9話 拘束脱出迷子の男②
両腕を掴まれて運ばれるとか、ここは異世界の筈なのに、宇宙人になった気分です。いや、ちょっと待てよ……この異世界を、違う惑星と例えたなら、あながち間違いでもないのでは。
「こいつっ、自分で歩けっ!?」
「いやぁ……両腕が掴まれてるから、歩き辛いんですって。勘弁してくださいよ……」
「この状況で、太々しい奴だな」
意味も分からず捕まえられたら、太々しい態度にもなるだろうさ。だから、ちょっとした嫌がらせで、体を脱力させるぐらいの抵抗は、させてもらうぞ。
そんな事を思っていたら、「ここで大人しくしてろっ!」と牢屋にぶち込まれ、ガシャンッと鍵を閉められました。
「痛ぇっ! くそっ、もっと丁寧に扱えよ……」
牢屋なんて、初めて入っ……ラクレル村で一度入ったから、初めてって訳じゃあないな。
人生で二回目の牢屋イン。
「若干擦りむいたじゃん……っ」
擦りむいた腕に、「ふーっ、ふーっ」と息を吹きかけ、倒れた体を起こし、胡座をかいて座り、この状況を整理する。
「誤認逮捕……いや、あの水晶が赤くなってから騒ぎ出したから、何か理由があるのか?」
ミルン……物凄く怒ってたなぁ。あそこの門兵達を、可愛いパンチで襲って、人の睾丸も悪くないモゴモゴとか、やってないだろうな。
「……大丈夫だよな?」
汚い床にゴロンと寝てみる。
これは……硬くてゆっくり出来ません。そりゃそうだわ。だって石床の牢屋ですから。
『おぅっ、そこに居るのは、新入りかい?』
おっと、壁の向こうから、誰かが話しかけてきたんだけど。この牢屋の隣も確か、牢屋だったよな。て事は、犯罪者か?
「新入りというか、意味が分からない内に、牢屋に入れられた、唯の一般人だぞ」
『牢屋に居る時点で、俺らと同類だろ』
「違うっての。良く分からん水晶が"赤く光った"と思ったら、ここにぶち込まれたんだ」
マジで意味分からんのよ。
『っ、お前さん……"赤"なのかっ』
「何だよ赤って。俺は何もしてないぞ?」
『っ……何人殺りゃあ、そんな色になるんだ』
壁の向こうの人が、慄いている感じがする。
「冤罪だ。人なんて殺した事ないし、これからもそんな予定はないぞ」
『嘘吐くなって。ウチの頭ですら紫だってのに、赤なんて初めて聞いたぜ』
「そんなに珍しいのか?」
『自分の事なのに、何言ってんだ? 西の国に居る殺戮人形と、同じ類いの化物だろ』
おおっふ……殺戮人形って、何? そんなネーミングの奴と、同列視されちゃってんの?
「緑と赤とかっ、あの水晶は何なんだ?」
『お前、そんな事も知らずに、王都の門を通ろうとしたのか……頭が悪いとしか、言いようがないぞ』
「うるせぇっ。こちとら王都に来るのなんて、初めてなんだよっ」
現地人じゃ無いからねっ!
なんたって、異世界人ですからあっ!
これがテンプレ通りなら、異世界に来た時点で、俺勇者よ? それなのに実際は、牢屋に入りまくりの人生です。
「理不尽過ぎるっ……」
『何言ってんだ?』
「お前には分からんよっ……」
『チッ……仕方ねぇな。あの門の所にある石は、真心の水晶って言ってな、触った奴の"脅威度"を、色で判別しやがんだ』
「脅威度の……判別? 脅威度って言うなら、それこそ俺っ、人畜無害だろぉっ!」
顔も知らない奴と、壁越しに話をしていると、コッコッと、誰かが歩いて来る音がする。
『チッ……どうやら、俺の番の様だな。おい、壁向こうの奴。お前が本当に何も知らないなら、一度ステータスを確認しろや。赤になった理由が、分かる筈だぜ』
「ステータスを?」
『盗賊っ、アダルスゼリファーっ! 出ろっ! 今から貴様をっ、鉱山送りとするっ!』
「あっ、おいっ!」
隣の奴が、連れて行かれてしまった。
鉱山送りとか、マジですかぁ……んんっ? となると、俺の処遇はどうなるの?
「盗賊のあいつが驚く程、赤はヤバいと。盗賊で鉱山送りだから、赤なら……」
鉱山送りよりもヤバい刑って、最悪のパターンを考えると、死刑もあり得るって事なのか。
うぅんんんっ、結構ピンチじゃね?
「取り敢えず、ステータスを見るか……」
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小々波 流 三十五歳
レベル 10→11UP(楽し…経…値効果)
能力値
筋力13→15
防御85→120
知力23
生命17→56
速力90→135
(村人男性平均100とした値)
スキル
・身体強化(これで貴方もマッスルバディに)
・楽…い経…値リシュエルのサプライズ
・空間収納(大人の本の隠し場所として)
・基本魔法(一人暮らしのお供に)
・歪みの叡智(どうなっても知りません)
・ー 判別不ー ー
称号
・逃げ惑うニート
・崖からダイブするニート
・奇跡の子の護り手(あっマズイです〜)
・ケモナー(ゴールド免許)
+
・種を超えた奇跡(魔物特効)
+
・奇跡の子の護り手(あぁっ!?)
+
・火事場泥棒(ちょっとっ!?)
+
・なんちゃって魔王(これでぇっ!)
以上の称号を確認。
統合開始……統合中……統合中……統合中……統合……リシュエルからの妨害を感知……リシュエルからの妨害を感知……リシュ……ルか…の…統合…中……統合完了。
・異界の無法者 (これならぁ)
・半魔王(ぎりせーふっ……?)
スキル
・身体強化(これで貴方もマッスルバディに)
レベルアップ時防御能力プラス値補正
レベルアップ時速力能力値プラス補正
レベルアップ時上記能力値以外の成長を妨害
・楽しい経験値リシュエルのサプライズ
行動内容によりランダムにレベルアップ
レベルアップ時の効果音
レベルアップ時のリシュエルの楽しい一言
レベルアップ時の効果音
・空間収納(大人の本の隠し場所として)
容量制限無し
防腐効果 劣化軽減
効果範囲半径二十メートル以内
手に持っている物は収納出来無い
己の物と認識している物のみ収納可
取り出す際は一覧を参照
・歪みの叡智(どうなっても知りません)
使用時の心の揺らぎよる効果変化
知力スキル使用毎にランダムでダウン
ースキル使用制限中ー
・基本魔法(一人暮らしのお供に)
小々波 流の固有魔法
全属性魔法中級まで使用可
使用回数制限無し
心の揺らぎにより範囲威力増減(抑制中)
半魔王効果により制御可
レベルアップ時知力成長を妨害
・ー 判別不能 ー
運---捻-----ー判別不能ー
称号効果発生
・異界の無法者 (これならぁ)
空間収納効果範囲拡張
レベルアップ時生命上昇補正大
レベルアップ時速力上昇補正大
レベルアップ時防御上昇補正大
・半魔王(ぎりせーふっ……?)
基本魔法制御解放
心の揺らぎにより範囲威力増減の効果を抑制
特定の魔物好感度上昇
レベルアップ時知力成長を妨害
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「えっ……何これ?」
ステータス表記がバグりにバグって、ガチャガチャ合体。最終的に"半魔王"になりました。
「……どゆことっ!?」
半魔王って、半分魔王って事ですか?
「もしかして、さっきの水晶……このステータスの所為で、色が赤くなっのか?」
盗賊のお偉いさんで、紫色。んで、殺戮人形とかっていわれる奴で、赤色に光ると……俺、これといって何も、悪い事してませんが?
火事場泥棒の称号の所為?
いつ付いたのか、知りませんけど。
「納得いかねえわぁ」
脅威度が赤で、即拘束牢屋行き。
その理由らしきモノが、半魔王。
殺戮人形といわれている奴と、同格の存在。
「半魔王……半魔王ねぇ……」
ただ、まぁ、脅威度という点だけを見るのなら、半魔王だと赤になるのも、分からなくもないか……いや分からんわっ!
「こんな巫山戯た理由でっ、鉱山送り以上の刑罰になってたまるかっ……」
どうにかして、ここから逃げないと。このまま悠長にしていたら、ミルンに会えないまま、異世界ライフが終わってしまう。
「ミルンを一人にしないとっ、約束したんだ。絶対ここから、脱出してやるっ」




