3 ゾンビ、回想される
ささくれだった気分で再びアパートを出た。
まだ六時台だがもう外の空気は夏の蒸し暑さをまとっていた。先ほど向かったローソンと反対の方角に路地を折れ、その後も家や集合住宅の建ち並ぶ中カクカクと路地を曲がった。やがてJRの線路沿いの直線の細道に出た。
細道は私から見て左手、東側が線路になっている。右手には相変わらず住宅が続いていた。その風景が真っ直ぐ、遥か先まで広がっている。
この光景が開けた瞬間、左手――線路の向こうの、低い家々の屋根の上までのぼった太陽の、眩しい朝日が私を刺した。一瞬その日差しに左眼を灼かれた私は慌てて顔を背けた。
金曜日の早朝に駅へ向かう人、また駅からこちらへ来る人が時々自転車に乗って私の脇を通り過ぎていく。それらは皆大人だった。誰もどこか憂鬱そうな、疲れた表情をしていた。私もきっと同じように見えたに違いない。
途中車通りの激しい大きな踏切と交差する十字路を渡ると(交差する道はなかなか車が途切れない上に信号がなく、私はしばらく道を渡れなかった。黒いワゴン車の中年女性の運転手が停まって、渡っていいよと私に合図してくれて、ようやく私は道を渡れた)、右手の建物はだんだん商店が多くなってくる。それは居酒屋だったり美容室だったりパブやバーだったり小さな不動産屋だったりして、道に面する住宅の一階をそれらが店舗として改装している形がほとんどだった。しかし時間柄ほぼその全てがシャッターを閉めひっそりとしていた。唯一の例外として、自転車が店前にずらりと並べられている自転車屋だけがもう店を開いていて、老店主が何か文句を言いながら自転車のメンテナンスをしていた。
――こんな味気ない駅までの道を歩きながら、私はずっと弟のことを考えていた。




