EP.037
「あの、ちなみに、レオン様は…」
私がそう切り出すと、お兄様は少し間をおいてから答えてくれた。
「今、裏で色々と動いてくれいてる。表立って動くと、何処かの家に肩入れしてるとか、変な噂が流れてもめんどくさいからな」
昨日の後処理などもあり、忙しいのだろう。
昨日の今日で、私に会いたくないから来ていない…そうだと感じないための質問だった。
「…話を戻すけど。ひとまず、あの二人は捕らえて牢に入れてるから安心してほしい。家の方も、もう大丈夫だと思う」
「牢に…そうなんですね。我が家も大丈夫というのは本当ですか?」
「あぁ。レオナルド殿下が、前々からかなり手を回してくれていたからな。彼らが大きく出てくれたおかげで、思っていたよりもうまく治まりそうだ」
嬉しい気持ちに胸が包まれたのも束の間。
安堵はそう長く続かなかった。
「でも、侯爵家の方は黙ってないだろ?」
腕を組みながら壁際に立っていたアルバートが、厳しい顔のまま口を挟む。
「あぁ。何をしてくるかわからないというのが、正直な所だな」
「しかも、あの義娘…サラ様だっけ?ロゼリア、顔割れてるんだろ?」
「私が事件を起こしたみたいな言い方やめてもらえる?」
軽口を返すも、内心はとてもひやりとした。
アルバートの言い分もお兄様の言い分も最もだった。
侯爵家が、本気で公爵家を潰すことが目的の場合、義父母の拘束は大きなことではないのだろう。
むしろ、手駒が減ったせいで、手早く大きな動きを起こすしかない。
その場合、手を出しやすい…きっかけとして扱いやすいのは、私なのだろうと、容易に考えがついた。
そして私はやはり顔に出やすいのかもしれない。
お兄様が、本当にいつぶりかに私の頭を優しく撫でてくれた。
「そんな顔するな。そんな顔しなくても、絶対に手なんて出させないから安心して」
優しく頼もしい、兄の顔だった。
「お兄様…」
「俺もいるしな!この国だけで考えたらそれなりに強いし任せとけって」
"この国だけ"、"それなりに"、とは言うが、実力で、屈強なレオン様の右腕として選ばれているのだ。
彼が一流の剣士であることは誰もが知っている。
お兄様も、レオン様も──全員が、私を守ろうとしてくれている。
「…ありがとう」
「まずははやく怪我を治せよ?せっかく元気になってきたところなんだしな」
アルバートの言葉に賛同するように、お兄様も、まずは怪我を治すように、まずはそれだけを考えて、と言い残し部屋を去った。
そして、アルバートも、部屋の中にずっといたら気が散るだろうと。
アンがいるときは、基本的には外や近くにいるから、と言い残して部屋を去り、私とアンの二人だけになった。




