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おばさんは家の玄関に入っていき、私は玄関先で待たされた。しばらく一人で立っていると、玄関扉が開き、おばさんと、その後に望結ちゃんと思われる女性が出てきた。
望結ちゃんは母親に似ず大柄で、ひどく太っていた。オーバーサイズのTシャツに、ステテコのような薄い生地の半ズボンを穿いていた。そのTシャツは胸と腹の部分が醜く出っ張り、袖からはボンレスハムのようなたるんだ二の腕が覗いていた。ステテコからも肉付きの良い太い足が出て、それは不健康なほど白く、すね毛が薄く生えてふくらはぎにぶつぶつと赤い湿疹ができていた。
私は彼女の顔を見た。ぼさぼさの黒いストレートヘアーの下に、白豚のような顔が見えた。眼は肉に埋もれて細く、鼻は低く鼻穴が上を向き、二重顎の下に肉がたっぷりついて首を無くしていた。無表情で、何を考えているか読めない。
(……やばそうなのが来た)
私は正直そう思った。
(え、今望結ちゃんってこんな感じ? 美洋はこういう感じの、豚……ふっくらした子が好きなの?)
私が固まっていると、望結さんの前に表に出てきたおばさんが、
「ほら望結ちゃん、一ノ瀬さん。美洋くんのお姉ちゃん。小さいころ遊んでもらったべ、覚えてるでしょ?」
と場の空気をほぐすように言った。望結ちゃんが「……こんにちは」と頭を下げた。
私は慌てて挨拶を返し、弟ががんにかかって今日の午後にも病院に入院するのだが、その前に望結さんに会いたいと言っている、という嘘の混じった話を改めて丁寧に説明した。
「厚かましいお願いなのは分かっていますが、これから美洋のいる東新宮まで来ていただけませんか? お願いします」
私はまた深々とお辞儀をした。顔を上げると、
「いいですよ」
ぼそっと望結ちゃんが呟いた。
「あ、いい? え、本当ですか?」
私はあまりにすんなり了承を得られたことに一瞬頭が追いつかず、思わず聞き直してしまった。
「はい」
望結ちゃんの声は低く、こもっていた。
「ありがとうございます! じゃあ、私ここで待ちますので、出発の準備をしていただいて……できれば九時〇二分発の電車に乗れればと思うのですが」
「このままの恰好でいいです」
「え、このまま?」
そこでおばさんが割り込んできた。
「望結ちゃん、人に会うんだからちゃんと服着替えてきなさい。それに携帯もお財布も持ってないでしょ?」
望結ちゃんはその細い、何を考えているか分からない眼を母親に向けて、
「……そうだった」
と呟いた。




