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戦わずに全部潰したら、誰も戦わなくていい村になった  作者: 慈架太子


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102/130

102:対策会議 マリナ・レイナ・エルダで分担

夕暮れの光が、村の中央広場をやわらかく染めていた。


昼間と同じように、人は動いている。


だが――


その動きの裏側には、明確な意志があった。


「徴発は来るわね」


マリナが言う。


簡素な木のテーブル。


その上に、地図が広げられている。


周辺の地形、街道、河川、森。


すべて書き込まれている。


「来るわね、じゃなくて来るわよ」


レイナが肩をすくめる。


「さっきの連中、あれで終わるわけないでしょ」


軽い口調。


だが目は鋭い。


エルダは腕を組んだまま、黙っている。


視線は地図。


思考はすでに戦場。


カイゼルは一歩引いた位置にいる。


口は出さない。


判断はもう済んでいる。


あとは――


任せる。


「分担する」


エルダが言う。


短い。


それだけで全員が理解する。


「まず防衛」


エルダが地図の一点を指す。


村の外周。


「正面から来るとは限らない」


「だが、来るならここだ」


街道。


最短ルート。


「罠は三層にする」


「ドワーフに任せる」


頷き。


「第一層は足止め」


「第二層は分断」


「第三層で仕留める」


簡潔。


無駄がない。


「民兵は?」


レイナが聞く。


「配置は変える」


エルダは迷わない。


「固定配置は捨てる」


「動かす」


それが答え。


「敵は数で来る」


「なら、こちらは流れる」


レイナが笑う。


「いいわね、それ」


「止まらない流れ、でしょ?」


エルダは何も言わない。


だが否定はしない。


次。


「経済」


マリナが指を動かす。


地図の外。


街。


市場。


交易路。


「相手は“奪う前提”で来る」


「なら、奪わせなければいい」


シンプル。


だが本質。


「在庫は分散」


「見せる量と実量を分ける」


「価値の高いものは外に出す」


レイナが口を挟む。


「外って、どこに?」


「安全圏」


マリナが答える。


「信用できる商会に預ける」


「契約は私がやる」


当然のように。


「価格も操作する」


「この村の価値を“外”に作る」


エルダが言う。


「奪われる前に、価値を逃がす」


マリナが頷く。


「そういうこと」


「相手は空を掴むだけになる」


レイナが口笛を吹く。


「えげつないわね」


「褒め言葉?」


「最高よ」


軽く笑う。


だが目は真剣。


「じゃあ流通は私ね」


レイナが地図を引き寄せる。


「物を止めない」


「これが最優先」


指が動く。


線が引かれる。


新しいルート。


旧ルートの回避。


「街道は危険になる」


「だから森を使う」


「川も使う」


「小分けにして運ぶ」


「一度に運ばない」


流れを作る。


止めない。


それが仕事。


「人員は?」


エルダ。


「分ける」


レイナは即答。


「全員で運ばない」


「回せる人数だけ使う」


「無理はさせない」


それが効率。


「あと――」


少しだけ間を置く。


「逃げ道は必ず確保する」


エルダが見る。


「逃げる前提か」


「当然でしょ」


レイナは肩をすくめる。


「死んだら終わりよ」


「生きてれば、やり直せる」


エルダは一瞬だけ黙る。


そして言う。


「……正しい」


短く。


認める。


マリナが笑う。


「いい連携ね」


「戦う女と逃げる女」


「どっちも必要」


レイナが返す。


「アンタは?」


「私は奪う側よ」


即答。


その言葉に、空気が少し軽くなる。


カイゼルは何も言わない。


ただ、見ている。


流れ。


役割。


すべてが噛み合っていく。


「あと一つ」


声。


リナだった。


薬師。


だが、今は違う。


「医療体制も組む」


全員が見る。


「戦いは怪我が出る」


「それを前提にする」


当然のこと。


だが、重要。


「治療所は二箇所に分ける」


「軽傷と重傷で分ける」


「動ける人は前に戻す」


効率。


回す。


レイナが笑う。


「アンタも回す側ね」


「当然でしょ」


リナは静かに笑う。


「止まったら終わりよ」


同じ思想。


別の形。


エルダが頷く。


「後方は任せる」


「任されたわ」


マリナがまとめる。


「防衛、経済、流通、医療」


「全部揃ったわね」


レイナが続ける。


「あと足りないのは?」


全員が一瞬、考える。


そして。


「ないな」


エルダ。


それが答え。


カイゼルは、そこで初めて口を開く。


「十分だ」


短い。


それだけ。


「じゃあ、動くわよ」


マリナが立つ。


「価値は守る」


レイナも立つ。


「流れは止めない」


エルダが最後に立つ。


「侵入は許さない」


三人の視線が交差する。


違う役割。


同じ目的。


村を守る。


だが――


守るだけじゃない。


回す。


生かす。


増やす。


カイゼルは、その光景を見ていた。


何も言わず。


ただ、確認する。


「回るな」


小さく呟く。


すでに始まっている。


止まらない流れ。


それはもう――


個人の力ではない。


仕組みだ。


夜が深まる。


だが村は静かに動いている。


灯りの下で、人が働く。


準備が進む。


恐れはない。


ただ、やるべきことをやる。


それだけ。


この村は――


止まらない。


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