第3話
そんなこんなで教室に到着。するとそこには先ほどの少女の姿が。
何というか凄く居づらそうである。
普通、転校生って先生と一緒に入ってくる感じではないのだろうか。教室の他の生徒の様子を見ても、みんなこの少女とは面識がなさそうである。クラス替えはあるものの、もう三年生なので、いつものメンバーみたいなのがある程度固まっている。
その中にぽつんと置かれるのはいくらコミュニケーション能力が高い人だったとしても、しんどそうである。さっき自分に声をかけるときも、だいぶ気を遣ってそうだったし、なかなか大変そうだ。
あ、目が合った。後ろを見る。恒一がいない。ってことは俺か。どうしよう。とりあえず会釈。会釈は万能である。
「何もしない」と「声を出して挨拶」の中間のコマンドは間合いをはかるには非常に有効だ。相手の出方を見よう。後出しこそが正義。真由がじゃんけんで教えてくれたこの世の真理である。
「おはようございます。先ほどはありがとうございました。」
あ、普通に挨拶してくれた。いい子だなあ。なんかすごい礼儀の正しそうな雰囲気がある。
「おはようございます。教室への道は迷いませんでしたか?」
大丈夫だとは思うが一応聞いてみた。
「おかげさまで、大丈夫でした。ご親切にしてくださりありがとうございました。」
「いえいえ。」
というかこの子、先ほどまで座っていたのにわざわざ立って挨拶してくれている。恐縮だ。
そこへ横から割り込む声が。
「転校生?どこからきたの?」クラスの他の男子だった。
普段、恒一がいるピカピカグループが来たようだ。いつもクラスの行事とかを率先して引っ張ってくれる方々である。
初手敬語じゃないあたりかなりコミュニケーションレベルが高そうだ。三手目で角道を閉じる自分とはレベルが違う。雁木はいいぞ。恒一もいるし、とりあえずここは彼らに任せよう。現在進行形で楽しそうに話しているし、大丈夫だろう。
その場を離れ、クラスの席順を確認しに行く。教室の前方の扉を入ってすぐ、黒板の横に貼ってある。先ほどは混んでいそうだったので、あえて後方のドアから入った感じだ。
「あれ、後ろのドア付近か。冬場は寒そうだ。景色も黒板もみにくいな。」
残念。今回は外れだ。別に一年間ずっとこの席とは限らないので、あんまり気にしなくていいや。
ちなみにクラス分けは電子上で発表される。なら席順も発表すればいいのになと若干思う。謎サプライズ制度である。古き良き学生の楽しみを大事にしたい学長の粋な計らいだそうだ。
「さっきの子、飛び級生だって。」近くに戻って来ていた恒一が言う。
「え、まじ。すげえ。」
本当にいるんだな飛び級生って。魔法の成績が優秀な者は、特例で二年次をスキップできる。制度上はそういうものがあるのは知っていたが、本当にこの目で見ることになるとは。ちょっとうらやましいな。魔法の成績が壊滅的な自分からすると雲の上の存在だ。
「一部では有名だったらしい。光は知ってたっぽい。」
光さんというのは恒一の友人で大変に優秀な方だ。ちなみに、優秀というのは魔法の才のことを指すことが多い。実は恒一も結構すごい。
「だよね。飛び級ってめったに聞かないし、そりゃ話題にもなるよな。」
「俺もどっかで見たことがあると思ったら、文化祭の時だったかも。廊下ですれ違ったんだ。あんだけかわいかったら記憶にも残る。セミロングっていいよね。」
「謎が解けたね。やっぱ転校生ではなかったか。」
あと五分くらいでチャイムが鳴る。そろそろ座らなくては。先ほど確認した席へ。ずっと立ってたから疲れた。
「あの。」
視界の左端で綺麗な銀髪が揺れた。
「は、はい。何でしょう。」びっくりした。隣に人いたんだ。
あ、そういえば自分の席って、さっきの子の隣か。雲泥、月と鼈って感じだ。俺にもう少し魔法の才があればな。
「先ほどはお忙しいところお声がけしてしまいすみませんでした。」
「え、えーと、いつのことでしょう。すみません、心当たりがありません。」
「こちょこちょされていらっしゃったときです。」
「あ、いえ。お気になさらず。」
こちょこちょと敬語が結びつくシチュエーションってそうそうないよな。いや、この「されて」は受動態か?
「かえってお見苦しいところをすみませんでした。」ごめんね、不気味だったよね。
ってかあれお忙しいところだったのか。まあたしかにこちょこちょされている最中はお忙しかったかもしれない。お忙し、いやお騒がしだな。……。
その後は、天気の話題に興じた。いやあ、盛り上がった。何で二重丸のなのに曇りやねんってとこがクライマックスだった。
「キーンコーンカーンコーン」
お読みくださりありがとうございます。
後書きを追加いたしました。(2026年4月25日)




