ミス・マープルを探せ事件(後編)
「よし、じゃあ行こう」
父親はスマホの画面を見ながら、坂道の歩道を下り始める。前方から、詰め襟を着た男子学生が上って来た。休日に部活動だろうか。
「すみません。猫を探しているのですが、見かけませんでしたか?」
「このねこ」とクリスティは、写真を見せる。
男子学生は写真をチラリと見ると、「知らない」と首を振った。
「ありがとう」
クリスティも父親の横で小さな頭を下げる。
「これを見ると、通りを渡ってはないみたいだ。道路を渡るのは危険だから、渡っていなくて良かった」
父親はスマホの画面を見せる。ミス・マープルを示す赤い丸は、道路のこちら側にあった。
「ああ、でもこの先には川があるな」
「かわ?」
クリスティは不安になった。ミス・マープルは、お風呂というか水が苦手だったからだ。
「おちたりしないかな?」
自分で言って、最悪の光景が目に浮かび、涙が出そうになる。
「……お、大丈夫だ。この通りを右に曲がったみたいだよ」
直進すれば川だったが、そちらには行かなかったようだ。
父親とクリスティは、歩いている人に訊ねながら進んだ。今のところ目撃者はいない。
「ん? こっちかな」
父親は、また右に曲がる。石段を数段上ると
大きな石の鳥居があった。
「八幡神社だ。パパが子供の頃、友達と節分に豆を拾いに来たり、夏にはラジオ体操をしたりした所さ。お参りして行くかい?」
クリスティは頷いた。
「お賽銭を入れて、鈴を振って、二礼二拍手一礼だよ」
父親の真似をしながら、参拝する。
(ミス・マープルが、はやく、みつかりますように)
それから、父親はスマホを出して、もう一つの鳥居の方へクリスティを連れて行った。
「神社にはいなかったね。この辺りは住宅地だな。何処かのお家に入ってしまったのかな」
自動車が一台通れるかどうかの細い道を進んで行くと、どこかで女の人の声がした。
「しろちゃん、しーろちゃん、おいで、おいで。そこから出て来て」
「しろちゃん?」
「パパ、もしかしたら、ミス・マープルかも」
以前、自宅の近所のおばさんがミス・マープルを見て「しろちゃん」と呼んだ事があった。白い猫だから、「しろちゃん」と呼んだのだろう。
声を辿って行くと、槙の生垣の向こうから聞こえる。背の高い生け垣は、中が見えそうで見えない。父親は、声がする庭の方に回って枝折戸越しに声を掛けた。
砂利を敷いた庭では、四十代くらいの女性が物置の前にかがみ込んで、物置の下を覗き込んでいた。
「こんにちは、すみません。何をしていらっしゃるのですか? 散歩していて声が聞こえたものですから」
女性は体を起こして、枝折戸の外に立つ父親とクリスティを見た。
「猫が、物置の下に入ってしまったみたいで……」
「猫を探していらっしゃるのですね。実は僕達も猫を探しているんです。よろしかったら、そちらの猫を見せて頂けませんか?」
女性は、此処は自宅ではないが住人に了解を得て庭に入らせてもらっているのだという。
そこで、父親は玄関に回って、自分達も庭に入らせてもらう許可を取った。
枝折戸からすぐの所に、大きな物置が二つあった。コンクリートブロックの上に設置されているので、地面との間に十~十五センチくらいの隙間が出来ている。猫はその隙間に居るらしい。
「しろちゃん、でしたか?」
父親と一緒にクリスティも砂利の上に這いつくばって、隙間を覗いてみた。薄暗くて猫の色は分からないが、コンクリートブロックの影に猫の目が見えた。毛足の長いシルエットだった。
「おいで、おいで、こわくないよ」
ミス・マープルならクリスティの声を聞き分けるのではないか。
父親が持って来たおやつの封を切って、差し出してみる。猫は動かない。
「お腹空いていないのかな」
「じゃあ」と言って、今度は猫じゃらしを隙間の入り口で振ってみる。
伏せていた猫がピクリと反応した。
「おいで、おいで、だいじょうぶだよ」
『森のお家ニャンゴロー』のニャンゴローはクリスティの呼び掛けに姿を現したが、このしろちゃんは、どうだろうか。
果たして、猫は物置の下からのそりと姿を現した。
「しろちゃん!」
飼い主の女性がそっと抱き上げた。
「しろちゃん?」
現れた猫は焦げ茶色の毛足の長い猫、ラガマフィンだった。クリスティは困惑した。
「しろちゃん、というのは?」
父親も戸惑い気味に、飼い主の女性に訊ねた。
「ほら、お腹が白いでしょ。だから、しろちゃんなの。お嬢さん、ありがとうね。あなたの猫ちゃんも早く見つかると良いわね」
「……」
「……もしも、この猫を見かけたら、こちらまでご連絡頂けませんか?」
父親がミス・マープルの写真を見せ、連絡先のメモを手渡した。
「んんー? あら? この猫ちゃん」
「見かけましたか?」
「さっき、しろちゃんが、そこの物置の下に入る時に、入れ替わりに飛び出してきた猫ちゃんじゃないかしら」
「どちらの方へ行きました?」
「お隣のカミナリ、いえ神波さんのお宅の方へ行ったと思います」
隣家との境界には、大人の背丈位の目隠しフェンスがある。ミス・マープルらしい猫は、真っ黒なフェンスの下部と基礎の隙間を潜って隣家へ行ったらしい。
「ありがとうございました」
この家の持ち主としろちゃんの飼い主に礼を言うと、父親とクリスティは隣家に向かった。隣家は敷地が広いので、入口まで少し歩かなければならない。
「ねぇ、パパ。さっきのおばさん、カミナリさんって、いっていたよ。こわいひと、なのかな」
いつも、ゴロゴロピカピカ怒っているオジサンの姿が頭に浮かんだ。怖い人だったらどうしよう。
「ミス・マープル、いじめられて、いないかな?」
悪い事ばかり考えてしまう。
「神波さん?」
父親は何かを思い出そうとしているのか、眉根を寄せ考えている。
「ねぇ、パパってば」
「……ああ、もしかしたら!」
ここで父親は、自分を見上げる娘の抗議の視線に気付いた。
「ごめん、ごめん。カミナリさんは、もしかしたら、パパの知っている人かもしれないよ」
三台くらい車が入りそうなシャッター付きカーポートの横に大きな黒い扉の付いた門が見える。扉脇の石造りの壁には『神波』と表札があった。屋根付きの門も大人の背ほどの高さがあり、内部を伺うことは出来ない。
「なんだか、すごい、おうちだね」
父親は躊躇いがちにインターホンのボタンを押した。
「……はい」
落ち着いた女性の声が応える。
「阿形と申します。うちの猫がお宅のお庭に入り込んでしまったようなのですが」
「少々お待ちください」
主に確認に行ったのだろうか。
ややあって、今度は、しゃがれたお爺さんの声が応えた。
「阿形さんと、仰ったかね?」
しばし沈黙がある。画像を確認しているのだろうか。
「……あんた、歯医者の阿形のとこの、ケンちゃんかい?」
父親の名前は、ケンという。
「あ、はい。父がお世話になっております」
「ちょっと、待ってな」
自動で門扉が解錠され、静かに開いた。
「どうぞ」
インターホンが言う。
お爺さんの姿は見えないが、中に入れということらしい。玄関ポーチまでは石畳になっており、結構遠い。手入れされた芝生が広がっている。
「パパ、しっている、おじいさんなの?」
「うちのお祖父ちゃんのお友だちだよ」
「へー」
地元の老舗会社の会長だという神波は、クリスティの祖父と高校の同級生だった。
「なんで、カミナリっていうの?」
「見てのお楽しみ」
玄関ドアを開けたのは、お爺さんだった。
(カミナリさまだ)
クルクル巻き毛の白髪は固そうで、ヨシミ先生を男にしたようなごつい顔。太い眉毛の下にある目は、まるで睨みつけているように強い光を放っていた。そして、着ているセーターが虎柄。背中に太鼓を背負っていないけれど、いつか絵本で見たカミナリ様にそっくりだった。
「ご無沙汰しております」
「おお、本当に久しぶりじゃ。爺さんとはしょっちゅう会っているけどな」
「父がいつもお世話になっております。これは、娘のクリスティです。クリスティ、こちらは、お祖父ちゃんの古くからのお友だちの神波さん」
「こんにちは」
「ほう、ワシと同じクルクル巻き毛じゃの。ハッハッハッ」
神波さんは、豪快に笑った。
「お休みのところ、申し訳ないのですが、うちの猫がお宅のお庭に入ってしまったようなのです」
「そうかい、好きに探していいよ」
家政婦さんだろうか、白いエプロンを付けた女性に「庭に案内してやってくれ」と指示する。邸宅の裏の方へ案内される。綺麗に選定された庭木は低木もあるが、結構大きな樹もあった。広い庭だった。
にゃ……ん
微かな猫の鳴き声が聞こえた気がして、クリスティは辺りを見回した。
「ミス・マープル? どこ?」
にゃあ……ん
下ばかり見ていたが、何だか上の方から聞こえる。見上げると、高い木の上に愛猫が居た。
「パパ、あそこ」
「随分と大きな桜の樹だね」
「さくらのき、なの?」
「ああ、ほら、花芽が膨らんで来ている」
「ミス・マープルは、なんで、あんな、たかいところに、のぼっちゃったのかな」
「しろちゃんに、ビックリしたのかもね。さて、どうしようか」
「カミナリさんに、はしごを、かりる?」
「居ったかね?」
その時、二人の背後から神波さんの声がし、芝生を踏む足音が近付いて来た。
「ええ、桜の樹に登ったみたいです」
「おお、あんな所に」
「猫は登るには登っても、降りられなくなることがあるんです」
「何か、困っとるみたいじゃな」
神波さんは、桜を見上げた。
「脚立を、お借り出来ますか?」
父親は、家政婦さんが持って来た脚立に上って、手を伸ばすが届かないので、ミス・マープルに呼び掛けた。
「ほらほら、こっちだよ」
太い幹をトントンして誘導する。
「そうそう、後ろ向きに、上手だ」
ミス・マープルは後ろ向きにソロソロと降り始めた。何だか危なっかしい。クリスティは、ハラハラして両手を胸の前で握り締めた。
「クリスティちゃんといったかな、そのバスタオル貸して」
神波さんは、家政婦さんとバスタオルの両端を二人で持ち広げた。
「放しちゃいかんぞ」と言うと、桜の樹の下で待ち受けた。
「あ!」
父親が声を上げる。
ミス・マープルの爪が幹を捕らえ損ねた。白い毛足の長い体が空中に放り出され、一瞬で身を捻った。
「ミス・マープル!」
クリスティは怖くて見ていられず、目を瞑って首を縮めた。
ポスンという音と、短い鳴き声が聞こえた。
恐る恐る目を開けると、神波さんがバスタオルでくるんだミスマープルを抱っこして、家政婦さんと一緒に笑っていた。
「ほらほら、もう大丈夫だぞ」
にゃーん
「すみません。受け止めて頂いてありがとうございます」
父親は、脚立から降りて礼を言った。
「中々、お転婆娘じゃな」
バスタオルでくるまれて、ミスマープルは大人しく抱かれている。
「カミナリさん、ありがとう」
思わず言ってしまって、クリスティは「あ」っと口を押える。
「いや、ええよ。ワシはカミナリと呼ばれておるのを知っているから、ほれ、こんな虎柄のセーターを着ておるんじゃ」
ミス・マープルを手渡しながら、神波さんは笑った。
「いやじゃないの?」
「子供の頃は、嫌じゃったよ。髪が黒くてゴワゴワのクルクル巻き毛で、眉毛は太く、怖い顔だから、皆寄って来ない」
怖い顔でも優しい人をクリスティは知っている。
「でもな、クリスティちゃんのお祖父ちゃんも同じく天然パーマでクルクルしていたから、それがキッカケで友達になれた。もう五十年近く、ずっと仲良しだ。何が幸いするか分からんね」
神波さんは遠い目をした。
お礼を言って、父親と阿形歯科医院までの帰り道、今度はバスタオルにくるんだミス・マープルも一緒だ。
「わたしの、クルクルは、おじいちゃんゆずり、なんだね」
「ママも少し癖っ毛だから、ママの分もあるかもね」
阿形歯科医院では、祖父母も一緒に出迎えた。
「そうか、神波の家の庭に居たのか。逃げたって聞いて、心配していたが」
「良かったね、クリスちゃん」
お祖母ちゃんが屈んで目線を合わせる。
「たかい、きから、おりられなくて、みていて、こわかった」
「無事で良かったわ」
ミエ伯母さんは、ヤッちゃんに視線を移す。
ヤッちゃんは、すごく落ち込んでいたという。
「ほんとうに、ごめんね。クリスちゃん」
「ううん、もう、みつかったから、だいじょうぶだよ」
自分もミス・マープルを置いてきぼりにしないで、連れて行けば良かったと反省した。散歩用のハーネスも持って来たのだから。
今夜は、お祖父ちゃんちの和室に父親と布団を並べて休むことになった。
「窓や出入り口は閉めてあるから、ケージから出しても大丈夫よ」
お祖母ちゃんが言うので、クリスティはミスマープルをケージから出して布団に入った。
ミス・マープルもモゾモゾと布団に潜り込んで、枕の辺りに顔を出した。
父親はまだ、居間で祖父母や伯父さん達と話をしている。
「ねぇ、ミス・マープル、きょうは、ごめんね。おいてきぼりにしたから、おいかけて、きたのかな? ほんとうに、みつかって、よかった」
沢山歩いて疲れたのか、ミスマープルは眠そうだ。
「わたしね、いつもは、ふつうに、さがせるのに、きょうは、だめだった。パパがいてくれたから、たんていの、おしごとが、できたの」
大切な家族のミス・マープルを失うかもしれないと思ったら、頭がグチャグチャになって、冷静に考えることが出来なかったのだ。
「だめだね。こんなじゃ、めいたんていに、なれない。あとね、アユちゃんがいつも『じけんよ~!』っていってくれるのが、たいせつって、わかった。きもちの、きりかえ、っていうのかな」
探偵に求められるのは、客観的な観察と冷静な判断、深い思考だと、いつか父親が言っていた。たとえ何が起こっても、自分の気持ちを抑えて『探偵』をすることが出来るだろうかと、不安になる。
ミスマープルをそっと撫で、顔を近付けて匂いを吸った。
「わたし、めいたんていに、なれるのかな」
ミスマープルは、眠そうにゆっくりと瞬きをした。
翌日は、お祖父ちゃんの車を借り、アッちゃん、ヤッちゃんと一緒にお出掛けをした。
今日はハーネスを付けたミス・マープルも連れている。
桜の名所のF公園は、まだ一分咲きくらいだったが、此処でも父親の思い出話を聞けた。
「昔、家族でお花見によく来たんだよ。お弁当持ってね。満開になるとすごく綺麗なんだ」
桜を見上げる小さい頃の父親を想像すると、微笑ましい。
「ケンおじさん、うちのおとうさんも、きた?」
ヤッちゃんは訊ねる。
「勿論。もう少ししたら、満開になるから、また、お父さんに連れて来てもらうと良い」
「おにいちゃん、こんど、おとうさんに、いってみよう」
兄弟は頷き合った。
その後、港の方に移動した。丁度、有名な豪華客船が寄港していたので、埠頭を歩きながら眺める。
「すごく大きいね」
「うみに、うかぶ、マンションみたいだ」
皆、口をポカンと開けて見上げる。
クリスティは、こんなに大きな物が海に浮かんでいるのが不思議に思えた。
それからアニメキャラクターのテーマパーク等を回って、楽しい一日が終わった。
アッちゃんとヤッちゃんの父親のソウ伯父さんは、休日も何かの用事があり、兄弟は中々一緒にお出掛けできないようだ。だから、とても喜んでくれた。
次の日はあいにく雨降りだったので、一日中屋内でゲーム等で遊んだ。テレビゲームも少し上達したが、一番楽しかったのは、祖父母と一緒に、皆で遊んだトランプやボードゲームだった。
「懐かしいなぁ。まだ、取ってあったんだ」
父親は、子供の頃に遊んだトランプやボードゲームを見て驚いていた。
翌日、クリスティと父親は帰路に就いた。
ローカル線のホームで電車に乗り込む時に祖父母とハグをした。ドアが閉まり、ゆっくりと動き出した電車を追い掛け、手を振る祖父母の姿に、車窓から見えなくなるまで手を振り返した。
「アッちゃんや、ヤッちゃんと、いっぱい、あそべて、たのしかった。おじいちゃんたちに、バイバイするのは、さびしかったな」
思い出すと涙が出そうになる。
「また来れば良いよ」
父親はクリスティの髪を優しく撫でる。
「うん、そうだね。……ねぇ、パパ、わたし、たんていに……」
「ん? 何だい?」
「ううん、なんでもない」
新幹線の車窓を流れる景色が少し滲んだ。
クリスティ達が帰宅してしばらくすると、母親も帰宅した。
「ママ!」
クリスティは、母親に飛び付き、母親は、娘を抱き締めて頬擦りする。
「ただいま」
お互いに買ってきたお土産を出したり、とりとめもなく出来事を話したり。
楽しかった出来事ばかり話したけれど、本当は一番に話さなければならない事がある。
父親は、クリスティの気持ちを考えてか、自らは話さなかった。
「……そう、ミス・マープルが逃げちゃったの。大変だったわね」
夕食後のティータイム、クリスティは自分が名探偵になれるのか自信が無くなったと母親に打ち明けた。
母親は父親と顔を見合わせる。
「誰でも、大切なものが無くなったら、心配で堪らなくなるわ。クリスティはまだ小さいのだから、泣いて何も出来なくなってしまっても、おかしくないのよ。その後、パパと一緒にちゃんと探せたじゃない。頑張ったわね。また一つ、お勉強になったと思うわ。これは、『あがたクリスティ・じけんぼ』に書かなくちゃね」
母親の言葉が心にポッと灯りをともす。
クリスティは頷くと、自室からピンクのノートと鉛筆を持って来てテーブルに広げた。
『ミス・マープルを さがせ じけん』
と書いた。母親にインデックスを貼ってもらう。
『いらいしゃ じぶん』
『なくなったもの ミス・マープル』
『カミナリさんちの おにわのきに のぼっていた』
『わかったこと じぶんのことになると
かんがえられなくなる きもちの きりかえは たいせつ』
いつのまにか、ノートの最後のページになっていた。
「こんな事もあろうかと、ふふ」
母親は、笑みを浮かべながら二冊目の新しいノートを取り出した。
「旅行先のお土産屋さんで、可愛いノートがあったから買ってきたの」
母親は、ノートの表紙に『あがたクリスティ・じけんぼ2』と書いた。ご当地のゆるキャラが描いてある。
「かわいい! ありがとう、ママ」
クリスティはベッドの中で、気持ちが少し楽になった自分に気付いた。この先、『あがたクリスティ・じけんぼ2』に書き込む、どんな事件が待っているのだろうと、胸が高まる。
「ミス・マープル、わたし、がんばるね。もう、いなくならないでね。おやすみ」
愛猫を、そっと抱きしめる。
ミス・マープルはニャッと小さく鳴いた。




