表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
経営難な料亭を立て直すため、料亭で修行することに。だがなぜかラブコメ展開に!?  作者: 彼方夢
京都料亭は波乱万丈⁉

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/15

厳しい現場

「ほら、さっさ動け!」


 料理長である公彦くにひこの、激昂が厨房に飛ぶ。

 そんななか、晶は料理をつくるなかで苦戦していた。

 その品物とは――揚げ物である。

 彼が得意としていた料理が、方法が、通用しなくなっている。


 油の温度。肉の火加減。そして調理時間。豚ひとつとっても、品種などで事細かに調節や試作、工夫をしなくてはならなくて、困惑する。

 とてもじゃないが、慣れない。


 次に揚げるのは……デンマーク産か。くそ。厳しぃな、と晶は思う。

 デンマーク産は霜降りが均一に入っているけれど、脂肪が多いため、その辺の加減が難しい。

 包丁で切った瞬間に理解できる感覚を頼りに、衣の調節(水分量など)をし、付けたら揚げていく。パチパチと泡立つ音が波打つ。取り上げる時間を少しでも間違えるとすべてが失敗してしまう。気を付けるため音へ傾聴する。


 ――今だ。


 さっと取り上げて切っていく。中の火の入り具合は……上々だ。

 皿に盛り付け、最終確認を料理長にしてもらう。


「不味い。ええ加減にせぇや」

 頭をはたかれる。彼は驚きながらも謝った。

「すみません」

「つぎ失敗したらただじゃあ済まさねぇぞ」

「……はい」


 成功していなかったのか。どうして。

 プレッシャーが彼の肩にもたれかかる。

 冷や汗をかいてしまう。

 辛い。辛い。辛い。

 ここの料亭で使われているものは、最高級の肉だ。失敗は許されない。

 実家でのほほんと調理していたころとは、大きく異なるのだ。

 深呼吸する。視野を広く持て。

 なにか突破口があるはずだ。

 考えろ。考えるしか能がないのだから。


「難しい……」


 そんな言葉をつぶやいたため、先輩から睨まれる。

 辞めてしまいたい。すべてを放り投げてしまいたい。そんなことを思ってしまい、意識を変えるために頭を振る。

 けれども、なにが問題なのか分からない。

 駄目だ。とことん沼に落ちてしまう。

 彼は、そんな思考の迷宮に迷い込んだ。

 そして、積もりに積もった疲れがここで、雪崩が襲い掛かったように覆いかぶさってくる。


 彼は倒れた。



 目を覚ましたとき、そこは屋敷の自室。

 横を見ると智菜がそこにいた。

 晶に気付くと「大丈夫?」と焦ったように訊ねてくる。

「あぁ……」

「いま、お医者さん呼んでいるから」

「ありがとう」

「ごめんね。本当に」

「ん? どうした……」

 彼女は首を横に振る。

「ううん。なんでもない。休んでいてね」

 智菜は自室から去った。

 晶は顔を手で覆い、涙を流す。


 前回の涙とは違う。雪辱を果たすことを誓う、奮起の涙であった。



 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ