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経営難な料亭を立て直すため、料亭で修行することに。だがなぜかラブコメ展開に!?  作者: 彼方夢
挫折

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12/14

恐怖心

 診断の結果、過労であった。

 二週間の休暇を取れと医者から言われ、悔しいが……素直に応じることになり、その間、暇を持て余していた晶だったが、五姉妹のお見舞いで気持ちがほころびる。

 あるときにはなぜか――

「はいどーもー」

「……」

 希美と梨丘が手を叩きながら自室に入ってくる。

 つい、呆然としてしまう、晶。


「まいどおおきに。セブンティーンシスターズでーす」

「……」

「――え、えっと……ちょっと、晶さんの反応悪くない?」

「知らないって! そんなの。ほら、突っ走るわよ」

 そんな彼女らのやり取りを黙って見守る。


「最近、腰の調子が悪くてねぇ」

「ほうほう。それで?」

「七十歳になれば年齢には抗えないねぇ」

「セブンティンかよ。英語の表現間違ってるわ」

「目指せ、百歳ってね」

「金さん銀さん目指す気か」

 希美のボケに、梨丘がツッコむ。

「……」

 晶は黙り続ける。


 そうすると、梨丘の目の色が変わった。

「あんたは冷笑系か!」

「いや……つい。物珍しくてさ」

「この冷笑男め。深夜に化けて出やろうか」

「いや、やめてくれ……ふっ」

「本当に冷笑し始めたよ」

「まじでやばっ」

「頼む。そこら辺でやめてくれないか。歳の近い女子高生からの悪口は普通に効く」


 すると、ふたりは少しはにかみ、


「どう? 良い余興になったでしょ?」

「ああ。ありがとう」

 彼女たちはもう満足したのか、恥ずかしかったーとつぶやきながら去っていく。

「あの子たちもあの子たちなりに、俺のことを考えてくれているんだな」


 そう晶は思うと、胸がじんわりと温かくなる。

 こうした日々を積み重ねながら二週間後。

 朝三時半にスマホのアラーム音で目が覚める。さっと起き上がり、洗面所へと向かう。そこで顔を何度も洗い、弱った根性を叩き直す。目覚めろ。目覚めろ。


 鏡の前の自身の姿を見つめながら、顔を覗かす恐怖心と戦う。


「俺ならやれる。やってみせる」


 努力ならいままでもさんざんやってきたじゃないか。それを、その経験を忘れてはいけない。

 徹底的に考えろ。考えて得たことはきっと無駄じゃない。

 枯渇されぬく現状に歯止めを効かせるため、思索を凝らさなければならない。

 エプロンに着替え、よしとつぶやき気合を入れる。

 屋敷から出て、料亭へと向かう道中にも料理長への懐疑心が生まれてしまう。

 あいつは信じても大丈夫なのか。信じてもいいのか。


「あいつがいなくなって、済々したよ」

「こんなコロナで大変な状況で、なにが修行だって話ですよ。周りの状況を見ろよな」


 そんな晶への陰口が厨房の方から聞こえてくる。

 汗をかいてしまう。怖い。怖すぎる。

 その場でしゃがみこんでしまった。

「母さん……父さん」

 涙が流れそうになるのをぐっとこらえる。涙は、もう流したくない。

 立ち上がり、厨房へと行く。



 


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