表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界とは愛すべき者達の居る世界(胸糞控えめver.)  作者: かみのみさき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/30

9話 拘束脱出迷子の男①



 野営地から再度出発して、凡そ半日──穏やかな陽射しの中、筋肉馬に引かれたコンテナの上部で、ぐてぇっと寝そべりながら、ミルンと楽しく、神経衰弱をやっている。


「ふっふっふっ、どれか分かるかな」


「うーっ、これっ! はずれた……うーっ」


 そこじゃないんだよなぁ。確かゴブリンの絵は、その隣の札だった筈。


「残念、俺の番だな。ふふふ、これとこれだっ……俺の記憶力も、衰えたかっ」


 普通に間違えました。

 この神経衰弱は、空間収納内のから、木の板を取り出し、簡単な絵をミルンに教えながら、一緒に描いたお手製品。

 暇過ぎて作った、お手軽ゲームだな。


「ミルンのばんっ!」


「くっ、尻尾で俺の目を誤魔化したなっ」


「そんことないのっ」


 そんな感じで、楽しい時間を過ごして居たら、『二人共降りてきーやーっ。もうすぐ着くでーっ』と、聖女らしからぬリティナの声が、コンテナの中から響いてきた。

 可笑しいよね。

 聖なる乙女と書いて、聖女と読む筈なのに、それを一切感じさせない大声だぞ。この異世界の聖女は、ネタ聖女なのか?

 

「もうすぐねぇ……どっこいせっと。どれどれ、王都とやらは、見えるかな?」


「んしょっ、んしょっ」


 俺が立ち上がると、当たり前の様にミルンが登ってきて、肩車をした状態になる。これがまた、落ち着くのよ。


「おぉっ……ガチの城壁だよ……すげぇ」


「おおきいのぉ……」


 

 ジアストール王国の首都、アストール。

 建国から五百年の歴史を持ち、王都を囲む様に建造された、巨大な石造りの城壁は、幾千もの魔物襲来や、他国からの侵略を退けて来た、王国随一の高さを誇る。

 首都の人口は、凡そ約三百万人。

 多くの商店が建ち並び、市場は活気に溢れ、多くの行商人達が行き交う、正に国の心臓部。

 そのシンボルこそ、首都アストールの中央に位置する、女王が住まう場所。城壁よりも高く聳え立つ、ジアストール城である。



「以上になりますぅ。分かりましたかぁ?」


「すんごい分かり易い説明だった」


「ニアノールっ、ありがとっ!」

 

 ニアノールさんの説明は、隣で膨れっ面をしている、なんちゃって聖女様の説明と比べたら、雲泥の差でした。


「ウチが説明したるって、言ってんのに」


「喋る時に焼菓子を、口に入れるからだろ。聞き辛いったら、ありゃせんわ」


「そんくらいええやんっ」


 焼菓子を頬張りながら、滑舌の悪い話し方をされると、苛々するんだよ? 俺が昭和の人間だったら、拳骨で注意してるぞ。


『ヒヒィィィンッ、ブルゥフフフッ』


『ブルゥッブルゥッ、ヒヒィンッ』


「おっ、停まるか?」


「着いた?」


 ゆっくりと馬車が、その動きを停めた。

 御者も居ないのに揺れが少なく、正に職人技っ、じゃ無いな。職馬技と言うべきだろう。

 何だよ職馬技って……。


「それじゃあ降りるで。ここからは歩きや」


「歩きって……誰か迎えとか来ないのか?」


「けえへんよ、検問所があるさかいにな。門を潜った先で、また馬車を拾ったらええねん」


 聖女なのに徒歩って……聖女とは?


「たのしみなのっ!」


「そりゃあ、俺もだけど……」


 楽しみ過ぎてなのか、ミルンはふんすっと鼻息を荒くさせ、尻尾をぶわっと膨らませて、ずっとそわそわしている。


「その尻尾、膨らむのか……モフモフ可愛い」


「ほら、ヘラクレスも準備しーや」


「結局移動中には、説明はなかったですな」


「そんなん言うたっけ?」


 村長は渋々とした顔で、聖女をジッと見つめて居るが、聖女様には、通じていなさそうだ。

 もしかして、喋り方だけではなく、そのメンタルも、関西圏の人並みに強いのだろうか。


「……うしっ、行こうかミルン」


「いっぱいあそぶのっ」


 そうして、馬車を降りた俺達は、先に見える検問所に続く、人集りの列に並んで、順番がくるのを待つのであった。




「それで、聖女さんや。いつになったら俺達は、門の向こうに入れるんだい?」


「おそいっ、ひまなのっ」


「ミルンさんや……叩かないで?」


 ミルンが苛々して、俺の頭をパシパシポンパンと、楽器代わりにしています。

 はい、ずっと並んだままなんです。

 正門の列の最後尾で、あの夏冬の名物である、某即売会ばりに整列して、並んでいます。

 正直言って、暇過ぎるんです。


「なぁ、聖女リティナ様」


「その言い方やめえっ! なんやアンタに言われるとっ、背中が痒うなんねんっ!」


「何で俺達……ずっと並んでいるんだ?」


「何言うてんねんあんた……」


 いや、そんな口を開けて、馬鹿な子を見る様な目で俺を見るなよ。アンタ聖女だろうに。


「かーっ、ほんま田舎者は。これやから困るわ」


「流君。この門を自由に出入り出来るのは、陛下と貴族、騎士団や門兵のみで、商人、都に住む者等は、例外無く並ぶのである」


「にしてもコレは、遅過ぎないか?」


「私も初めて王都に来た際は、同じ事を思ったのであるが、コレばかりは仕方あるまい」


 現代社会から来た身としては、こう言った検問所が必要な事も、分からなくはない。犯罪者の侵入防止や、変な物を持ち込ませない様にする為には、必要な事だからだ。


「だけどなぁ。待ち時間表記が無いから、ただの苦行なんですけど」


「おとうさん……ねむいっ」


「順番が来たら起こそうか?」


「おねがいしますっ……すぅ……すぅ……」


 俺の頭を枕にして、ミルンはそのままご就寝。テーブルからのランクアップ、おめでとう御座いますだ、俺の頭。


「先が見えてきたか……何か触ってるな」


「うむ。あの水晶に触って、問題が無ければ、そのまま入れるのである」


「へぇーっ、あの水晶でねぇ」


 アレで一体、何を確認しているのだろうか。

 緑色の時も有れば、光らない時も有る。

 うん、分からん。


『次の方ーっ! ここに手を当てて、ゆっくりと進んで下さーいっ!』


 いつの間にか、順番がきていた様だ。

 ようやく中に入れるよ。


「ほら、ミルンさんや。起きて降りなさいな」


「うにゅ……んしょっ、んしょっ」


『慌てず騒がず節度を持って、紳士淑女の皆様、走らず順番にお願いしまーす』


「本当に、何かを買う列じゃないよな? 薄い本とか異世界にあったら……普通に買うぞ」


 ニアノールさんを先頭に、門番さんが持っている透明な丸い石を触って進み、怪しい聖女、筋肉村長、可愛いミルンと来て、最後は俺ですねーはいはいっと。

 

「はいタッチ」


 透明だった石が赤く輝きを放ち、石を持った門番さんが笑顔で俺の顔を見てきたので、俺も門番さんを笑顔で見返す。


「…………(ニコッ)」


「…………(デヘッ)」


 門番さんが俺の手を掴んできたから、俺は掴んできた手を更に掴み返した。


「…………(ニコッ)」


「…………(デヘッ)」


 門番さんが、持っていた石を投げ捨て、俺の胸ぐらを掴んできたので、俺は門番さんの足を踏み付け、門番さんが息を大きく吸い込み、俺も息を大きく吸い込んで、準備良しっ。



「犯罪者だあああああああああああああ!!」


「痴漢よおおおおおおおおおおおおおお!!」



 門兵達が凄い速さで駆けつけて来て、一瞬立ち止まって迷っている様だったが、直ぐに俺を殴りつけ、抑え込み、即座に腕に枷を付けられましたとも。


「糞痛ってぇ、何すんだよっ!?」


「おとうさんっ!」


「来るなミルンっ!」


 ミルンが怒りを露わにしながら、俺を助けようとするも、村長がミルンを抑えてくれた。


「待てミルン君っ!」


「はなしてっ、はなしてよーっ!」


「我慢せぇミルンっ! 直ぐに助けたるさかいに、今は動いたらあかんっ!」


 聖女は何も出来ずに、傍観している。


「流さんっ」


 ニアノールさんは、すぐ動ける様な姿勢のままだが、動く訳にはいかないだろう。


 俺は、意味が判らないまま、門兵達に腕を掴まれ、まるで刑事ドラマの最後を見るかの如く、門兵達に連行されて行った。

 

「本当に……どうなってんの?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ