EP.032
「わ!ロゼリアのそのイヤリングすごいかわいい!どこで購入したの?」
一週間後。
城に遊びに来てくれたマリアンヌと、二人でお茶をしていた時だった。
「これは…この間王都に行ったときに購入したの。硝子細工の雑貨屋さんがあってね──」
ついその流れで、話せる範囲で、マリアンヌにこの間の話を打ち明けてしまった。
「えぇ!?二人そんなことになってたの!?」
私の話に身を乗り出すマリアンヌ。
よく考えれば、昔も含めて私達は恋愛相談というものをしたことがなかったように思う。
やだ、すごい。レオナルド様めちゃくちゃ頑張ってるじゃない…と、小さく独り言を呟くマリアンヌの向かいで、複雑そうな顔をする私に気付いたのだろう。
「…なにか不安なことがあった?」
「実は、その日からレオン様と会っていなくて…」
「え、そうなの?」
マリアンヌは少し考え込んだ後、こう続けた。
「う〜ん…あ、でも、アルバートも最近帰ってくるのがすごく遅いの。色々忙しいみたいだから、別に避けられてるとかではないと思うわよ?」
マリアンヌの話によると、ちょうどあの王都に行った次の日あたりから、アルバートも含め、全員の公務が立て込んでいるそうだった。
そう考えれば、レオン様だけでなく、お兄様もどこか忙しそうにしていたような気がする。
(そっか…それはそうだけど、これは偶然…なのよね?)
まさか、フラテリーニ商会に行ったことと関係があるのか?
そんな考えも過ぎったが、マリアンヌが明るく声をかけてくれる。
「気にしなくて大丈夫よ!…それに」
ニヤリと笑って続いた言葉に、飲んでいた紅茶を吹き出しそうになった。
「もう流石に"レオナルド様の気持ち"気づいてるでしょ?」
「マリアンヌ!」
思わず声を上げる。
「ごめんごめん、怒らないで。…私、これでもロゼリア達のこと、ずっと応援してるんだからね?」
それは、五年前からもずっとわかっていた。
私が密かにレオン様のことを好きな話を知っているのは、マリアンヌとアンだけだった。
──二人いわく、全然密かではないとのことだったが。
ただ、公爵家と第二王子という立場もあり、なかなか簡単に婚約というわけにもいかない。
おおっぴらに話すこともできず、二人だけが密かに私の背中を押してくれていたのだ。
「ロゼリアはもっと自信を持って。…昔からそうだけど、あなたは世界で一番可愛いんだから!」
「なにその褒め方」
思わぬ方向の褒め方に、二人で笑ってしまう。
不安な気持ちを払拭するような穏やかな午後。
きっと、どこか平和に慣れてしまっていたのだろう。
まさか、あんなことが起きるとは、このときの私は、
まだ予想もしていなかった。




