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13.答え合わせと慰労会


 宮廷魔法師の試験を終え、寮でも伯爵邸でもなく、そのまま王宮にある研究室に戻った。アレクと別れる時には変な顔をされたけど、何も追求してこなかった。小さい時も優しかった記憶しかないけど、今でもその優しさは健在らしい。


 「先輩、ただいま戻りました」

 研究室のドアを開けると、窓際のテーブルでお茶をするノクティス先輩と、その反対側に座る王子。もう見慣れた光景だ。驚きさえもしない。

 「王子様。来てらっしゃったのですね」

 「ああ。おかえり、アリア」

 今では、もう言葉を交わすことに緊張もしない。第一王子はフレンドリーで面白くて話しやすい。


 「そろそろ僕のこと名前で呼んでくれてもいいんじゃない?」

 「そんな、恐れ多いですよ」

 「でもさあ、僕君たち以外とあんまり話さないんだけど、君たちと話してても名前呼ばれることないの」

 「ノクティス先輩は……」

 「ノクはお前呼びだよ、どっちが上なんだってね」

 あはは、と愛想笑いをしておく。それに関してはアリアも常日頃から思っていたから。


 「お疲れ様。どうだった?試験は」

 ノクティスノクティス先輩の横の椅子に座ると、カップにミルクを入れたコーヒーを持ってきてくれた。ありがとうございます、とお礼を言い、先輩が再び椅子に座ってから質問に答えた。


 「手応えはあります。筆記の方はもう、本当に結構自信あって。実技が微妙なんですけど」

 「今年の実技なんだったの?」

 「石の的を壊せ、でしたね」

 「へー、アリアはどうやって壊したの?」

 「浮遊魔法で石を上から落としました。叩き割れるかなって」

 「もしかしてアリアって……天才?」

 王子様が顎に手を当てて何やら神妙な面持ちでそう言ってくれる。多分ネタだろうな、うん、ネタだ。王子様の気の利いたボケに違いない。

 「去年には分かり切ってたろ。」

 いいえ、先輩。私は天才でもなんでもないです。ただの好奇心の化け物なだけです。というかそんなことより、

 「先輩はっ、どうしますか?」

 「石を壊せって言われたら?」

 「はい」

 先輩ならどうやってあの試験をクリアするのか気になった。


 「あー、解除の呪文とか?」


 「解除?」

 「うん。なんか大体そういう石とか、試験に使われる対象って魔法が掛けられてるんだよ。なんか印とか入ってなかった?」

 「入ってました!」

 そう言われれば、あの黒い円は魔法の印だったのか。てっきり、的をわかりやすくするためだけだと思っていた。


 「ああいうのって、試験官の目だけで判断しないように、誤差でもあればわかるように魔法が施されてる。あとは魔法を掛けやすくしたりね。宮廷魔法師以外は攻撃魔法の使用が禁止されてるから、どんな些細な魔法でもかかるようになってるんだよ。それに、石を壊すんじゃなくて、“的”を壊すなら、多分的をなくせばいいだけなんじゃない?まあ細部まではわかんないけど」


 先輩の見解はすごい。全くそんなこと知らなかった。でも……


 「解除の呪文って、元々何の魔法が掛けられてるかわからないと無理なんじゃ?」

 「うん。けどまあ見たらわかるんじゃない?」

 「え?」

 アリアには先輩が何を言っているのかさっぱり理解できない。


 「アリア、こいつを理解しようとしない方がいい。アリアには悪いが、こいつは本当の意味で天才なんだ。レイブンシェイドの最高傑作とまで言われたヤツだからな。」


 レイブンシェイドの最高傑作?


 「そうなんですか?」

 「なんで言っちゃうかなぁ。アリアだけには知られたくなかったのに」

 「アリアも外に出たら必ず聞くさ。直属の上司の話題なんて、宮廷魔法師ならよくあるだろ?」


 確かに、アリアはずっと研究室に篭りきりで、学院に入学以降パーティや夜会にも出ていない。社交界での噂も聞いていない。

 レイブンシェイドと聞いた時から、公爵のすごいお家の出身の方だとは思っていたけど、アレクにも言われたように、ノクティス先輩はアリアが知る以上にもっとすごい人なのかもしれない。


「アリア、俺は別にすごくない。ただちょっと人より物覚えが良かったり、集中力があるだけ」



 当時アリアも驚いたが、この人は本を見ただけで魔法を三重で宝石に加工できてしまったり、六つもの言語を読み書きできたり、アリアが宮廷魔法師試験を受けるまでの期間でいろんなことを覚えたり、何でもできてしまう人なのだ。


 「先輩流石です。天才です。」

 勝てる気がしません。

 それは言わないでおいた。先輩が気にしてしまったら嫌だから。


 「うわ、でた。アリアの褒め」


 ことあるごとに先輩を褒めて恥ずかしがる様子を見てたんだっけ。試験勉強に没頭するようになってからはそんな機会もなく、どこか久しぶりだ。


 「なになに?なんかあるの?」

 またしてもなにも知らない王子。そうですよね。先輩もこんなこと自分から言いませんよね。ええ。久しぶりに先輩の恥ずかしがる姿を見ましょうか。


 「先輩今日のお弁当とっても美味しかったです!見た目も綺麗で、食欲が増したし、私が嫌いな野菜の苦味もなくて、それにソースの味が抜群でした!知り合いの男の子に一枚取られてしまったんですけど……。あ、その子に宮廷魔法師を目指した理由を聞いたら、先輩だったんです!ノクティス先輩と一緒に仕事してみたくて宮廷魔法師になろうと思ったらしくて!私、後輩として、尊敬する先輩がそんなふうに言われているのすっごく嬉しくて!あと、さっきの石の壊し方もびっくりしました!今回の試験でも誰もしていませんでした!流石先輩です。先輩にしかそんな方法思いつかないと思います。なんで先輩ってそんなに色々できるんですか?天才すぎて本当に憧れます。一生先輩についていきたいです。」


 早口で捲し立てるように喋って、先輩の反応を窺うと、いつもと違った。


 「先輩?」


 「いや……あの、嬉しいんだけど…………。」

 「はい。私も先輩に言いたかったこと吐き出せて嬉しいです。もっと前みたく恥ずかしがってくれても良かったんですよ?」


 「……知り合いの男って、誰?」




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