第12話
「このわたくしがつくってあげましょ~。」
冷蔵庫には丁度二人分の冷凍ご飯。ストックされている食材から、今夜のごはんはチャーハンに決定だ。
「俺もやるよ。」
「いいって。お兄ちゃんはそこで休んでて。」
一緒に作ろうと言ったが、真由は一人で作りたいらしい。今のうちにお風呂でも洗っておくか。
***
「ねえ、お兄ちゃん。」
二人で食卓を囲む。テーブルの上には真由がつくってくれたチャーハン。
「どうしたの?」
「正直に言ってよ。」
「何を?」
「わたしはその優しさが辛いよ。」
真由がチャーハンを指で示す。
「ああ、味のことね。」
真由はあまり料理が得意ではない。という最近始めたばかりだ。初めて真由が他の人に料理を振舞ったのは、4月3日の自分の誕生日にオムライスをつくってくれたときだ。
味が薄かったのを本人はすごく気にしていたが、俺としては自分のために料理を作ってくれたのがとても嬉しかった。
「やっぱ、微妙だよね。」
「いや、悪くはないと思うけど。」
「良くはないってことだよね。」
真由は正直な感想を求めている。変に繕うのは良くないか。
「まあそうだね。なんか若干味濃いかも。塩かな。」
「う~。やっぱそうだよね。ちょっといれすぎかなっては思ってた。ごめん。」
「そんな気にしないでよ。」
「う~。ごめんね。前、お兄ちゃんにオムライス作ったときに味薄かったから今回こそはって思ってたのに。」
真由は「あー。」とか「うー。」とか「チャーハンというよりチャハーンって感じかな。締まりがない感じ。」とか言いながら味について色々反省中だ。チャハーンに締まりがないことついては議論の余地があるが、そんなに落ち込まないでほしい。最近料理を始めたばかりの真由が、一所懸命作ってくれたという事実が嬉しい。
「ありがとね。真由。誕生日のときも今日も、作ろうとしてくれるその気持ちが嬉しいよ。それにね、真由がつくってくれたものは俺にとって全部宝物だよ。ごちそうさまでした。」
これだけは忘れてはいけない。真由の目をまっすぐ見て伝える。あ、宝物食べちゃったな。
「う、うん。」
すると真由はその場で一度深呼吸をしてから、明るい表情で言葉を続けた。
「今度はかんばるからっ。お粗末様でした!」
やっぱり真由には笑顔が似合う。この笑顔を守るのが自分の役割だ。
強くならないと。
***
「今更だけど学校どうだった?」
「うん?ごめん。水の音で聞こえないかも。」
二人で夕食の片づけ中だ。真由は片付けまで一人でやるつもりだったらしいが、流石に悪いので自分も参加した。真由が洗って、自分が拭く、そんな役割分担だ。一通り皿を洗い終わったタイミングで改めて聞く。
「学校どうだった?」
「あー学校ね。思ったより早く終わったよ。」
真由の通う学校である中央守護学園は基本的に厳しい学校だ。オリエンテーションが始業式を兼ねる市立学園と違って、各行事や式などは厳格に執り行われる。一年生である真由は午前中に入学式、午後からは始業式、その後オリエンテーションという次第だ。ほぼお昼で終わった市立学園と違い、王立学園は初日からハードだ。
「疲れなかった?」
「大丈夫だよ。オリエンテーション後に魔法の適性とか能力の検査とかあったけど終わった人から帰っていい感じで、すぐに終わったから意外と早く帰れたの。」
「そうなんだ。楽しくやっていけそう?」
「うん。まあ、ちょっと不安だったけど、行ってみたら思ったよりどうにかなりそうかなーって感じ。」
ならよかった。王立学園は他の学園とは勝手が違うと聞いていたので、ちょっと心配だっだ。
「あ、それよりお兄ちゃんっ。お兄ちゃん。」
何かを思い出したようだ。身を乗り出すように話し出す。
「アイドルいたの。本物っ。超かわいかった!」
お読みくださりありがとうございます。




