EP.040
「あ、でも…レオン様、誰でもこんなことをしちゃだめですよ。好きな人以外にこういうことは…」
歩きかけたレオン様の足がピタリと止まり、こちらを振り返る。
「は?まて。誰でも?誰でもって言ったか?」
「ロゼリアは、俺が"誰にでも"こんなことをしてると思ってるのか?」
「え?い、いえ、言葉の綾というか…でも、本当にこういうことは好きな人以外にしてはいけないというか…」
レオン様の歩みが、こちらへ向かう。
「ロゼリア以外にするわけがないだろ」
「…え?」
「え?」
「え?待ってください、そういうの、それがだめなんです!だって、それって、その…あの、」
「…嘘だろ?気づいてなかったのか?」
「待って!待ってください!」
「俺がこういうことをするのは、ロゼリアだけだ。ロゼリアが好きだからやってる。それ以外に理由なんてない」
「待ってくださいってば!」
静かな部屋に、自分の心臓の音だけがやたら大きく響いている気がした。
暗闇の中、私の顔は今どのように彼の瞳に映っているのだろうか。
「フッ…なぁ、手どかして。顔見せて?」
「い、嫌です!無理!」
「なんで。…ていうか、本当に伝わってなかったのか?」
「だって、そんなの…」
昔も今も、確信をついた言葉を言ってくれることはなかった。それは、私と彼の立場を考えたら当然のことで。
だから私も、どこか諦めていたのだ。
この恋はずっと片思いのままで終わるのだろうと。
お互い、国のために決められた人間と結婚し、将来を築いていくのだろうと。
「好きとか…言ってくれたこと、なかったじゃないですか」
「…言わなかっただけで、今も昔も、ずっとロゼリアのことしか見てないよ」
「というか、照れくさいだろそんなの。俺が言うと思うか?」
そう小さく文句を言うレオン様の耳は、暗闇でもわかるほど真っ赤に染まっていた。
気づけば私は、また彼の胸に飛び込んだ。
咎めることもなくさっと抱きしめ返してくれるその腕は、とてもとてもかっこよかった。
「いまも、昔も…ずっと、私だけが好きなんだと思ってました」
「それは…わかりづらくて、ごめん。好きだよ。ずっと…ロゼリアが、一番大切」
その言葉がどれだけ嬉しいものか、待ち遠しかったのか。
不意に、抱きしめられた腕に力がこもった。
「今言うことじゃないのはわかってるし…なんかダサい気はするけど。予約させて。全て落ち着いたら、結婚しよう」
「ちゃんと、ご両親にも挨拶させて。もう絶対、傷つけない、守るって約束する。だから、もう少しだけ待っててほしい」
胸がいっぱいで、恥ずかしさで真っ赤なまま泣きそうな顔を隠し、私は何度も頷くことしかできなかった。
レオン様は私の反応に安心したのか、小さく笑って額に唇を落とした。




