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第三章 中城襲撃と自称親友お嬢様

 ()()()()

 大きな爆発音が中城に響く。

「雪乃っ!」

 とっさに焔様が私を抱え込み、依代の力を使って落ちてくる瓦礫を燃やす。

 抱え込まれている隙間からドタバタと次々と人が出ていく中、武装した軍団が走って中城に入ってくる。おそらく依代の護衛官たちだろう。

 そんなことはないと信じたいが、簒奪者の可能性があるので私は少し上を向いて幸音たちと合流したほうがいい

「焔様。幸音たちと合流しましょ…」

 今の今まで私を力強く抱きしめていた手がふと緩んだかと思うと、焔様がばたっとその場に倒れた。

「…え?」

 目の前の現実を受け入れられずにただ呆然と焔様の脇腹から滲み出てくる赤い液体を見る。

 苦しそうに唸る焔様の声で我に返り、焔様をふわふわな絶対解けない雪と氷で作ったベットに乗せて自分の後ろに庇い、怪我の部分を雪と氷でふさぎ、攻撃されないよう固い氷で焔様を囲う。

 自分を囲う各それぞれの依代の護衛官の服装の者たちに氷と氷の短双剣を作りだしながら私は問いかける。

「あなたたち、依代の護衛官ではないの?何が狙いなのかなぁ?...さっきの爆発音はなにかな?」

 ゆっくりと問いかける私に答えたのは私の目の前でカチャリという音を立てながら銃を構えた氷の依代の護衛官の服装の男だった。

「...()()()()()()()()()()という命を我々に与えた。もちろん快く受け入れたさ。ここに居る約半分は、()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。...我々の神をよくも、よくも、殺したな…ここで、死ね!!!!」

 前代…母様…。私が、殺した。母様を…?

「…そうね。確かに私が、母様を、殺したに等しいわ。…でも私は、まだ死ねないのよ!!」

 私はまだ、死ねない。次代の依代はきっとお姉ちゃんが選ばれる。その時お姉ちゃんが困らないように、私が整える。それが終わったら、私はお姉ちゃんに依代を明け渡して死ぬの。誰にも見つけられないように、山奥でね。

 だから、それまでは。

「母様からもらったこの命。その日が来るまで私は、母様が好きでいてくれた私を貫ぬいて、お姉ちゃんのために使うの!!」

 そう言って私は完成した短双剣を手に走りだす。

 私に向かって放たれる銃弾を剣で弾きながら私を囲む簒奪者を切り倒していく。

 最後の一人になった時に、私は氷で腕と足を拘束し、その辺に投げ捨てる。他の倒した者たちも同様に拘束して投げ捨てる。

 母の事もあり、気付かなかったのだ。死角で銃を構えていた刺客の存在に。


 グラグラと建物が揺れて瓦礫が落ちてくる。私達はそれらを避け、廊下に出る。

「薫様っ!!雪乃たちがっ…!」

「っ、くそっ!急いで合流しよう。カフェに居るはずだ。」

 私達は急いで同じ階にあるカフェを目指して走りだす。

 ただそこでもカフェに行くのを阻むために刺客がおり、私は長双剣を、薫様は長剣を抜いた。

 次々に沸いてくる刺客を切り倒していき、やっとの思いで雪乃たちがいるカフェに辿り着く。

 私はバンッと薄っすらと凍った扉を無理やり開け放ち、中を見る。

「雪乃っ…!!」

「焔…っ!」

 ()()()()()

 銃声と共に今まで立っていた雪乃の体がゆっくりと倒れていく。ばたっ、という音と共に雪乃の体が床に叩きつけられ、雪乃の後ろにある氷の塊が溶け出し、中から雪の上に横たわる焔様が出てきた。

「ゆ、きの…?」

「焔…!?」

 目の前の現実を受け入れられずに、私と薫様は自分たちの主に駆け寄った。雪乃を打った刺客は、雪乃が自分で手足を拘束していた。

 私は雪乃をそっと抱えた。すると手にべったりと雪乃の赤い血が付く。

「雪乃、雪乃っ、しっかりして!今病院行くからね、お姉ちゃんがどうにかするからね!」

 必死に雪乃が眠らないように話しかけると、雪乃はほろりと生気の薄れた顔で笑った。

「やだなぁ…まるで私が死ぬみたいじゃない…死なないよぉ…死ねないもん」

 はぁっ、はっ、と荒い呼吸をしながら言葉を紡ぐ妹。まだ13歳なのに、子供なのに。

 —そうだ。私の妹はまだ、子供だ。母の時もそうだった。雪乃は、まだたったの六歳だった。

 どうしてまだ13歳のまだまだ大人には程遠い雪乃が、こんな目に合わなければいけないの?同じ子供よね?でも私は15歳で、雪乃は13歳。それでも、おかしいと思う。他の依代様方もそうだけど、なぜ、こんなに年端もゆかない子供たちが命の危険にさらされるなんて。おかしいのよ、こんな世の中。

「ーゆ、きね?ゆきね!」

 はっと気が付いた時、雪乃は打たれたみぞおちをぎゅっと掴みながら変わらぬ荒い息をしながら、言葉を早口で紡ぐ。

「ゆき、ね。くん、めいです。ほむ、ら様たちを、連れて、脱出しな、さい。氷城に、にげ、こんで。状況は、悪い…私は、ここに、残り、ます。時間、稼ぎ、くらいできる。」

「やだ、やだやだやだ!!雪乃、雪乃も一緒に逃げよう!…ねぇ、お願い…」

 雪乃は目を軽く見開いてからほにゃりと、ゆるみ切った笑顔で笑った。まるで、最後のような。

「幸音。...向こうが狙うは、私。どうか、逃げてちょうだい。私、よわく、ないもん。...巻き込んだ、のは、私。面倒な、事、残し、ちゃって、ごめん、ね。」

「…応急、処置、しただけだから、焔様、急がないと…」

 雪乃はゆっくりとみぞおちを押さえながら焔様たちの所へ行くと、崩れるようにして座り込んで、二人に頭を深く、深く下げた。

「…本当に、申し訳、ございませんっ…今、回の事は、私、のせい、です。…時間、稼ぎは、私が、やります。どうか、お逃げ、ください、っ」

 長く喋ったせいか、ごほっ、と雪乃がせき込む。雪乃は自分の手の平を見て、安堵したような顔をした。

「雪乃様っ、簒奪者の問題は依代のせいではないです!…焔も、そう言うでしょう。どうか、一緒に逃げてはいただけませんか、焔のためにも」

 雪乃は首を横に振った。そして、まっすぐ薫様を見て言った。

「…私の、精霊の、眷属を、お連れ、ください。…言ったことは、ありませんでした、が、私は冬の精霊と契約を交わしており、ます。さ、すれば、氷城の門、は、開かれましょう。」

 またごほっ、とせき込んでから、雪乃はぱちんっと指を鳴らす。

 すると、6歳ふわふわな白髪に限りなく銀に近い灰色の瞳の着物を着た女の子が出てきた。

「わたゆき、と、いいます。よろしく、たのみ、ました」

「これが、最後ね。わたゆき。ごめ、んね。お兄ちゃんと、引き、離しちゃって…大丈夫、お兄ちゃん、あとから、追わせるから、ね」

 眉を寄せてぼろぼろと泣くわたゆきの頭を優しくなでて、ぎゅっと抱きしめる。

 するとわたゆきは、柔らかい雪を雪乃のみぞおちに詰め込んで止血した。


 ありがとね、と満面の笑みでわたゆきをさらに強くぎゅゅゅっっっと抱きしめた。

 そして、ふと真剣な顔になってふらりと立ち上がり、わたゆきをそっと離してわたゆきが手当てしてくれた箇所をさらに固い氷で覆う。

「わたゆき!!皆を連れて行きなさい!!ほかの人達はあなたの妹に任せるから!!」

 その声と同時に、涙を今だに流し、唇を噛みしめながら雪の空飛ぶ雲を作りだして、窓の外にふわりと浮いた。

『うう゛っ、早く上るですっ。主さまが力尽きる前にですっ。早くするのですっ』

 幸音たちはわたゆきのふかふかな雪に押されて無理やり雪の雲に乗せられる。

「「雪乃ー!!!!!!!!」様ぁっ!!」

 こちらへ叫ぶ幸音たちの声が聞こえるが、私は聞こえないふりをして、冬の精霊『のえる』を呼び出す。

「のえる!ごめん、ちょ、手伝ってくれる?」

 のえるは冬の精霊。白銀の髪に碧眼が特徴の男の子。ツンデレで背は低いけど、これでも16歳。こちらも綺麗な和服を着ている。

『それは構わないが。…結構多い、入り込んでる敵が。…あるじのその怪我じゃあ、こちらが優勢とは思わないな』

「…まぁ、私はここで死ぬべきだから。面倒なことはかたずけて、から死ぬのよ。お姉ちゃんが困っちゃうでしょ?」

 のえるは私の方を向いた。それは、なかなか感情を表に出さないのえるが、眉を寄せて、すごく悲しそうな顔をしていた。

「わたゆき。さぁ、お行きなさい。…幸音たちを、頼んだよ。幸音を、これからも守ってあげてね」

 そう言って私は階段でこちらに上がってくる音のする方向を向いた。

 その言葉を合図にわたゆきたちの乗った雲は、氷城に向けて飛んで行った。

「さぁ、行きましょー?…お姉ちゃんたちを酷い目に合わせた罪は、この場で償っていただきましょう。」

 そう言って黒いオーラをたたせながら笑う私にのえるがぞっとしたのは言うまでもない。

 始めに中城を氷漬けにして逃げ道をふさぎ、私たちは最上階へと走る。

 私が踏んだ所は凍っていって、上がれないようになっている。

「のえる。他の依代様方と人間をここに。私は戦いに行ってくる。…優先は依代様方ね。」

『了解!』

 元気な返事と共にのえるは下の階へ降りていく。一応敵が入り込めないように床に足つぼのシートをかたどった氷を敷いてみた。…ちょっと楽しみ。

 足つぼシートを敷き終わってから私ものえるに続いて階段の手すりに乗って下の階へと降りていく。

 私を殺そうとして切りかかってくる簒奪者たちを倒して行きながらさらに深い地下へと進む。

「…ここね」

 階段を下りた先にある古い大きな扉の前に立ち、重くて大きい扉を開け放つ。

 扉が開いた先に居たのは、5人の護衛と思われるガタイのいい男と、その真ん中に下を向きながら座る親玉とは思えないほど、身長の小さいふわふわとした淡い水色のドレスを身にまとい、美しいこちらもふわふわとしたピンクの綺麗な女の人が座っていた。

「まぁ~!やっと来てくれたのねぇ~!!()()()()()()()()雪乃」

「いや、待ってろなんて頼んでないし。こっちゃまじで大迷惑なんだけど?」

 彼女はきょんっとかわいらしくびっくりしてからかわいらしく笑った。それはそれは、かわいい顔に似つかぬ黒い笑顔で、笑った。

「やだわぁ。()()()()()(わたくし)がせっかく迎えにきて差し上げましたのに。」

 しくしくと見事な嘘泣きを披露する自称親友のお嬢様。

「かぁわぁいそぉぉぉに。いつ、どこで、私たちは親友になったのかなぁぁぁぁ???記憶がないのだけれどぉぉぉ???????」

 またもやかわいらしいきょんっと腹黒いかわーいらしーい笑顔を浮かべ、手を挙げると、左右に立っていた男どもが銃、剣を私に向かって構えた。

(わたくし)にそんな言い方していいのかしらぁ?…打たれて死ぬわよ」

 私はさんっざんやられたきょんっをかわいくないきょんっで返し、黒すぎるオーラを出しながら、顔に青筋を浮かべながら、笑顔で返した。

「ご忠告には感謝するねぇ。でも、私は死なないから平気。」

「生意気ね。さっさと死ねばいいのよ。ーそうすればー」

 その後の言葉は、ぼそぼそと言っていてよく聞こえなかった。

 彼女は考えるのをやめ、黒い笑みで手を下に降ろして言った。

「いいわよ。掛かりなさい」

 その言葉と同時に男たちは私に襲い掛かる。一人は彼女を守るために残っているのだろう。

 剣で戦うのが2名、銃が2名半分半分で剣が近距離、銃が遠距離で戦うため、大変戦いにくいこと極まりない。

 頭、腹、足と三か所同時に狙ってくる彼らは頭がとてもいいのだろう。それとも、自称親友の彼女の命令なのか。だとしても。

「頭がいくら良くても、実力が伴ってないよ、君たち!」

 足を狙う銃弾をジャンプして交わしながら、腹を狙った剣士を足で払い、そのまま頭を狙った男にぶつける。

 ぱちんっと指を鳴らし、氷を周りにいくつも作り出す。

「さぁ。反撃の時間と参りましょう?」

 氷を次々に放ち、氷たちは自称親友ちゃんたちに向かっていく。

 けれども、銃を持っていた者たちは倒せても、自称親友ちゃんとその護衛は見事にすべて弾き返した。

「ほぉ。なかなかやるのね。見てからにお嬢様なのだけれど」

「まぁ、確かにお嬢様だけれど、(わたくし)これでも春の精霊なのよ?」

「あぁそうですか。...は?精霊?春の!?」

 いきなり爆弾をぶっこんできた自称親友お嬢様が、さらっとそんなことを言った。

「そうよぉ。まぁでも、半精霊半人間だからねぇ。季節は回しているけれど、そこまで私は興味がないの。あなたの方がよっぽど興味があるわぁ」

 こっわ…と引きながらも護衛から繰り出される攻撃を防ぎ、さらに自称親友お嬢様からの攻撃も防いでる…いや、防いでた、が。怪我していたこともあり守り切れず、自称親友お嬢様からの攻撃が私の怪我していたみぞおちをくりぬいた。

「げほっ」

 ぼたたたっと赤い血がみぞおちからも口からもしたたり落ちる。

「…言ったじゃない。死ぬわよって。…目的には沿うけれどね」

 私は荒い息でみぞおちの部分を氷で固めながら彼女に言った。

「いいの、死んでも。…お姉ちゃんは逃げきれたかなぁ?あは」

 私はさらにげほげほとむせ、血を吐きながらも、立ち上がり、彼女に向かって氷の刃を放った。

 悲しくも氷の刃はあっけなく精霊の力で粉々になり、傷一つつけられず失敗に終わる。

「…あなた、雪乃、まだ姉に尽くしているの…?」

「尽くすなんて。…ただ、幸せになってほしいの。私が居たら邪魔になる。私はいつでも死ぬ覚悟でいる。…私は、何時だって、死ねるなら、死んでしまいたい…」

 瞬間、周りに沢山の花が咲き誇り、花畑と化した。護衛達すら巻き込み、彼らは外へと追いやられた。

 そして彼女は大股でズカズカと私の元に歩み寄ってきて身構えるが、そんな体力も気力もすっかりなくなって、私はへとりとその場に崩れるようにして座り込んだ。

 瞬間、彼女は私を優しく、強く抱きしめた。それはもう、力強く。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんねっ…私、私…」

「私たち、昔にあったことがあるのよ。私は春を届ける精霊としての教育でとても疲弊しきっていたじゃない。そこで、たまたま私がぐれて遊びに来ていた公園にあなたが一人できて、もう死にたい、と呟いた私に氷で作ったブライダルベールの花束をくれた。氷のリボンで結ばれたね。私はすごくうれしかったの。そいつらさいてー!!そんな奴の言うことなんて聞かなきゃいいよ。もし変な事いわれたら、私あなたたちの事大っ嫌い。さいてー、私他所の国に行こうかしら?ってね。だめ?じゃあ、一緒に息抜きで遊ぼう!と言って夜遅くまで遊んでくれたあなたが、大好きになった。家に帰って、私はすぐ怒鳴りつけられたけど、さいてー、私、他所の国に行ってやるわ!!って言ったら大人しくなって。優しくなったわ。そんなひと悶着あった後に、私はブライダルベールの花言葉を調べたの。そしたら「幸福」「花嫁の幸福」「あなたの幸せを願い続ける」「豊かさ」ですって。私、あの時あなたに惚れちゃったの。どうしようもないくらい好きになった。けれどもあなたは」

「色々調べてみたら、あなたが6歳の頃に事件があって、あなたは周りから疎まれていた。そしてあなたは、自分が元氷城の依代様を殺してしまったと思っている。周りもそう思っている。そしてあなたは自分のせいで母を失った姉、幸音のために護衛官である幸音も誰も連れずに何時も仕事に行っていた。私は春の精霊。いつでもわかるのよ。もう、やめましょう?私は今がとても幸せ。あなたがくれたブライダルベールのおかげでね。私はね、今では馬鹿なことを考えていたなと思うけれど、そんな姉にとらわれているあなたを救うために、今日あなたを殺しに来た。あなたを殺して精霊の力で浄化して、新たな精霊として私の側にいてもらおうと、そう思っていたの。けれど、それは間違いだった。これからは、あなたを生かして、私も生きながら、幸せになりましょう?私達は、幸せになるために産まれてきたのだから」

 ああ。どうして忘れていたのだろう。その境遇を私と重ねて一緒に遊んだ友達を。屈託のなくやわらかに笑うあの子の笑顔を。ーそれでも私は、幸せになれないの。なっちゃいけないの。

「…全部、私のせいだもん。仕方ないじゃないっ、私のせいで母様は亡くなったのだからっ。...せめて、せめてお姉ちゃんは私なんかにとらわれずに生きてほしかった、幸せになってほしかった。私の後継を継ぐのはきっとお姉ちゃんよ。面倒な事は全部私がかたずけて、お姉ちゃんは幸せになれば、それでいいの。...この場で私は死ぬのよ。そうすれば、そうすればお姉ちゃんが後継者になって国が、世の中がきれいに回っていく。あなたみたいな、あなたみたいな、苦しい想いをしなくてすむ世の中ができるかもしれない!!それが、それがどんなに喜ばしいことかっ」

「わかってる。けれど、あなたもそれに振り回されたでしょう?別にいいじゃない、死に急がなくたって。幸せに生きてみましょうよ。季節を、春の花たちを見ないなんて勿体ないじゃない!」

「花を…?」

「そうよ。私がたっくさん見せてあげるわ!私、あなたのこと恋愛的に好きだし、好きじゃなかったらこんなことしないわよ、普通。だから、一緒に、末永く、幸せに生きましょう」

 私はびっくりして固まって、顔が熱くなっていくのを感じながら、おそるおそる彼女の背中に手を回し、ぎゅっと力を込めて抱きしめた。

「ーうん、うんっ!私、幸せに生きてみたいな…れ、恋愛的なお話は保留でっ。…これからどうなるかによって変わるからっ」

 相変わらずきょんっとして、今度は黒い笑顔ではなく、優しい、穏やかな笑顔で笑った。

「私は、沙織。雪乃、私頑張って振り向かせるから、覚悟しててね?」

「あはっ、やれるもんならやってみなぁ!…けど、ごめん、もうけっこうげんかー」

「い」

 そういって私はごほっと血を吐いてぱたっと力なく倒れた。

「きゃああぁぁぁ!?雪乃ーー!!」

 その甲高いかわいらしい?悲鳴を聞いてから、私は意識を手放した。

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