地獄の修練の日々を癒してくれる五姉妹。
料亭での修行も二週間目。
そこから、もう一段階認めてもらえるようになるために、晶が行うことになったのは、包丁捌きの習得であり、その練習の筆頭こそが、キャベツの千切りだ。
何玉も、何玉も。ひたすらキャベツを刻む。
その練習の要因は――手首のスナップの叩き込み。それと、修練での根性叩きである。人間は同じ行動を何分も、何時間も繰り返すことを本能的に嫌う。だが仕事においてはその本能の逆を行かなければいけない。料理人も同様だ。それを本能に叩き込む必要があり、根性論と同一性というわけだ。
とりわけ、そういう行動は晶の得意とするとこだったが。
――この地獄の修練が原因で、異なる道を歩むことになった。
眩暈がするほどキャベツの千切りを行う羽目になったので、晶の精神性はどんどんと擦り減っていく。
約十時間、千切りをする毎日。視線を彷徨わせる瞬間も生まれる。
もう疲れた……
部屋に戻り気絶するように眠る。
そんな晶を癒してくれたのが――五姉妹の存在だった。
「ねぇ。今さ、楽器の練習しているんよ」
にこにことしながら希美がベースを部屋に持ってくる。休日のある日のこと。
「そうなのか」
晶は彼女の趣味に興味を持つ。
「どういう曲を練習しているんだ?」
「えっとね、Mとか?」
「あゆの?」
「うん」
「また懐かしい曲だな」
「好きなんだもん」
「でもああいうJポップはベースが単調じゃないのか?」
「どうかな?」
晶は少し笑い、
「また聴かせてくれよな」
「うん」
希美が部屋から去っていく。パタパタとスリッパの音が響いた。
「頑張っているんだな」
休日の日に希美や、他の四姉妹の面々が頻繁に晶と会う。
出掛けたり、演奏を聴かせてくれたりなど、様々なことをして晶を支えてくれる。
「ちょっと、なにしてんのよ!」
「いや、ベースの練習をしてる……」
「そんなこと、深夜二時にしなくてもいいでしょ」
「そうかな」
「そうよ!」
「二人ともうるさいぞ」
梨丘と希美の深夜の大喧嘩に割って入る晶。
「場山さんも俺も休んでいるんだ」
「ごめんなさい……」
「ごめん」
溜息を吐く、晶。
「分かってくれればいいんだ」
すると希美がベースシールドを誤って引っこ抜いてしまい、つんざくような音が屋敷に響いた。
「あんた、本当にいい加減にしなさいよ!」
頼むから……勘弁してくれ。




