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異世界とは愛すべき者達の居る世界(胸糞控えめver.)  作者: かみのみさき


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8話 お前の事は忘れない②


「がぁぁぁっ、ぐごぉぉぉっ……ごがっ!?」


 コンテナの上部でのんびりと寝ていたら、急な振動で頭が揺れ、一瞬にして目が覚めた。


「っ、何だこの揺れ……」


 隣を見ると、すやすやと寝ているミルン。という事は、マッスルホースが爆走している理由は、ミルンの圧ではない。


「どっこいせっと」


 体を起こして、コンテナ馬車上部の柵に向かって、転けない様にゆっくりと歩く。


「ととっ、危ねぇ……」


「んんっ、流さんどうしたの?」


「起こしちゃったか。何か急に、馬車の速度が上がったから、何かあったのかと……おおっ」


 馬車より少し前方から、大量の魔物達が、まるで餌を見つけたと言わんばかりに、土煙を上げながら向かって来る。


「前のゴブより少ないけど……マッスルホース達は何で、あの大量の魔物を避けないんだ?」


 このままだと、あそこに突撃しちゃうぞ?


『ブルゥヒヒヒヒィィィィィンッ!!』


『ブルゥッ、ブルゥッ、ブルゥ、フシュッ!』


 あの感じ、避ける気が一切なさそうだわ。

 突っ込む気満々の走りですねっ!


「ミルンっ! 何かに掴まれっ! 絶対に振り落とされるなよっ! 来るぞおおおおおおっ!」


「んしょっ、流さんに掴まるっ!」


 マッスルホース達は、走る勢いを抑える事なく、先手とばかりに大量の魔物達の中へと、突撃をぶちかました。


 鈍い衝撃が────馬車を大きく揺らす。


「うおっ!?」


「おさかなっ!」


「ミルンは何で、親父ギャグを知ってるんだ?」


「何の事?」


 誤魔化されたぞ。なんか思っていたよりも大分、衝撃が小さいな……どういう事だ?

 そう思い、前方を見たら納得した。


 パッコーンッ────『ギュギョッ!?』

 ブチブチブチッ────『プギッ!?』

 プチュッ────『ギャアアアッ!』


 生々しい音を立てながら、ゴブリン、ゴブリン、オーク、ゴブリン、オーク、ゴブリン、ゴブリン、鶏? オークと、その迫り来る魔物の群れが、見事に潰されていく。

 ある者は押し潰され、ある者は上空へ。ある者は噛み引きちぎられ、またある者は粉々に。


『ヒヒィイイイ────ンッ!!』

『ブルゥッブルゥッッッ!!』


 二頭のマッスルホースが、その筋肉と重量でもって、魔物の大群を蹂躙せしめている。


「……ゴブが来た時に、あのマッスルホース達が居れば、簡単に勝つ事が出来たんじゃね?」


「ぷちぷち潰れていくのっ」


「コレは……あの台詞を言う、チャンスではっ」


 振り落とされない様に、コンテナの柵をしっかりと握り締め、ヲタクとして言ってみたい台詞を、声高らかに叫ぶ。


「ふはははっ! 我が軍は圧倒的ではないか!」


「流さんどうしたのっ!?」


「さあ筋肉馬達よっ! 敵を薙ぎ払えっ!!」


『ヒヒィイイイ────ンッ!!』

『ブルゥッブルゥッッッ!!』


 次の台詞は、やっぱりコレだろう。


「飛べないオークは、唯のオークさ。いや、コレじゃ無いな。お馬さんパッカパッカ♪」


「流さんが可笑しくなったっ!?」


 ミルンさんや。揺られ揺られて、ハイテンションになっただけだから、可笑しくない。可笑しくなってないんだよ。

 そんな事をしていたら、ポーンと前方から、何かが飛んでくるのが見えた。良い感じに俺目掛けてきたので、手を上げてのスポッとキャッチ成功しました。


「鶏……?」


「流さん、それコカトリスですよ?」


 ミルンが俺にしがみつき、涎を垂らしながら教えてくれるけど、どう見たってこの生物……アレにしか見えない。


「うん……鶏」


 サッカーボール程の、大きさの鶏の身体に、蛇の様な尻尾を生やし、『コケッコココッ』と鳴いている、卵が美味しい飛べない鳥。


「鶏……だな」


 俺は失念していた。

 大きかろうが小さかろうが、魔物は魔物。


 コカトリスとは、庶民の家計の味方。

 低価格で販売されており、その肉は蛋白で、様々な料理に合うと好評。一時乱獲され、その数を減らしたが、現在では増えに増えて、害獣ならぬ害鶏となり、捕獲推奨と言われるまでに進化した、厄介な魔物。

 その魔物の特性を、身を持って知った。


『コケエエエエエエ──ッ!!』


 はい、石化光線ですね。

 一瞬で石像に、なっちゃいました。

 だけどコカトリス、お前も逃げられないぞ。お前は俺の手の中に、居るのだから。自ら逃げ道を塞ぐとは、愚かな行為だ。


『コケェッ!?』


 ミルンは助けを呼んだ。


「……」


 コカトリスが暴れている。

 筋肉達磨の村長が現れた。


「……」


 石像をコンテナに搬入した。


「……」


 コカトリスが暴れている。

 聖女は爆笑している。

 ミルンは俺の頭を齧っている。硬い様だ。


「……」


 コカトリスが暴れている。

 聖女は爆笑している。

 村長も笑い出した。

 ニアノールは堪えている。


「……」


 コカトリスが疲れている。

 ミルンは尻尾を、俺の顔に擦りつけている。

 ニアノールは笑い出した。


「……」


 コカトリスは諦めた。

 聖女が奇跡を行使した。


「ふぅ……助かった……良しっ」


 俺はギュッと、コカトリスを握り締め、『こんのぉ鶏やろうがああああああっ!!』と、聖女の顔面目掛けて投げ付けた。


「何でやねんっ!?」


 筋肉馬達の働きによって、魔物の群れを殲滅した俺達は、新たなる仲間、コカトリスの非常食(ミルン命名)を連れて、先へと進む。


「ふぅ……何か一気に疲れた」


 仰向けになった俺の腹で、ぐっすりお休み中のミルンを撫で撫で……疲れが取れてきたな。


 ガゴッ──『流君。もう間もなく野営地である。そこで一旦休憩にするぞ』


 コンテナ上部の昇降口から、村長の声が聞こえてきた。俺は『了解』とだけ伝え、ミルンを起こしつつ、前方を確認。


「んんーっ、あそこか?」


 砂利道が終わり、整地された道が続く先に、大きなログハウスが見えてきて、そのログハウスから、煙がもくもくと立ち昇っていた。


「何これ……ただのキャンプ場じゃん」




 コンテナ馬車から降り、耳をぴこぴこ、尻尾を振り振りとしている、可愛いミルンを肩車して、野営地を歩く。

 隣には、猫耳メイドのニアノールさん。その隣には、大股で歩いている、どう見ても聖女には見えない、聖女リティナ。後ろからは、身長二メートル越えの筋肉の塊である、筋肉村長。


「物凄く目立ってるなぁ」


「そんなん気にせんでええやろ?」


「人が見てくるっ」


 周囲から視線を感じるけど、怪しい者では御座いません。大道芸人でも御座いません。と、言って回りたい気分になる。


「流さん、お腹が減りましたっ」


「そうだな……あそこでご飯作るか」


 広場の端に場所を陣取り、簡易の調理場を設置して、何処からどう見てもキャンプです。まごう事なきキャンプです。


「誰か火を着けてもらえるか?」


 ミルンがビクッと、肩の上で震えた。

 どうしたんだろ、ミルンは火が苦手なのか?


「火の魔石持ってますよぉ」


「ニア、それウチに貸し」


「んっ? 魔石?」


 ニアノールさんが、メイド服から取り出したのは、色は違うが、ミルンがゴブリンから抜き抜きしていた、あの石に見える。


「これをこうしたらっと」


 魔石を握った聖女リティナの手の平から、小さな光がふよふよと現れ、枯葉の上に落ちた。


 ────ポッ────


「えっ、それで火が着くの?」


 濡れパンをマシパンにする為、俺がどれ程苦労したと、思ってるいのだろうか。その後ミルンのボロ小屋までも、消しちゃったんだぞ。


「ほいニア、返すわ」


「はいどうもぉ。お役に立てて良かったですぅ」


 魔石はそうやって使うのか。といっても、魔石を握っているだけにしか、見えなかったから、色々と聞かないとだな。


「ちょいちょいニアノールさんや。ちょっとばかし猫耳を触っても、宜しいでしょうかっ!」


「ヒィッ!?」


 おっと間違えた。

 猫耳を庇って、一歩後ろに下がられたぞ。


「その魔石って、どうやって使うんだ?」


「あっ、ああっ、それですかぁ」


 ニアノールさん曰く、魔石を媒介にして魔力を流すと、その魔石の特性に合った魔法が、使えるとの事。

 魔力って何だよ。俺にも有るの?

 因みに魔石は、魔物の心臓。

 解体しなければ、手に入らないらしい。


「……無茶だなぁ」


 この俺に魔物解体何て、出来ると思うなよ。

 こちとら現代人ですからね。

 肉屋さん有難う。

 取り敢えずこれで、火が着いた。


「んじゃっ、お料理のお時間ですよっと。『空間収納』から、鍋をだしてっと」


 この鍋の出所は、村長には内緒だ。

 先ずは、玉葱っぽいモノを微塵切りにして、色が変わるまで炒め、人参っぽいモノと、馬鈴薯っぽいモノを加えて、更に炒める。

 次に、ブロック肉を取り出して、一口大に切り分け、調味料を揉み込んだら、色が変わるまでしっかりと炒める。


「流君……その調理器具と食材は、一体どこから出したのだ。そういえば、あの鞄も持っておらぬが……聞いてるのかね?」


 村長の事は、一旦無視無視。

 焦げないように炒めたら、お水を投入。その後はひたすら、煮込んで、灰汁を取り、煮込んで、灰汁を取り、煮込みまくる。


「良い匂いっ!」


「もう少しで、出来上がるからな」


 最後に、揺れているミルンの尻尾を、一度モフモフしてから、味を確認して、微調整。


「玉葱香る、シンプルシチューの完成っと」


 異世界の野菜だから、玉葱かどうかは分からないけど、味見した感じだと、玉葱なんだ。


「何か美味そうな匂いやん」


「これは、貴重な香辛料の香りですよぉ」


「流さんっ! 早く食べたいっ!」


 ミルンは涎が止まらない。

 コカトリス(非常食)をジッと見ている。


『ココッ……ケェェェッ』


 コカトリス(非常食)は怯えている。


「おっと、お皿だったな。『空間収納』から、お皿をだしてっと、コレで良いかな」


「……流君」


「何だ村長?」


 村長が、ポンッと俺の肩に、手を置いた。

 白い歯を見せた村長の顔面が、ゆっくりと近付いてくるんだけど、本当に何なんだよ。


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