表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界とは愛すべき者達の居る世界(胸糞控えめver.)  作者: かみのみさき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/30

6話 エンカウント③


 ゴブリンとは、身長は百五十センチ程で、肌の色は緑色や灰色汚。汚い腰巻きを付けた、側から見ると、半裸の小男の様な魔物。

 ただの変態に見えなくもない。

 ゲームや小説などでは、初心者が先ず出会うであろう、ファンタジーあるあるの奴だ。

 雑魚と言っても、過言ではない。

 しかしそれは、あくまでもゲームや小説の中の話であって、ボタン一つをポチポチするだけで倒せるのだから、雑魚に思えてしまうのも、仕方のない事だろう。

 それでは、実際のゴブリンが、コチラです。


「ギギャアアアアアアアアアッ!!」


「ゴギギャゴギャギャアアアアアアアッ!」


「フシュルギャギャッ!」


「のおおおおおおおおおおう──っ!!」


 ひたすら全力で逃げる脅威度ですっ!

 誰だよっ! ゴブリンが最弱って言った奴っ! ほんの少し前の俺ですねっ! 間違った知識って本当に厄介だわっ!


「武器持った小男が沢山居ると考えたらっ、勝てる訳ないよねえええええええええっ!!」


「魔石を下さいなっ!」


 立派な斧をブオンッ──と振り回す、犬耳幼女のミルンが居なければ、前に進む事すら出来ない程の、ゴブリンの群れ。


「ゴギャアアアアアアッ!!」


「こっち来るんじゃねええええええ──っ!?」


 何でゴブリンが、剣を持ってるの?

 野生なんだから、普通は素手だろ?

 えっ、異世界だから?


 ────ヒュンッ────


「あぶっ!? 普通に頭狙って来るとかっ!」


「流さんっ! 気を抜かないでっ!」


「分かってるって!」


 向かう先は、決まっている。このラクレル村の四方に建てられている、立派な"物見櫓"だ。

 そこで何をするのかって?

 魔法を使ってみるんですよ。

 高い位置から、どれ程のゴブリンが居るのかを確認してから、一番集まっている場所に向かって、魔法をぶち込む。


「発動するかどうか分からんとかっ、運ゲー過ぎるんだけどなあっ! 問題はっ、あの物見櫓までの道がっ、ゴブで埋まってるのよっ!」


「誰に言ってるんですかっ?」


「自分にだぞっ!」


 さて、ここで問題です。

 今全力で走っている、中年男の小々波流は、真昼間から石でボコボコにされ、体力がゴリゴリと削られており、この異世界に来てからというもの、走れ走れ体操を繰り返しています。

 俺の身体は、どうなっているでしょーうか。


 ガッと地面に躓き、「あっ──」っと口から、呆けた声が漏れ出てすぐ、踏ん張りが効かずにそのまま、前のめりに倒れ込んだ。

 俺の体力は既に、限界を超えていた訳だ。

 そんな隙だらけの中年を、魔物と呼ばれる存在が見逃す筈もなく、来るわ来るわ。涎を垂らしたゴブリン達が、わんさかと。


「ギギャアアアアアアアアア──っ!」


「ギギギギギギッ」


「っ……これ、死んだなぁ」


「ギャギャギャギャギャッ!」


「ギギャギギャギギャッ!」


 最後の晩餐は、異世界の土です。

 転けた拍子に、口に入ったのよ。

 カップ麺……食べておけば良かったなぁ。

 そう死を覚悟したその時、「ゴブ離れてえええええええええっ!」ミルンの声と共に、ブオンッ──と風が通り過ぎ、迫って来ていたゴブリン達の声が、聞こえなくなった。


「流さん起きてっ!」


 顔を上げると、ゴブリンの返り血で真っ赤に染まったミルンが、俺に手を差し伸べている。


「いっ、犬耳幼女の天使様っ!」


「それなあにっ! 早く起きてっ!」


「ぐっ……っ、どっせいっ!」


 ミルンの小さな手を握ると、あれだけ疲労困憊だった体に、不思議と力が湧いて来る。これが、犬耳幼女天使ミルンの、効果だろうか。


「ほらっ、もう少しだよっ!」


「ああ……っ、死んでたまるかよっ!」


 必死に走った。

 それはもう、必死に走ったんだ。

 しゃがんで跳ねて転がって、不様な姿を晒しながら、それでも足を止める事なく、必死に走り続けた。


「うひっ、ふひっ、全身が痛てえっ」


「もう少しだよっ!」


 物見櫓まであと少し。

 問題があるとするならば、物見櫓を登る為には、あの梯子を使わなければならない事。ゴブリン達に囲まれている中で、無防備な背中を見せる訳にはいかない。


「それでもっ、ミルンっ!」


「なあにっ!」


 素早く『空間収納』から、赤ジャージの上を取り出し、それを紐がわりにしてミルンに括り付け、そのミルンを俺が背負う。


「背中は任せたぞっ!」


「分かりましたっ!」


「っ、どりゃあああああああああっ!!」


「ギギャッ!?」


 ゴブリン達を押し退けて、梯子に手を掛け、残る僅かな力を振り絞り、全力で登った。

 俺、三十五歳の中年だぜ?

 明日、明後日は絶対に、筋肉痛だろ。


「ゴブは落ちるのっ!」


「ギャアアア──ッ!?」


「ふぬぐぐぐっ、ふひぃっ、重てぇぇぇっ」


 ミルンに加えて、重量級の斧ですからね。

 運動不足のこの身には、キツいんです。

 汗だくになりながら、それでも必死に登り続け、何とか一番上まで、登り切る事が出来た。


「っ、ミルンっ! 梯子を壊せっ!」


「分かったのおおおおおおおおおっ!!」


 背中からミルンが飛び出し、豚野郎の斧の一撃を、細い梯子にぶち当てて、追って来ているゴブリンを、そのまま地面へと落下させた。


「ぷはっ……はぁ、はぁっ、疲れたっ」


「大丈夫ですか?」


「あぁっ、大丈夫大丈夫。有り難うさん」


 ミルンの頭を撫で撫でします。


「むふふっ、褒められたっ」


「そんじゃっ、上から状況確認っと」


 疲れ切った重たい腰を、ゆっくりと上げ、物見櫓の上から、ラクレル村の外を見渡す。


「っ……これ、マジか……」


 そこにはまるで、一つの巨大な生物かの様な動きで、大地を埋め尽くさんばかりの、ゴブリンの群れが存在した。


「こんなの、どうしろって言うんだ?」


「あっ、誰か戦ってるっ」


 ミルンが見ている方へ顔を向けると、この距離からでも分かる、あの筋肉村長が、見事な剣捌きで、ゴブリン達を屠っていた。


「でも、あの動き……何か変だな」


「片腕が無いよ」


「あぁ……っ、凄いわあの筋肉」


 人の良い村長の事だ。大方誰かを庇って、あんな重傷を負ったのだろう。それでもあれだけ動けるとか、尊敬に値するぞ。

 物見櫓から下を見ると、ゴブリン達が丸太をよじ登って、上がって来ようとしてる。

 村の中央では、瀕死の村長。

 村人達も、応戦しているが、あの外に居るゴブリン達が、雪崩れ込んで来たならば、俺達も含め、美味しくもぐもぐはい終了。


「なあミルン。あの魔法……使えるかな」


「やってみれば良いの。後悔後先立たずっ」


「ははっ、そうか……そうだよな……っ」


 今ここで、あの魔法を使えないと、俺だけではなく、隣に居るミルンまで、あの糞ゴブリン共にやられてしまう。

 それだけは嫌だ。こんなに可愛いケモ耳幼女を、まだ小さい子供をだ、死なせるだなんて、大人としてどうよ?


「ふぅ……思い出せっ。あの時の魔法を……」


 集中、集中、集中しろ。

 あの時魔法は間違いなく、発動したんだ。

 一度発動したなら、イケる筈だろ。

 なぜかは分からないけど、この隣に居るミルンを、絶対に死なせたくやい。死なせる訳には、いかないんだ。


「流さんっ」


 ミルンの小さな手が、俺の服を掴んだ。

 その小さな手が、震えていた。

 あの時逃げた俺は、大馬鹿者だろ。だってそりゃそうじゃん。まだ小さな子供だろうに。


「だけどっ、今度は置いて行かないからなっ!」


 だからこそ、今この状況から生き残って、このケモ耳ミルンのお家を、直さなきゃだ。


「だからっ、発動しろやっ! 糞魔法おおおおおおおおおおおおお────────」


 リンゴーン、リンゴーン(上がり調)

『レベルがー--ー-奇-ー跡--ー -(--ー-ー 可)

エラー、エラー、エラー、エ-ー-ー可』

『良いですよぉ。貴方は見てて、楽しいのでぇ』

 リンゴーン、リンゴーン(下がり調)


 そのアナウンスと共に、世界が白に染るかと思う程の、光の雨が降り注ぎ、あまりの眩しさに、目を閉じてしまった。


「っ、何だ今のアナウンスっ!?」


「目が痛いのおおおおおおっ」


 瞼から感じる、強烈な光が収まった頃に、ゆっくりと目をあけると──大地を埋め尽くさんと居たゴブリン達の群れの姿が、影も形も無く、綺麗さっぱり消えていた。


「……えっ、何これ?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ