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流星群  作者: こでまり


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13/18

機密情報 後編

鍋島たちが事務所に戻ると事務所では若林と橋本がパソコンで映像を見ていた。

「ただいま戻りました」

鍋島と今西が事務所に帰って来ても気づかず若林と橋本は真剣に映像を見ていた。

鍋島と今西はどんな映像を見ているのかと覗き込む。

二人が真剣に見ていたのは、今西が運転する車のドライブレコーダーだ、深屋智子のマンションに行く途中の映像だ。

今西の運転する車のドアミラーに映るのは上田京子だった。

時間的に稲田貴子が帰った後で鍋島たちが深屋智子のマンションに着く数分前だ。

病院で吉村と佐竹が話していた内容を思い出す。

この映像を見ると深屋智子殺害は稲田貴子ではなく、上田京子ではないかという疑問が出てくる。

鍋島は病院で聞いた話を若林と橋本に伝える。

「病院内でも噂になっているようだ。そして警察も動いているみたいだが、上田京子は行方不明になっている」

若林が伝えてきた。

「どうして、上田京子は深屋智子を殺さなければいけないのですか?」

鍋島が聞く。

「深屋智子と上田京子、田中昌大は稲田拓人のふりをして悪事を働いていたことを警察は掴んでいたらしい」 

若林が言う。

「どんな悪事ですか?」

今西が聞いている。

「稲田拓人の車を乗り回して事故や恐喝を働いていて、更に示談が成立した被害者宅に押し入り現金を奪っていたようだ」

若林の言葉に鍋島は澤谷が話していたことを思い出す。

「拓人の偽物ですか。それに深屋智子と上田京子は仲間割れでしょうか?」

鍋島が聞く。

「おそらくな。三人の証言を取るため刑事が深屋智子に接触した時に上田京子が計画をして深屋智子と田中昌大はそれに従っただけだと言っていたらしい」

若林が言う。

「上田京子が計画していたというなら田中昌大を稲田拓人になりすませることもできますね」

鍋島は別の内容も考えた。

田中昌大が整形して稲田拓人になり、楠木智恵子を殺害し、本物の稲田拓人を別荘火災で殺したら田中昌大は楠木智恵子の殺害容疑者から外れる。

どうして上田京子がそれだけの計画を立てたのか。そこが疑問に思う。

それに稲田貴子が拓人と言い張った内容も気になる。

もしあの時、警察に言われたとおりにDNA検査をしていたら、田中昌大は稲田拓人とは別人だと早くから判明していたはずだ。

未だ、稲田拓人は楠木智恵子殺害の容疑がかけられている。

そのことを稲田貴子はどう思っているのか?

佐伯のケーキにあったように嘘の話に本当の話をまぜる。なんちゃってミルフィーユだ。

「それと楠木智恵子殺害は望月瑠美から上田京子に持ちかけた話ではないかと警察は捜査をしている。上田京子は田中昌大に整形を持ちかけ、楠木智恵子を殺害、望月瑠美から金銭を受け取っていたようだ」

若林が言う。

「現在、望月瑠美は行方不明です。そこまで操作が進んでいるのですか?」

鍋島は警察がどこまで調べているのか気になった。

「望月瑠美と楠木智恵子の件は東京の警察が調べている。望月正嗣の医療事故を追っていて分かったことらしい。現在も、望月病院に来ていて調べているようだ」

「稲田拓人は変わったと言われています。研究所に忍び込んだ稲田拓人が田中昌大だったとして、何かを探っていたのかと言うと恐らく研究所が欲しがっていた土地のことでしょうか」

鍋島が言うと若林があの土地のことかと聞いてきた。

「そうです。あれだけの土地の買収ならかなりのお金が動きます。拓人はそれを狙ったのではないでしょうか」

鍋島が言うと若林も納得する。

その時、室田からメールが届いた。

(これ、知っているか?)

見たことのない男とリックサックの写真だった。

鍋島と若林、今西が写真を覗き込む。

「これ!」

声を上げたのは今西だった。

今西は自分のタブレットを操作して写真を表示させる。

室田から送られてきた写真と今西がタブレットに表示させた画像を並べて見る。

「同じですね」

今西が言う。

鍋島は急いで室田に電話をする。

ワンコールで室田がでた。

「何処で見た?」

鍋島が聞く。

「隣町のマンションから出てきた男が持っていた鞄についていた」

室田の話に鍋島は疑問に思う。

そういえば、拓人は以前、この鎖に指輪をつけていた。

別荘火災の時、指輪の話は出てきたがこの鎖のことは出てきていない。

「何処のマンションだ?」

鍋島が聞くと室田はマンション名を告げた。

そして拓人に研究所の情報を漏らした人物も特定したと言ってきた。

鍋島と今西はすぐに室田が伝えてきたマンションに向かった。

マンションの前には室田が待っていた。

「望月瑠美を探していた時、あの鎖を持った男が上田京子をつけていたんだ。その時に以前、今西さんから見せてもらった稲田拓人がつけていたチェーンによく似ているのがカバンについているのに気づいて」

室田がマンション内を歩きながら話す。

マンションの一室の前まで来ると表札が目に入る。

(兼松)の表札がついっていた。

「ここから出てきていた」

室田が言うと鍋島は手帳にメモる。

「どういう繋がりでしょうか?」

今西も驚きを隠せないようだ。

「研究所に情報を漏らした人物は捕まったと聞いたが」

鍋島は先程、若林から聞いた話をすると警察に通報したのは室田だと言ってきた。

「本当は望月瑠美を追っていたんだけど、その時にある女が望月瑠美と落ち合っていたんだ。そこにさっきの男も望月瑠美を隠れて探っているがわかった。どうやら望月瑠美と会っていたのが上田京子だとわかって、確か上田京子って警察が調べていたはずだと思い出して、隠れて様子をみていた。そこに研究所の従業員だという男がやって来て情報流出の疑いがかけられて解雇されたと言い争いを始めたんだ。絶対わからないようにすると言ったから協力したのにとも言っていたから、スクープになりそうだと思ったけど望月瑠美がにげ出そうとしたから、とりあえず情報流出の犯人がいると警察に通報だけしていたが、その間に上田京子と望月瑠美には逃げられた」

室田は悔しそうに言う。

「おそらく、楠木智恵子殺害は稲田拓人に整形した田中昌大だ」

鍋島が伝えると室田は本当か?と聞き返して来た。

「それと、田中昌大が整形して稲田拓人になりすますように仕向けたのは上田京子で田中昌大と上田京子と深屋智子は稲田拓人の車を勝手に乗り回して事故も起こしていた。おまけに稲田拓人の父親が示談金として被害者に渡したお金を田中昌大たちが奪っていたこともわかっている」

鍋島が伝えると室田は怪訝な表情を見せた。

鍋島はほぼ間違いないと伝えると室田は気を取り直したのかブツブツと独り言を言っていた。

「あと、上田京子は望月瑠美からお金を受け取っていた可能性がある」

鍋島が伝えると室田は殺害依頼か?と聞いてきた。

鍋島が恐らくと伝えると室田は急いでメモを取っていた。

その後、室田は再度望月瑠美を探すと言って街中に消えていった。

鍋島と今西は先程のマンションに戻って暫く待っていたが室田が見た男は帰って来なかった。

仕方なく鍋島たちは事務所に帰る。

事務所に戻ると、今西は春祭りのイベントの写真の選別を始める。

所長から通常業務もしっかりするようにと言われていたためだ。

鍋島も春祭りの紹介の記事の内容をまとめて今西が準備した写真を配置する。

出来上がった内容を橋本に渡すと橋本は会社のHPに載せる準備をしていた。

鍋島は橋本に明日、商店街の取材と流星群の撮影の翌日にホテル星華の総支配人、田辺とチャペル担当の宇佐美の取材が入っていることを伝えておく。

翌日、鍋島と今西は駅前の商店街の取材に行く。

今西は商店街周辺の写真を撮影していく。

鍋島は商店街の会長からイベントのチラシを貰い、詳細を確認していく。

「今年はイベント中、天気がいいみたいなのでよかったです」

会長は上機嫌で話す。

「研究所の農産物も商店街の中にアンテナショップを開いてくれるようで、今から楽しみです。そこもアピールしてくださいね」

「あの研究所の作物をですか?」

鍋島が聞く。

「そうです。初めはホテル星華だけでしたが、商店街にも店を出して作物を販売すると言ってもらえました」

会長は早ければ今年の夏から店を出せると言ってきて、その時の取材もお願いされた。

「研究所はどうしてそこまでしてくれるのですか?」

鍋島は疑問に思う。あの研究所で作られた作物は全国にある研究所に住む人々のためだと聞いている。

それが、ホテル星華と商店街にも作物を卸すとは。

「あの研究所の土地はこの街に住んでいた人から買った土地だからだろうね」

商店街の会長が言う。

「この街に住んでいた人から買ったのですか?それは誰ですか?」

鍋島は知りたかった内容にやっと辿り着くと期待した。

「そこまでは私も知らないのです。ただ、以前この街に住んでいた人が売った土地だとしか」

会長は申し訳なさそうに話す。

「以前と言うと、もうこの街には住んでいない?」

「申し訳ない、街を出て行ったとしかわからないです。その人が今、どこに住んでいるのかもわかりません」

会長の返事に鍋島は肩を落とした。

その後、鍋島と今西は事務所に戻った。

「所長、研究所の土地ですが、以前、この街に住んでいた人物が持っていた土地だそうです。しかし、その人はこの街を出て行ったと聞いたのですが、何か知りませんか?」

鍋島は若林が何か知っているかもと聞いてみたが特に知らなかった。

「研究所だよな……。あの土地は元々、3家くらい民家があったと思うが、いつの間にか研究所になっていたからな」

若林が昔を思い出しながら話してくれる。

「その人がこの街を出ていったのはいつ頃ですか?」

今西が聞いてきた。

「詳しくはわからないけど、俺が高校に行くようになってからだと思う」

若林が言うと今西の表情が曇る。

「そうですか」

「どうした?」

若林が今西に聞いた。

「この間、室田さんに聞いたマンションからある人物が出てきていました。たしか、拓人が事故で入院した時の被害者の男性だったと思うのですが」

「それって高樹紀行か?」

若林が聞く。

「確かそんな名前だったと思います」

今西が言う。

「確かにあの家は稲田家程ではないが土地を持っている。別荘地の土地の半分くらいは高樹家の土地だ」

若林の話に鍋島は興味深いと思う。

「今度、行ってみよう」

鍋島が今西に言うと今西は頷く。

その後、鍋島たちは翌日の流星群の撮影の準備をして帰った。

翌日、朝食を食べながら、朝のニュースを見ていたら鍋島は驚いた。

望月正嗣が捕まったとニュースでやっていた。

その時、室田からメールが届いた。

(ニュースみたか?大スクープだ。正嗣の居場所掴んで警察に突き出してやったぞ)

その後、ニュースサイトには室田の取材内容が次々出ていた。

鍋島は出社時間ギリギリまでそのニュースを見ていた。

しかし、稲田拓人に関連した内容や望月瑠美や楠木智恵子の話題は一切出ていない。

何か理由があるのかと思いながら事務所に向かった。

事務所に着いて鍋島と今西は現地で若林と橋本は事務所で映像を流す予定で最終打ち合わせをしてから、鍋島と今西は機材を車に乗せて移動する。

櫛田さんの山に着いて、鍋島と今西はカメラを設置して撮影の準備を始めた。

鍋島は会社のカメラで周囲の撮影の準備をする。

事務所から若林の声が掛かる。

流星群が始まる。

少しずつ夜空に星が流れていく。

鍋島は町中の様子をカメラに収める。

今西も設置したカメラの映像を確認していた。

鍋島も夜空をカメラ越しに見ながらあまりにも圧巻で声にならないくらい感動していた。

どれくらいの時間が経ったのかわからないくらい夢中で夜空をみていた。

徐々に流れ星が消えて星がポツンポツンと点在しているだけになった。

若林からは終了の合図が入った。

鍋島はゆっくりと意識が戻ってきた。

まるで別次元に行っていたような感覚になった。

今西も同じような感じだろうか、空を見上げて呆然と立ち尽くしている。

鍋島は少し寂しさを思いながら片付けをはじめた。

機材全てを車に乗せて櫛田さんの山から降りたのは日付けが変わった後だった。

事務所について機材を下ろしていると若林が興奮気味に声を掛けてきた。

「良かった。現在もアクセス数が増えている。大成功だ」

鍋島と今西はその言葉を聞いて嬉しくなってそれぞれ自宅に帰った。

翌日、鍋島たちはホテル星華へ行く。

先に総支配人の田辺のところに行って研究所とのコラボとして料理のメニューを見せてもらう。

どうして研究所と一緒に仕事をするようになったのか聞くと菅田から話が持ちかけられたと言ってきた。

鍋島は納得する。

駐車場のことも再度、聞いてみたが、確かに研究所に関わっている会社みたいだがそれ以上は話せないと言われた。

その後、宇佐美のところに行く。

チャペルでは現在、月一でお茶会なるものが開催されている。

それを大々的に宣伝してほしいと依頼があった。

話を聞くと佐伯や松本が主に担当して、ケーキなどのスイーツとコーヒーや紅茶などが出されるといった内容だ。

取材を終えて帰ろうとした時、宇佐美から、いつにするかと聞かれた。

鍋島と今西が驚いていると貸しを返してもらうと言われた。

鍋島たちはとうとう捕まったと思った。

返事をしないと帰してもらえない気迫に満ちた笑みを浮かべ、迫ってくる宇佐美に渋々予定を確認して伝えるとやっと解放された。

「怖かったですね」

帰りの車中で今西が呟いた。

鍋島は逃げられなかったと肩を落とした。



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