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1560/1562

1560:前向きだなあ。

 軽食コーナーは好評のようで、どんどんと量を減らし、どんどんと新しい料理が運ばれている。お酒が好きな創星神さまたちにはグイーさまがお薦めを紹介しているし、テラさまは甘味を薦めていた。会場の隅にある椅子に腰かけたどこぞの創星神さまを強制的に男女の創星神さまが輪の中に加わらせていた。

 気遣いのできる創星神さまがいて良かったと私は安堵して、こちらもまた会場の隅っこに控えている西の女神さまと南の女神さまに声を掛けるべく私は歩を進める。足元には何故か七色の創星神さまも一緒で、許可を得たから移動は問題ない。


 「ヴァルトルーデさまとジルケさまは食べないんですか?」


 いつもであれば嬉しそうな顔で真っ先に良い場所を陣取るというのに、二柱さまは会場の隅っこで大人しくしている。たしかにたくさんの上役がいるのだから、会場の隅っこで大人しくしているのが正解かもしれない。けれど食べたいのを我慢するのは辛かろう。私は七色の創星神さまに『オマエモタベロ』と仰られたので、ちょいちょい軽食を摘まんでいるが。


 「終わったら」


 「余ったやつ貰うしかねえよなあ」


 はあと二柱さまが溜息を吐けば、七色の創星神さまがきらりとスライムボディーを輝かせた。


 『ガマン、ヒツヨウナイ。イク』


 「感謝致します。しかしながら皆さまが楽しまれている場に私たちが混ざれば問題がございましょう」


 「私たちは大陸を創造した神であって、星を創造しておりません」


 七色の創星神さまにヴァルトルーデさまとジルケさまが真面目に答えた。そうなると私はただの人間なのに、創星神さまたち用のご飯を食べてしまったということになるのだが……あれ、私は相当不敬な行動に出ているのではと背中に冷や汗が一筋垂れる。とはいえ食べてしまったものを吐き戻すわけにはいかない。料理長さま方が作った料理は美味しいし、タベロと勧めて下さる方もいたのだから……多分、きっと、平気である。

 

 『ヨクワカラナイ』


 「お前さんが誰かと喋っている姿は本当に貴重だな!」


 『グイー。グイートテラハ、ダレトデモカイワシテイル。スコシ、ウラヤマシイ』


 真似をしようとは思わないがと七色の創星神さまが最後に付け足す。何気にグイーさまは他の方から軽く扱われているようにも見えるが、ご本神さまは特に気にした様子もなくカラカラと笑っている。するとグイーさまは創星神さまの輪に加わっている、どこぞの創星神さまの方へと視線を向けて目を細める。


 「ま、儂らの中でもいろいろとあるが、せっかくなら楽しく生きていたいではないか! つまらぬ『生』など送りたくないぞ?」

 

 だから皆さまとは仲良くしておいた方が楽しい神さまライフを送れると仰った。たしかにどこぞの創星神さまは星の運営に飽きたという言葉を呟いていたから、グイーさまは気にしているようだ。どこぞの創星神さまが過度な力を創造神さまから預かり、思い付きで星の進化を力で加速させたことを少し嘆いているようにも見える。


 『シメイヲツマラナイトトラエル、メズラシイ』


 「そうかのう? 時折、面倒だと思わなくもない……だが、まあ、放り出すわけにはいかぬという自制があるからな! あの新参にも星を見守ることが案外楽しいことだと思う日がくれば良いのだが」


 七色の創星神さまにガハハと笑ったグイーさまが手に持っていたグラスの中身を飲み込み、ぷはーと威勢よく息を吐く。

 

 『グイー……タマニヨイコトヲイウ』


 「偶にじゃないわい! しかしお前さん、ナイを気に入ったのか?」


 グイーさま曰く、七色の創星神さまは創星神として古参になるが、他の創星神さまとの付き合いはほとんどなく、意思疎通を図っているのも珍しいとか。たしかに七色の創星神さまの言葉数は少ないけれど、出会った時から友好的に話していた。だというのにグイーさまは意思疎通を図るのは珍しいと口にしたのは何故だろうか。私が七色の創星神さまを見下ろせば、ぷよんとスライムボディーを動かしてなにか考え込んでいる。


 『セイブツトセッスルキカイハジメテ』


 そういえば七色の創星神さまの星に知的生命体が存在していないと聞き及んでいる。だからこうして喋るのはほぼ初めてのことであり、手探りで交わす言葉を探しているとか。

 神さま同士であれば言葉にせずとも感情が読めるため、今までは言葉を口にする必要はなかったそうだ。グイーさまも七色の創星神さまとは今まで念話のようなもので意思疎通を図っていたとのこと。あれ、なんだか凄いことに邂逅していませんかと私は黙って二柱さまの話に耳を傾ける。


 もし、これから七色の創星神さまの星に知的生命体が現れれば、いつかは現界して今のように会話することになるのだろうか。それは星に住む生き物からすれば奇跡のようなものだし、凄いこととして語り継がれそうである。

 だというのに私が七色の創星神さまと先に喋っている……いや、でも状況的に仕方ないことだし、七色の創星神さまも私たちとの接触でなにかを得ようとしている。深く気にしない方が良いだろうと私が腹を決めれば、グイーさまは七色の創星神さまへ言葉を投げると共に腕を伸ばした。


 「お前さんも輪の中に加わるぞ! 酒、飲んでみるか?」


 グイーさまは七色の創星神さまを小脇に挟んで、皆さまの輪の中へと向かうようだ。七色の創星神さまは不思議そうに身体を光らせている。私は大丈夫かと心配になり、グイーさまを見上げた。


 「グイーさま……飲めない方に無理強いするのはお止めくださいね」


 「そんなことせんわい! なに、試しに一口だけだ!」


 本当かなあと私は訝しむ。呑み助の一口は信用ならないし、七色の創星神さまが嬉しそうに飲めばアレもコレもと勧めるだろう。


 「無理矢理飲まされそうなら、逃げてくださいね」


 『ワカッタ。イッテクル』


 グイーさまの小脇に抱えられた七色の創星神さまが身体を細く伸ばして、手を振るような素振りを見せる。最後のお別れになりませんようにと願っていれば、グイーさまは七色の創星神さまを連れて皆さまの中へと戻っていった。


 「大丈夫かな?」


 『大丈夫だと思うよ。神さまだから本来はお酒に酔わないからね』


 私の声にクロが答えてくれる。ジークとリンは苦笑いでグイーさまを見ていたようだ。私はふうと息を吐いて会場を見渡せば、侯爵家の皆さまと増援にきて下さっている方たちが忙しなく動いている。


 「だと良いけれど……さて、ちょっとみんなの様子を伺いに行こうか。任せきりにしてたしね」


 私は彼らにも声を掛けようとジークとリンに伝え、会場の中を移動する。夜会のような人の多さではないのだが、何分、派手な方たちが二十六柱さまも集まっている。緊張を解かないまま仕事に精を出している方もいるから、私の声掛けで気が紛れると良いけれど。

 誰に声を掛けようかと歩いていれば、フィーネさまと視線が合う。なにか気合が入っているような雰囲気があるのだが、一体どうしたのだろうか。私が彼女に近づくと、ぱっと顔を輝かせるものの直ぐに陰りを見せた。


 「納豆料理をなかなか手に取ってくださりません……」


 肩を落としたフィーネさまであるが、納豆料理をどう忍び込ませたのだろう。もしかしてエーリヒさまに頼んだのかと私は苦笑いになる。もしそうであれば相変わらず仲が良い。

 

 「納豆は知らない方からすれば未知の物ですし……軽食向きではないですからね」


 まあ、納豆の臭いはしないから、独特の匂いが消える料理を作っているはずだ。一応、ホスト役として神さま方に出す料理に私は目を通している。本当に多種多様な料理を良く作り上げるものだと、料理人さんたちの腕前に感動していたのだ。

 がっつり系として納豆焼き飯が名を連ねていたのも覚えている。そしてカレーコロッケなるものもあった。エーリヒさま曰く、香辛料がたくさんあったためカレーを作りたくなったそうだ。

 試作品をいくつか作ってみたものの、納得のできる品は完成しなかったそうである。副産物としてカレーコロッケが出来上がったとか。リームのお芋さんとエーリヒさまのカレーのコラボレーションとなるのだが絶対に美味しい品だ。料理長さまはエーリヒさまからレシピを貰うだろうし、食べ損ねたら作って貰う予定である。むふふと考え事をしていると、フィーネさまが悩ましい表情になっていた。


 「うー……テラさまは美味しいと食べてくださるのですが……慣れていない方には仕方ないのでしょうか」


 「プレゼンでもします?」


 フィーネさまに私は提案してみる。納豆を海外の方は凄く怪訝顔で見つめ、臭いに拒否反応を見せながらも、食べると美味しいとなる動画をいくつか過去に観た。であれば、創星神さまも一柱さまくらいは美味しいと言ってくれるのではなかろうか。それならば食べているところを見て貰い、興味を引くのが一番手っ取り早い方法のような気がする。フィーネさまは目を丸く見開いて、少し丸めていた背をピンと伸ばす。


 「へあ? 無理です、無理無理!!」


 彼女が驚いた反動でばいんと胸が揺れた。けしからんと言いたいのをぐっと堪えて、私は言葉を紡ぐべく息を吸い込んだ。


 「でも食べて貰うための一番の方法では?」


 「構わないのでしょうか。納豆が全星系に広まれば快挙ですし……うーん」


 悩ましそうな顔になるフィーネさまは本気で納豆を普及したいようだ。というか地球では健康食として世界に広がっているはずだから、そう心配する必要はない気もする。

 とはいえグイーさまの星で納豆を全地域に広めるのはかなり時間を要しそうだ。匂いも味も独特だしフソウの特産物である。大豆はほぼ全域で育てられているから、あとは納豆菌をどうにかするだけ。でもまあ貴族の女性の間であれば美肌に効くとか、健康に良いと触れ回れば勝手に売れそうではある。ただし日常食ではなく超高級品として。


 「グイーさまとテラさまに話を通せば問題ないかと」


 今回は神さま同士の面倒事に巻き込まれた形だから、多少の無茶は聞いて貰わなければと私は談笑しているテラさまとグイーさまを見た。真面目な話をしている雰囲気はないから、話しかけるなら今がチャンスだろう。


 「許可が降りれば、頑張ってみます!」


 どうやらフィーネさまは本気のようだ。私はどうして納豆がそんなに良いのかなあと苦笑いを浮かべながら、グイーさまとテラさまの下へ行きましょうかとフィーネさまを誘うのだった

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― 新着の感想 ―
>悩ましそうな顔になるフィーネさまは本気で納豆を普及したいようだ。  そんな貴方に最終手段を伝授。  時間を止めて、神々の口へ放り込んでやるのだ!  そうすれば1回は口にしてくれる!(お目々ぐるぐる…
この場の人間のなかで一番度胸があるのはここに納豆を入れてくる大聖女様、さすが大聖女様だよね。
最初のナイの台詞 ヴァルトルーデとテラとなっていますが、後の台詞からテラ様ではなくジルケ様ではないでしょうか?
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