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女王様見習いの清楚お嬢様は、○○○の穴を埋めて欲しい  作者: 弥波明希
4章 女王様は破り捨てる

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28話 お嬢様は悩む

 ――私、真白妃奈は、黒川凛音の特別らしい。

 夜のお散歩を、部屋に戻ってからひとりで振り返る。


「~~うあああっ、なんで私はあんなことをっ……!」


 いつものベッドの上。枕に顔を埋めた私は、はしたなく足をばたつかせながら悶えた。


 特別って、好きってこと? 凛音君が私を……?


「……そんなの、絶対嘘」


 だって他の人が見せてくる好意みたいなの、凛音君から感じたことないもん。

 ……そりゃまぁ、たまーにえっちな目で見てきたけど……男の人はそれと恋愛感情とは別の物らしいですし……。


 というか、というかですよっ!


「あんなのもう、私が凛音君を好きって言ってるようなものじゃないですかっ……!」


 え、私って凛音君のこと好きだったんですか? 初耳。


 私にとって彼は可愛いわんちゃんで、だから他の女に尻尾振ってるのを見て、ちょーーーーっとだけヤキモチを焼いたりしたこともあったけどもっ……!

 でもそれは恋愛感情というより、お世話したい飼い主の気持ちっていうか、放っておけないお姉さんの気持ちっていうか――。


「……いや、そうじゃないか」


 最初は共犯関係だった。私の趣味に付き合ってくれる男の子に、ちょっと歪な親近感を抱いていた。

 だけど、もう認めます。今はそれだけじゃない。……えっちなことをされそうになってから、少し怖くなって趣味に付き合ってもらってはないけれど。……それでも私は、凛音君と一緒に居たい。離れて欲しくないって思ってる。

 それが好きって気持ちなのか、私には分からない。だって初めての気持ちだし……。


「~~んんんっ! AIさんっ、この気持ちはなにっ!?」


『現時点の情報だけでは断定できません。詳しく教えてください』


「ぼけなすぅぅ‼」


『そんなこと言わないでください。悲しいです』


「うぅ。ごめんなさい……」


 はぁ、何やってんだろ。私。


 自分の気持ちが分からない。凛音君の気持ちなんてもっと分からない。


 こども食堂に連れて行って何がしたかったのか、分からない。だから彼の期待にどう応えていいのかも分からない。

 ……こんな私で大丈夫かな。嫌われたり、しないよね?


「うぅん……。発表の練習しよ。月曜日だし」


 みんなの前で将来設計を発表する。代表者なんてやりたくなかったけど、お母さんが言ってたことを書いたら、あれよあれよと他の人たちに乗せられてしまった。


 凛音君はこの内容が気に入らなかったらしいけど、今更書き直すわけにもいかない。そんなことをしたら、きっと先生に迷惑をかけてしまう。


 だから――。


「私は……いつも通りやるだけだ」


 言われたことを、上手に。

 大人はみんな、それが一番喜ぶから。


 *


 あっという間に月曜日。

 凛音君はいつも通りだ。涼しい顔で席に座っている。


 納得いかない。とーっても納得いかない。


 私はこんなにモヤモヤしてるのに、なんでそんな普通の顔ができるんですか! とーへんぼくの能面男めっ!

 だから私は知らんぷりぷりしながら午前中を過ごして、昼休みには「別にあんたのために作ったんじゃないんだからね!」とお弁当を押し付け、そんなこんなんで――午後の発表会が始まった。


「僕は政治家になります。日本の経済を立て直したいんです!」


 教壇では真面目が制服を着て眼鏡をかけたようなクラスメイト――立花君が熱弁を奮っていた。

 黒板に張られた模造紙にはたくさんの図や数字が並んでいる。あれを作るのにどれだけの時間が掛かっているのだろう。

 教室には国会のような空気が流れている。よく言えば厳粛、悪く言えば眠たい。……そんなみんなの反応なんて気にも止めず、彼は輝かしい将来の姿を語り続けていた。


「……すごいなぁ」


 見栄えだけが良い、安物のマカロンのような私の将来設計とは違う。彼の言葉には重みがある。

 積み重ねてきた努力が、彼の夢に説得力を与えているのかもしれない。


 私はいつも、誰かの顔色をうかがってばかりなのに。

 今もほら、誰かさんがどんな顔をしているのか気になって、ちょっとだけ後ろを振り返ってみたり――。


「――それじゃ次、真白な」


「っ! ひゃいっ……!」 


 やる気のない先生の声に、肩が跳ねた。うう、変な声出ちゃった、恥ずかしい……。


 慌てて立ち上がり、手と足が一緒に出そうになりながら教壇に登る。模造紙を黒板に貼り、曲がってないかを確認して、小さく息を吸って吐く。


 前を見ると、たくさんの視線。


 仲のいい子達からの好意的な眼差し。一部の男子達からの好奇の視線。そして興味なさげな目。

 そのどれとも違うのが――君の瞳だ。


 何を考えているのだろうなんて、場違いな思考が頭を掠めた。


「……」


 目を伏せ、邪念を吐き出すように息を吐く。そして、口を開いた。


「私の、将来設計は――」


 凛音君の瞳が鋭くなった、そんな気がした。


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