EP.030
顔の赤みが引いてから外に出ると、そこには、まるで何事も無かったかのような顔で壁にもたれて立っているレオン様がいた。
「…お待たせしました」
「あぁ、欲しい本は買えたのか?」
「え?あ、あぁ…はい。大丈夫です」
もちろんそんなものはないので嘘である。
あまりにもぎこちない返事になってしまった、絶対に嘘とバレている。
「そうか」
ただ、レオン様は深く追求することはなく、それだけ言うと街の奥に向かって歩き出した。
私も慌てて横へ並び、少し距離を保ちながら歩を進める。
王都ももう終盤まで来ていた。
端まで歩き切ったところで、そろそろ帰るべきか切り出そうとしたとき、小さな雑貨屋が目に入った。
飾られたショーウィンドウの雑貨を見ていたことに気づかれたのだろう。
「入るか」
その一言ともに、レオン様は先に店の扉を開いた。
「あ、待ってください…!」
慌てて後を追い店内に入ると、そこには、硝子細工で作られた様々な雑貨が所狭しと並んでいた。
夕日に当たってキラキラと輝く店内は、まるで宝石場のようで。
…その中に立つレオン様は、やや浮いていた。
「わぁ…すごい、めちゃくちゃ可愛いですね」
「あぁ…まて、俺、場違いじゃないか?これ」
「まぁ、大丈夫ですよ!」
同じことを思っていたのかと、思わず笑ってしまう。
二人並んで店内を見ていると、一際目を引く小物があった。それは、バラの形を模したイヤリングで。
手にとって光りにかざしてみると、光のあたり具合で色合いが赤とピンクをユラユラと変わるデザインになっていた。
「かわいい…」
思わず呟いてしまった言葉に、即座に彼が反応する。
「いいな、それ。似合うと思う。買ってこようか」
「ま、待って!そういうつもりじゃないです、自分で買…」
買います、そう言いかけて、値札をちらりと見ると。
先程の商会よりは安いものの、それなりのお値段が書かれていた。
(総ガラスでこんなに素敵なデザインなんだもの、当然よね…!)
さっきのお店でも予定外にお兄様の名前を使い、適当に掴んだドレスを購入してしまった。値段は見てないが、相当な価格のはずだ。
あのお金は後々返そうと思っていたため、これも合わせて購入するとなると、なかなかにまずいことになる。
流石に諦めるしかないと、イヤリングを展示ケースに戻そうとしたら
「これ、ラッピングお願いします。支払いはこれで…釣りはいらないです」
戻そうとしたイヤリングを大きな手が横から取っていき、店員さんに先に伝えられてしまった。
「え、ちょっと待ってください。私、買うなんて一言も」
「自分で自覚ないのかもしれないけど、ロゼリアは本当に考えてることが全部顔に出てる」
「ほしいものは全部言えって言っただろ」
「や、でも…」
「いいんだよ、甘えれば」
その声は、さっきの苛立っていた彼とは違い、落ち着き、ぶっきらぼうな優しさを交えた声色だった。
「…やっぱり俺には微妙の居心地悪いな、この店。可愛すぎるだろ…店自体も小さいし。先に出てるから、品物受け取ったら外に来て」
言いたいことだけ言い切ると、あっさりと出ていくレオン様。そして、レオン様と入れ替わりで店員が包んだ品物を持ってきてくれた。
「お待たせいたしました。こちら、お品物です。……素敵な恋人ですね」
その言葉にどう反応していいのかわからず、私は、愛想笑いをしながら赤くなった顔をごまかすばかりなのであった。




