表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
経営難な料亭を立て直すため、料亭で修行することに。だがなぜかラブコメ展開に!?  作者: 彼方夢
京都料亭は波乱万丈⁉

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/14

学んだ経験。

 だがしかし――

 副料理長は口に入れた瞬間に険しい表情になる。


「出汁が多いせいで全体的に緩い。そこらへんは火加減で調節しないといけないのに何しているんだ」

「……すみません」

「いいか、次は失敗するなよ。材料だってタダじゃねぇんだ」

「――はい」


 副料理長から厳しい言葉が投げられる。鼓動が早まり、冷や汗をかく。きっといま、晶の表情は強張っていることだろう。

 考えろ。考えろ。考えろ。

 きっとこれは、副料理長からの提案なのだ。ひとつの料理にたいして徹底機に考えろ、と。


 卵に手を伸ばし、割ってボウルに入れた黄身の、笊でこす回数を増やす。三回ほどそれをすれば、出汁を多めに入れること――なめらかにさせる役割の負担の大部分を担ってくれるはずだ。別のボウルに滝のように流しいれた黄身。そこでは笊の格子により泡立っている。なめらかになっている証拠である。

 次に調味料を入れる工程だが、出汁を少なくしたぶんを補うために、みりんを加え、甘さを出す。そうすることで口当たりが良い出汁巻きが出来上がる。


 とことん――いや待てよ。そもそも、あの人が言った「千切りの時の感覚が生きるからな」とは、なにを指していたのだろうか。

 考えるも、理由は見つからない。

 どうすればいいのか。なにが正解なのか。理由はぜったいにあるはずではないのか。思考を繰り返すも、その答えは――見つからない。なにかあるはずなのに。


 手がとまった、その瞬間に視界のはしで大塚をとらえる。

「――場を活かす事が、廻り廻って料理を活かす事になる」


 大塚の言葉を思い出した。

 もしかして……

 晶は厨房にある湿度計を見る。

「さっき緩かったのは湿度が多かったからじゃあ」

 おかしいと思った。実家の定食屋ではあの分量できちんと作れていたのに。

 そうか。分かったぞ。関東と関西では湿度が大きく異なる。その場所やコンデションに合わせて作ることが大事で、それが頭を使いということでは。


 湿度が先ほどよりも少しメモリが下がっている。湿度が減ったというわけか。

 晶は窓に視線を移す。朝焼けから徐々に陽光が射し込みつつある。太陽が昇ったということは、それほど空気中の水分が蒸発したというわけだ。

 ということで、みりんの水分量をほんの2・5ミリリットルほど多めにいれた。

 すべて根底から考えを変えろ。晶はそう強く思う。

 そして焼き上がり、副料理長に食べてもらうと、


「よし。合格だ。よく気付いたな」

「はい。ありがとうございます!」

 嬉しくて、すごく嬉しくて。晶は表情がゆるむ。

「次からは率先して料理場に立て。菊の花の仕込みは続けつつ、店での調理に入れ」

「分かりました」

 認められた。そう思うと晶は少し涙ぐんだ。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ