第15話
主のいない部屋に、少女の呟きが静かに響いた。
***
「いってきまーす。」
「いってきます。」
「いってらっしゃい。」
時刻は8時半。王立学園の朝の集合時間は9時。市立学園は9時半。こんなところまで王立学園は厳しい。母に見送られながら二人で家を出る。
「ありがとね。時間あわせてくれて。」
「いや、もともとこの時間に行く予定だったし、気にしないで。」
「そこはかわいい妹のためって言ってもいいんですよ。」
「かわいい妹のため。かわいい妹のため。かわいい妹のため。かわいい妹のため。かわいい妹のため。」
「では、これは。」真由が自分を指さす。
「真由。」
「せやね。」ちょっとにらまれた。
そろそろいつものT字路に差し掛かる。ここで真由とはお別れだ。
「んじゃ、気をつけてな。」
「はーい。お兄ちゃんもねー。」
***
30分早く家を出たのには、真由と登校のタイミングを合わせる以外にも理由がある。今から自分が向かうのは第二訓練場だ。朝の時間にも開放されているので自主練ができる。
第二訓練場はお世辞にも設備がいいとは言えない簡易的な訓練場だ。第一は大規模な訓練場で、基本的には自由な出入りはできない。第三訓練場というものもあるが、そちらは許可制で優秀な生徒専用のものだ。
第二訓練場は学年ごとに部屋が割り振られている。混雑を防ぐためなのだろうが、そもそもあまり人が来ていない気がするので全部自由に解放してもいいのではないかと思う。
靴を履き替え、うっすらと埃をかぶった木製の下駄箱に脱いだ靴をいれる。下駄箱もご丁寧に学年ごとである。
「あれ?」
珍しく先客がいるようだ。しかも見たことのない靴だ。
へへっ、新入りか。先輩風吹かせてやるぜ。スマートフォンを開き、天気予報をみる。あ、今日無風だ。
ガチャ。
去年までとは違う部屋の扉を開ける。すると、中には一人の人間が。
目が合った、背後を確認。誰もいないな。よし、会釈をする準備は万全だ。
さあ、俺の会釈がはつど――
「おはようございます。」
「おはようございます。」
「柊さんですよね?朝早くからお疲れ様です。」
「白石さんですよね?白石さんこそお疲れ様です。」
何とそこにいたのは隣の席の白石さんだった。
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