12.雨垂れ石を穿つ
流れで、アレクと一緒に実技試験の会場まで行くことになった。
実技試験は、筆記試験とは違う試験官だった。きっと、この男の人も、宮廷魔法師なのだろう。
「それでは、試験の説明を開始します。」
「奥に的が見えるでしょう。どんな方法でもいいです。あの的をできるだけ早く魔法で壊してください。」
聞いただけではとっても簡単そうな試験。ただし、宮廷魔法師でないアリアたちには攻撃魔法の使用は禁止されている。攻撃魔法に該当するのは、人に傷をつけたり、直接人体に悪影響を及ぼすもの。例えば、紙を燃やす程度の炎を扱うことは可能とされているが、それを人に向けて放ったり、家を燃やすことのできるくらいまで炎を大きくすることは禁じられている。
ならば、どうやって的を壊すか。ぱっと見、ただの石に黒い円を描いただけに見える。
「初めのものから順番に」
試験官の合図で、一番前に並んでいた金髪の男の人が手を前に出す。
この合図は、魔法を使う上で基本とされているが、魔法が手から発生するのだろうか。アリアが今まで読んだどの歴史書にも、魔法書にも書いていなかった。アリアが生きているうちに解明したい謎の一つだ。
金髪の男の人は、長い間炎で燃やした。石が灰になるまで待つのだろう。流石に時間がかかりすぎる。
次の人は、空気を圧縮して割ろうとし、その次の人は空気中の水分から水の玉を作りだし、勢いよくぶつけていた。それは攻撃魔法に該当しないのだろうか。アリアは確かに日常的に使用されている魔法の全てを覚えたが、石を壊そうとしたことなんてないため、この手の魔法は使ったことがない。
次に、アレクの番が来た。
彼は一体どうやって石を壊すのだろうか。
アレクが石に向かって手を伸ばし、目を瞑る。10秒ほど沈黙が続いて、次の瞬間、石が完全に無くなった。
受験者たちがどよめく。アリアも例にもれず、何が起きたのか分からなかった。
よく見てみると、何も無くなったのではなく、石があった場所に砂が散っている。石をあの一瞬で粉砕したのか?どうやって?疑問は募るばかりだが、試験官にアリアの名前を呼ばれてしまった。
石を攻撃魔法以外で壊せばいい。ならば……
浮遊魔法を石に掛けて、空に飛ばす。できるだけ真上に、王宮の一番上の場所より高いくらい。高さは数十メートル。そして、土をいじって地面の形を変える。針のような一本の柱を立てた。できるだけ硬く。それこそ、対象の石より硬いくらいに。そして、真上からそこを目掛けて、浮遊魔法を解除する。
衝撃を一点に集中させる。心配なのは、針が壊れて石がそのままなこと。今まで観察していると、そこまで硬い石ではなさそうだし、割れてくれると思う。割れて欲しい。お願い。
ズドンっ!
と音がして、石が尖った柱の先端に命中し、ヒビが入った。割れ切ってはいない。絶望しかけた瞬間、石が地面に落ちるのと同時に、さっき入ったヒビに沿って割れた。
「やったあぁ!」
思わず、歓喜の声が漏れる。
後ろにまだ人がいたし、すぐにどいたけど、その嬉しさを誰かと共有したくて、急いでアレクの元に行った。
「アレク!できたっ!」
「見てたぜ!すごかったな〜!」
いえ〜い!とお互いの結果を褒めってハイタッチする。
「アレクはどうやって壊したの?」
「ああ、あれはな、石を分解したんだよ」
「分解?」
「そう。石って突然湧いてできるもんじゃないだろ?砂が堆積したり、泥に圧力がかかったりとかさ?つまり、石になる前の元の形があるわけよ。だから、元の形にもどした!」
「そんなことができるの?」
初めて聞いた魔法だった。知らない魔法だ。アレクの通っていた学校では習うのだろうか。
「できるさ。家を壁とか柱とか、そのまた元の木材とかに分解するのと同じ要領。」
「へ〜!意外、アレクって魔法詳しいんだ」
アレクのことを尊敬すると共に、自分は彼より下だと認識して悔しくもなる。
「まあお前より一年長く生きてるしな。確か一個下だったよな?」
「うん!今五年だよ」
王立学院は大体が一二歳、つまり一三歳になる年に入学し、一九歳になる年に卒業する、六年制だ。アリアは、誕生日が陽の季節一月目の二九日だから、今は一八歳。
「すげー。五年で推薦もらえる方がやべえだろ」
「あはは、それはちょっとわけがあってね……」
ノクティス先輩とのドラゴンの研究で頭がいっぱいだったがそれ以外は、一つ年上の人たちと同期として過ごさなければいけないと思うと、肩身が狭い。
「まあとりあえず!二人とも合格してるといいな!」
「うん!」




