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ずっとあなたを想ってます〜両親を亡くした公爵令嬢は幼馴染の第二王子に溺愛されます〜  作者: 千翔りさ
3章 知らないままではいられない

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EP.031

雑貨屋を出た頃には空の夕日も沈みかけており、私達はそのまま迎えの馬車に乗り込んだ。


帰りの道中も行きと同じく向き合って座り、カタカタと石畳を進む音だけが車内に響いた。

レオン様は何か考え事をしているのか、ほとんどこちらを見ずにぼんやりと窓の外を眺めていた。


「…今日は、ありがとうございました。たくさん」

「いや、別に大したことはしてない」

「そんなことないですよ!」


本当にそんなことない。

彼がいなければ、怖気づいて、私はあの商会に入っていなかったかもしれない。

あのイヤリングは購入していなかったと思う。


「最初はアンと来ればよかった!って思ってましたけど…でも、レオン様と来れてよかったです」

「マイナスなことは言わなくていいんだよ。褒めるところだけでいい」


少し笑いの混じった呆れた口調の割に、優しい声色。

視線は窓の外のままだった。


「それに、なんでそんな最後みたいな言い方するんだ。また、来ればいいだろ」

「…いいんですか?」

「よくなかったら言わない」


夕日に照らされているから、そう見えるだけだろうか。

耳が赤いのは、きっとそのせいだけではないと、私だけはそう思ってもいいだろうか。


思わず口元が緩んでしまう。


「何笑ってるんだよ」

「笑ってないです」

「笑ってるだろうが」


少し拗ねたような声色に、更に笑ってしまったのは、秘密にしておこう。


「でも、結局フラテリーニ侯爵家のことは何もわかりませんでしたね」

「…そうだな。俺が不快な思いをしただけだ」

「不快な思い、されたんですか?」

「あの時何を見てたんだ。あんな有りもしない話を作り上げられて、不快にしかならなかったに決まってるだろうが」


ふとあの話題を口に出してしまい、また少し馬車の空気が冷えたような気がした。


ありもしない、か…。

(それは…私にはわからないけれど)


「──好きじゃないんですか…サラ様のこと」


あくまで雑談の延長線。私の本音は透けないように、いつもと変わらない声色でそう伝えた。


石畳を叩く馬の足音よりも、自分の心臓の鼓動が大きい気がした。


「好きじゃない」

「…好きなやつは、他にいるから」


「…そうなんですね」

(それは…誰なんですか?)


勇気のない私にはその言葉を紡ぐことができなかった。口にして、確信をつく勇気はまだなかった。


誤魔化すように窓の外を眺め、そっと目を閉じる。

向かいから届く視線には気づかぬふりをしていた。



ちなみにあの後、私は本当にそのまま眠ってしまったらしい。

目が覚めた時にはベッドの上で、キラキラと朝日が差し込んでいた。


『あら?おはようございます、お嬢様』


起こしに来たアンの話によると、城に着いたあとは、眠ってしまった私をレオン様が部屋まで運んでくださったそうだ。


(やらかした…)


穴があったら入りたいとはこのことなのだろう。


加えて、しばらくしてから部屋に届いたドレスの件を兄に説明しようとしたところ──


『あぁ、それなら殿下からもう貰っている。殿下の身分がバレないように私の名前を使って買ったからと聞いたが…違ったのか?』


まさかの理由付けまで完璧に、手回しされていた。


何から何まで迷惑をかけてしまったと、レオン様に謝りにいこうとしたのだが。


あの日以降、彼に会うことはできなかった。

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