さまと綺麗な創星神さまがいつのまにか立っている。どうしたのかと考える前に私は手に持っていたお皿を机に置き頭を下げる。すると二柱さまは頭を上げろと告げたため、私は正面に向き直る。
「おう、ナイって言うんだよな? 飯、美味いぞ」
若い男性の創星神さまがにっと笑い、手に持っているお皿――こんもりと大量の料理が乗っている――を掲げた。アストライアー侯爵家の料理人さんたちとエーリヒさまと増援で派遣された料理人さんたちが真心こめて作ってくれた品である。料理が不味いと言われてしまえば私はショックで眠れなくなりそうだ。気に入ってくださったようでなによりと私は安堵して、軽く目線を下げたあとに口を開く。
「お褒め頂き感謝致します。創星神さまに褒めて頂けたことを料理人たちが知れば喜びましょう」
喜ぶというより安堵しそうだけれども。まあ、嘘も方便というか、伝え方を少し変えただけというか。若い男性の創星神さまはお皿の上の料理を一口含んで『これも美味い』と感心している。もっと食べてくださいと言わんばかりに私は若い男性の創星神さまにお薦めの料理を伝える。エーリヒさまが作ってくれたご飯系のパンケーキも美味しいし、カレーを作ろうとしてできたカレーコロッケ。
料理長さま渾身作である赤ワインの牛肉煮込み――ホロホロで凄く美味しい――とか、お薦めを上げ始めるとキリがない。他にもフソウ料理も提供されているうえに、各国のご当地自慢の料理まである。
本当に今回はいろいろな国の方にお世話になっているし、レシピも提供して頂いた上に、食材もたくさん送ってくださった。お礼をなににしようか迷うが、グイーさまとテラさまには沢山の協力者がいたことを伝えておかねば。
私がお薦めを伝え終えれば、若い男性の創星神さまは『目が回りそうだ』と苦笑いを浮かべる。でも興味を引くものは食べてみると仰ってくださったので、多分、会話は成功しているはず。若い男性の創星神さまの隣にいる綺麗な創星神さまは床の上の七色の創星神さまへ視線を向けたあと私へと移した。なんだろうと首を傾げる私に、綺麗な創星神さまが不思議そうな雰囲気を醸し出した。
「貴女のアホ毛は面白いわね。髪なのに動いているわよ?」
綺麗な創星神さまの疑問は尤もである。どこにアホ毛が動く人間がいるのかと言いたくなるが、私のアホ毛は実際に動くのだ。アニメや漫画でキャラクターのアホ毛が動く描写を見たことがあるが、現実に動くなんて信じられないことである。とはいえ、グイーさまの星は魔法や魔力が存在しているため不可能を可能にすることができた。
「体に溜まった魔力の出口になっているようで……何故か動きます」
私が自分の頭を見るように目線を上に上げると、綺麗な創星神さまがアホ毛に指を伸ばす。ちょこんと私のアホ毛を触れた綺麗な創星神さまは『なるほど?』と小さく首を傾げた。
「たしかに流れ出ているわねえ。グイーの星の者たちの中で貴女が一番目立っているのはそういうことね」
納得できたわと綺麗な創星神さまが頷いた。良くわからないまま納得されてしまったのだが、結局なにを言いたかったのだろう。私が首を傾げると綺麗な創星神さまが小さく笑いながら言葉を付け足す。
「見た目ではなく、一番存在感があると言えば良いかしらね。そもそも貴女は私たちを恐れていない時点でおかしいのよ」
「失礼ですが、おかしいとは?」
集まった皆さまのオーラは凄いけれど、創星神さま方が恐ろしいとは思わない。実態のある創星神さま方よりも、触れられない幽霊の方が私は怖いのだ。霊感ゼロだから、幽霊は私的に余怖いし嫌いな存在なのである。
「そうねえ。貴女たちからすれば神は巨大なエネルギーの塊みたいなもの」
「つーのにナイはびびってねえよな」
綺麗な創星神さまの言葉に若い男性の創星神さまが口の中の物を飲み込んで片眉を上げながら笑った。
「皆さまはグイーさまとテラさまが招いた方々です。恐れる必要はないかと」
私は創星神さま方に怒られるようなことはしていないし、堂々と胸を張っていれば良いだけだ。よく超常の存在に対して私は恐れという感情を見せないと言われるが、単にそれは皆さまが会話ができる方であるだけで。
もし初手で暴力に頼ってこられれば対処をする。暴言を吐かれたならば立場を考慮して言い返すか、我慢をするかとなる。それが神さまであっても対処は同じだと言いたい。とはいえ不必要なことは口にすべきではないと、私は伝えるべきことだけを口にした。すると若い男性の創星神さまと綺麗な創星神さまは肩を竦める。
「あのおっさんを慕ってんのか」
「適当なところがあるから大変でしょうに。似た者夫婦だからテラもだし」
たしかに大変なところもあるし、グイーさまに投げっぱなしにされていることもあるけれど……どうにも憎めない。グイーさまとテラさまが創星神さまということもあってか、アルバトロス上層部には迷惑を掛けてしまっているけれど。
とはいえ世界各国から認められている国になっている。アストライアー侯爵家の名も同じ土俵に上がっているのは勘弁して欲しいけれど……無理だから諦める他ない。今回も他の創星神さまを招待して接待しているから、とてつもないことをアストライアー侯爵家は成し遂げていると世間の皆さまは判断するのだろう。
「面白い顔になってんぞー」
「動いている……考えていることが分かりやすいわね、貴女。私たちは星の者たちが考えていることに対して、力を使えば知れるけれど、知ったところで価値のないことが多いから知ろうとしないだけだけれど……ここまで分かりやすいと面白いわね」
くつくつ笑う若い男性の創星神さまと綺麗な創星神さまは私を見ながら感心している。私を見ているだけではつまらないだろうから、七色の創星神さまと話す方が有意義な気がしてならない。
「二柱さまは七色の創星神さまをご存じですか?」
私が足下の七色の創星神さまを見ればスライムボディーの上に疑問符を浮かべていた。
「知ってるぞ。ナイの足下にいるやつは、創星神の中でも最古参だからな。だってのに星の進化がほとんどみられないっつーんで稀有な存在って言われてる」
「本当に。何故、知的生命体が誕生しないのかしら。というか貴女、懐かれていない?」
どうやら七色の創星神さまは神さま界隈の中で有名な方のようだが、そんな雰囲気を私は欠片も感じ取れない。偶々、七色の創星神さまが屋敷に早くこられて、私がいろいろと屋敷の中を案内していただけである。
「単に朝から一緒に過ごしているだけです」
本当にそれだけなので、懐かれたというよりは一緒に過ごすほかなかったというのが正しいのだろう。私が七色の創星神さまをまた見下ろせば、ぴかーと身体を光らせた。
『ワレノメンドウミテクレル。シンジンノセワモ』
「老人介護と子守りしてんじゃねえーか!」
「本当に愉快な子ねえ!」
ははは、うふふと若い男性の創星神さまと綺麗な創星神さまが笑い、七色の創星神さまがまた身体の上に疑問符を浮かべている。
「どうして笑っておられるのでしょう?」
『ワカラナイ』
というか、私が老人介護と子守りをしているって……七色の創星神さまも老人介護と言われて怒らないのだろうか。子守りの件は言われてみるとたしかに子守りをしていたかもしれないと納得できる。私と七色の創星神さまが視線を合わせれば、若い男性の創星神さまと綺麗な創星神さまが真面目な雰囲気となる。
「ま、悪いことじゃねえし、シェクトが珍しく誰かと話をしているからなあ」
「そうねえ。本当に珍しいもの。グイーも偶にシェクトの様子を見ていたようだけれど、その辺りも一因にあるのかしらねえ?」
グイーさまはフレンドリーなようで、他の創星神さまと関係を積極的に結んでいるそうだ。星が近ければ若い男性の創星神さまと綺麗な創星神さまのように話すこともあるのだが、星同士の距離が離れていると疎遠になるとか。
今日も目の前の二柱さまには初対面の創星神さまがいらしたようで、グイーさまとテラさまが紹介してくれたそうである。縁が続くか分からないが、気が向けば会話をすることがあるかもしれないと二柱さまが口にする。話を聞いていると七色の創星神さまがぽこんと身体を揺らす。すると若い男性の創星神さまと綺麗な創星神と私の視線が下に向いた。
『ナイハワレトカイワシテクレタ。コワガラナイ』
一番、七色の創星神さまに恐怖を覚えたのは下働きの小母さまだろう。お互いに悪気はなかったから、ごめんなさいで済んだけれど。そういえば七色の創星神さまの名前を耳にしたようなと私が首を傾げれば、ぽこんとまた身体を揺らした。
『ワレハシェクト。ヨロシク、ナイ』
「よろしくお願い致します。シェクトさま」
『ナマエ、ヨンデモラエル。ウレシイ』
嬉しそうに身体を光らせるシェクトさまであるが、私の魔力が減ったのは気のせいだろうか。きっと気の所為だと若い男性の創星神さまと綺麗な創星神へ私が視線を向ければ、あちゃーと言いたげな表情を浮かべるのだった。あれ、大丈夫、コレ?




