第四十九話(後編) : 白あんを求めて
スイーツ祭りに向けて。
練り切りを作ることになったエリック。
しかし。
必要な材料が足りません。
そこで始まる。
グルメアでの食材探し。
果たして。
エリックは必要な材料を見つけられるのでしょうか。
今回も楽しんでいただければ嬉しいです。
ボルグは。
みんなと別れ。
一人、職人街の方へ歩いていた。
朝市には。
食べ物の屋台が並んでいる。
焼いた肉。
パン。
色とりどりの果物。
甘い菓子。
「……」
ボルグは。
それらを横目に見ながら歩いていた。
やがて。
食べ物の屋台が途切れる。
そこには。
この街では珍しい工芸品が。
いくつか並べられていた。
「ほう……」
ボルグが。
足を止める。
小さな飾り。
金具。
髪に飾るためのかんざし。
そして。
キーホルダーのような。
小さな吊り飾り。
「なかなか細かい仕事をしとるのう」
一つ手に取る。
裏返して。
細部を見る。
「この金具……」
指先で。
軽く触れる。
「よくできとる」
別の品を手に取る。
「ここの職人も、手先が器用じゃのう」
ボルグは。
しばらく物色する。
そして。
ふと我に返る。
「……いかんいかん」
手にした品を戻す。
「エリックに頼まれたんじゃった」
周囲を見回す。
「まぁ……」
「こんな朝早くから、工房はやっとらんじゃろう」
少しだけ。
考える。
「……ちょっとぐらいなら」
再び。
工芸品を眺め始めた。
その時。
ボルグの目に。
一軒の店が入った。
木製品を扱う店だった。
「……お?」
店先には。
小さな木箱や。
食器。
木製の飾りが並んでいる。
ボルグは。
何気なく中を覗く。
「すまんのう」
「はい?」
店主が。
顔を上げる。
「これを作れる職人はおるか?」
ボルグは。
エリックから預かった紙を広げた。
そこには。
格子状の箱。
そして。
小さな木製の黒文字が描かれている。
店主は。
紙を受け取る。
「…………」
しばらく。
黙って見る。
そして。
菓子の絵へ視線を移す。
「これは……」
「ん?」
「この菓子を作る職人が描いたのか?」
「そうじゃ」
ボルグが。
何気なく答える。
店主は。
もう一度。
紙を見る。
「……なるほど」
箱の大きさ。
格子の数。
一つ一つの区切り。
そこへ収まる。
小さな菓子の絵。
「菓子の形まで考えて、箱を設計している……」
店主の目が。
輝き始める。
「かなりの職人だな」
「そうなんか?」
「間違いない」
店主は。
紙を握る。
「よし」
そして。
勢いよく顔を上げる。
「作ってやる!」
「……お?」
ボルグが。
目を丸くした。
店主は。
紙に描かれた練り切りを。
じっと見つめていた。
「……」
そして。
小さく呟きながら。
店の奥へ歩いていく。
「何個いるんだ……」
「十もあれば足りる」
ボルグが答える。
「十だなぁ……」
店主は。
木材を一本。
手に取る。
「口に入るもんだ」
木目を眺める。
「この木より……こっちか」
別の木を手に取る。
「いや、待て」
もう一度。
紙を見る。
「この菓子は……」
描かれた花や。
小さな動物を見つめる。
「多分、柔らかくて繊細な菓子だろう」
「……」
「なら、菓子に木の匂いが移っちゃいかん」
木材を戻す。
「この木だ」
店主は。
一枚の木材を手に取る。
「これなら、菓子の邪魔にはならん」
木目を指で撫でる。
「引き立て役としては、充分だろ」
「……」
ボルグは。
黙って見ていた。
「作れるか?」
「当たり前だ」
店主は。
すでに作業台へ向かっていた。
「こんな面白い仕事、断るわけにはいかん」
――カン。
――カン。
木を削る音が。
店の中に響く。
しばらくして。
「……できた」
店主が。
一つの箱を持ってくる。
格子状に仕切られた。
小さな木箱。
「十個分だ」
ボルグが。
手に取る。
「……ほう」
店主は。
少し迷ったように。
箱の蓋を見る。
「なぁ、お客さん」
「ん?」
「この蓋に……」
店主が。
店の奥にある紋を指差す。
「うちの店の紋を、焼き入れしてもいいか?」
ボルグは。
箱を見る。
「頼む」
「よし!」
店主が。
嬉しそうに笑った。
一方。
エリシアたちは。
朝市を歩き回っていた。
「これは……白いですね!」
「芋ですね、エリシア様」
「はい!」
ミーナが。
白い芋を持ち上げる。
「こちらには豆があります!」
ルチアが。
袋を覗き込む。
「白いです!」
「これも買いましょう!」
三人は。
次の店へ向かう。
「あっ!」
エリシアが。
突然、声を上げる。
「見てください!」
店先に並んだ野菜を指差す。
「白いかぼちゃがありますよ!」
「本当ですね!」
「白いです!」
三人は。
また足を止めた。
「突然変異でしょうか?」
「でも、エリックは白くて甘そうなものを買ってきてと言ってましたね」
「買いますか?」
「はい、買いましょう!」
三人は。
白いかぼちゃを買い物袋へ入れる。
「結構あるものですね」
「そうですね!」
「豆が三種類」
「お芋が二種類」
「それから、とうもろこしに……かぼちゃ」
エリシアが。
買い物袋を見る。
「これだけあれば、あんになりそうな物があるかもしれませんね」
「きっとボスも喜びます」
「喜ぶね」
三人は。
買い物袋を抱えながら。
次の目的地へ歩き出す。
チーズケーキの店へ。
一方。
エリックとレイナは。
チーズケーキ屋の前に立っていた。
「ここか」
「ああ」
二人は。
店の中へ入っていく。
「おお」
店主が。
二人に気づく。
「エリック君に、レイナさんか」
「うん」
エリックが。
店主の腕を見る。
「腕、大丈夫?」
「これくらいならな」
店主が。
怪我をした腕を見ながら笑う。
「山羊を庇っただけだ。大したことじゃない」
「……そう」
エリックは。
店の中を見回す。
「それで、練り切りに使えそうな物を探したい」
「練り切り?」
店主が。
首を傾げる。
「ああ」
「それなら、店にある材料も使えるかもしれんな」
「見せて」
「分かった」
店主が。
店の奥を指差す。
その時。
レイナが。
ふと奥を見る。
「……ん?」
そこでは。
ガレスとロイドが。
黙々と店内を掃除していた。
「おい」
二人を見る。
「何をしてる?」
「掃除です」
ガレスが。
手を止める。
「エリックから頼まれまして」
レイナが。
エリックを見る。
「何を頼まれたかと思えば……」
少し呆れたように。
「掃除か」
「うん」
エリックは。
当たり前のように頷いた。
「店主、腕怪我してるから」
「……なるほどな」
レイナは。
小さく笑った。
「たしか、エリック君とレイナさんだったな」
店主が。
二人を見る。
「今日はよろしく頼む」
「ここの店主のナタルだ」
「うん」
エリックが。
小さく頷く。
「よろしくお願いします」
レイナも。
頭を下げた。
エリックは。
店の中を見回した。
「……竹べらは?」
「竹べら?」
ナタルが。
首を傾げる。
「ないな」
「……そうか」
エリックは。
少し考える。
そして。
作業台に置かれていた道具を手に取った。
「これは?」
「ケーキ用のヘラだ」
「使えそうだな」
エリックは。
ヘラを握る。
「……うん」
何度か。
手を動かしてみる。
「これなら使える」
「そうか」
ナタルが。
頷く。
「ボールは?」
エリックが。
棚を見る。
「どのくらいの大きさがいい?」
ナタルが。
いくつかのボールを取り出す。
「この辺りならあるぞ」
エリックは。
大きさを見比べる。
「……これでいい」
「分かった」
ナタルが。
ボールを作業台へ置く。
エリックは。
もう一度、店の中を見回した。
「他に使えそうな物は……」
「裏ごし器は?」
「あるぞ」
ナタルが。
棚から取り出す。
「これでいい」
エリックは。
頷いた。
「あと……」
少し考える。
「三角棒も欲しいな」
「三角棒?」
ナタルが。
首を傾げる。
「流石に、そんな物はないな」
「……そうか」
エリックは。
パレットナイフを手に取った。
「これ、使っていいか?」
「いいが……」
ナタルが。
パレットナイフを見る。
「何に使うんだ?」
エリックは。
少し考えてから。
「絵を描く」
「…………」
ナタルが。
固まった。
その時。
「エリック!」
店の入口から。
エリシアの声が響いた。
「見つけました!」
エリシアが。
ミーナ、ルチアとともに。
両手いっぱいの買い物袋を抱えて入ってくる。
「白い豆が三種類!」
「お芋が二種類あります!」
「それから、とうもろこしと……」
ミーナが。
袋を覗き込む。
「白いかぼちゃです!」
「……」
エリックは。
買い物袋を見る。
「結構あるな」
「はい!」
エリシアが。
嬉しそうに頷く。
「これだけあれば、何か使えるものがあるかもしれません!」
エリックは。
袋の中身を一つずつ確認する。
「……よし」
「まず、試してみよう」
今回は。
スイーツ祭りに向けた準備回でした。
ボルグは職人街へ。
エリシアたちは朝市へ。
そして。
エリックは練り切り作りに必要な材料を探します。
果たして。
グルメアの食材で、練り切りは作れるのでしょうか。
次回も楽しんでいただければ嬉しいです。
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