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経営難な料亭を立て直すため、料亭で修行することに。だがなぜかラブコメ展開に!?  作者: 彼方夢
京都料亭は波乱万丈⁉

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9/14

失敗からの成長。

 トントンと包丁を落とす。キャベツは切られていく。

 わりかし順調だったのだが、指を切ってしまった。あっ、と思った瞬間――血が先端から滲み出る。こんな失敗、何年ぶりだろう……


「指、切ったのか?」

「はい……すみません」


 副料理長は晶の肩を叩き励ましてくれる。それに対して晶は頭を軽く下げた。


「消毒してこい」

「分かりました」


 厨房から出て、屋敷へと戻る。そこで、消毒液と絆創膏はどこだろう、と探すが広い屋敷のなかでそれは困難だった。なら、ただいま夏休み謳歌中の五姉妹の誰かに訊ねよう。

 廊下を歩いていると、ベースの音が聞こえた。楽器練習中の希美はやめておこう。

 すると、ちょうどいい時に梨丘が部屋から出てくる瞬間に出くわした。


「おっ、梨丘」

「なに?」

「絆創膏どこだ?」

「指切ったんだね。救急箱はリビングの本棚の中だよ」


 梨丘の後ろに続く。リビングに入ると、彼女が救急箱を取り出す。


「やってあげる。ソファに座ってて」

「ありがとう」


 彼女はキッチンで手を洗い、タオルできちんとぬぐってから、ソファに座っている晶の許へと来る。そして彼の前で座り、指に消毒液を垂らし馴染ませてから、そこから絆創膏を回す。

「これでよし」

「助かる」


 晶は梨丘に別れを告げて、厨房へと戻った。

 副料理長にまた頭を下げる。

それほど晶は自身の行いを恥じていたのだ。


「申し訳ありませんでした」

「大丈夫だ。――ほら、早くもう一度始めろ」

「はい」


 包丁を洗い、さっさと行動する。

 ザクザクザク。包丁を素早く落として切っていく。

 けっこう慣れてきたかな。



 そして、この繰り返しの日々も終わる――

 


 そこから更に二週間後。

 朝早く。千切りを再開しようとしたとき、副料理長からもうそれをやめてもいいと言われる。

「次は出汁巻きの練習だ。いいか、難しいとは思うがこれも大切なことだ」

「分かりました」

 出汁巻きはかなりの高難易度だ。徹底した火加減調節が求められるものであるから。

「千切りの時の感覚が生きるからな」

 再び告げられた。晶は軽くうなずく。


 まず初めに、卵液を作るボウルに卵を割り入れ、白身を切るように箸を左右に直線的に動かして溶く。そのあと、卵液をザルで一度こせば、仕上がりの口当たりが驚くほどなめらかになる。 一回目を焼く。卵焼き器を中火でしっかり熱し、油を薄く引く。卵液を少し流し込み、全体に広げ、大きな泡が出たら箸で潰す。

 二回目以降を繰り返す空いた手前スペースと、奥の卵の下にも行き渡るように油を塗り直す。再び卵液を流し込み、奥にある卵を箸で少し持ち上げ、その下にも卵液を流し込む。半熟になったら、奥の卵を芯にするようにして手前に巻いていく。これをあと二回繰り返す。

 形を整えて余熱で仕上げる。焼き上がったらすぐに火を止め、温かいうちに巻き返す。そのまま数分置いておき、皿に盛りつけ完成。



 持っている知識を最大限活用した。

 


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