EP.034
「…どうして、ここに」
「どうしてだと?貴様…親である私達を売っておいて、何様のつもりだ!」
「そうよ!あなただけ呑気に過ごすなんて許さないわ!」
──まずい。
二人の話に思い当たることは何もない。ただ、ここにいることは良くないと、脳が危険を知らせてくる。
咄嗟に後ずさり、後ろ手でドアを開けて逃げようと腕を伸ばすが、義父に腕を引っ張られ転がるように部屋の中まで引きずり込まれる。
「っ……!」
「この間のパーティーから我が家がおかしくなったんだ!全部お前のせいだ!」
「そんな、私は何もしていません!それに…我が家って、あの家は──」
「うるさい!黙れ!口答えをするな!」
次の瞬間、机の上の水を顔に浴びせられる。
冷たい水が視界を奪い、どうにか逃げようとするも、部屋に置かれた机やソファーが行く手を阻み、思うように動けない。
あの騎士も仲間だったのだろう。
アンが部屋に戻ったときに、私がいないことに気付いてくれるだろうか。
この奥まった部屋では、音をだして誰かに助けを呼ぶことも難しかった。
「大体貴様は───!!!」
義父の怒声が響く。
どうにか逃げ道を探ろうと視線を走らせるも、扉の前には義母が立ちふさがり、おそらく外には騎士が立っているのだろう。
たった一瞬、逃げ道を探してたった一瞬だけ
視線を逸したその瞬間、頭に衝撃が走った。
「話を聞けと言ってるんだ!」
殴られたのだろうか。視界が鈍る。衝撃で体が壁に打ち付けられ、うまく動けない。
痛みで視界が揺れ、頭ではまずいと理解してるのに、指一本すらもうまく動かせない。
何かを叫びながら近づいてくる義父に、せめてもの抵抗で目を固く閉じたが
────次に訪れたものは、想像していた衝撃ではなかった。
殴られたような衝撃ではなく、何か温かいものが体を包み込んでいる気がした。
恐る恐る薄く目を開けると、そこには、肩で息をして、私を不安そうに、焦った様子で見つめる彼の姿があった。
「ロゼリア!」
「レオン…様。どうして…」
「説明は後だ。殴られたのか?頭?痛い?話せる?いや、話さなくていい、ちょっとまてっ…」
「だい、じょうぶです。私は、全然…だい、じょうぶ、」
「ロゼリア…?おい、しっかりしろっ────!」
そこで、意識は途切れた。




