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第四十六話(後編):改革派になった理由

ガルフィと出会ったエリシア。


そこで語られる。


ガルフィが見た、過去の魔王現象。


そして。


なぜ彼が改革派になったのか。


今回も楽しんでいただければ嬉しいです。

エリシアは。


ふと。


テーブルの上に置いてあった。


エリックからもらったなぞなぞの紙を見る。


「……。」


少しだけ。


口元が緩む。


そして。


その紙をそっと手に取る。


「これも持っていきましょう」


懐へ。


大切そうにしまう。


「……さて」


エリシアは。


部屋の扉へ向かう。


そして。


ゆっくりと。


歩き始めた。


エリシアは。


廊下を。


ゆっくりと歩いていた。


窓から差し込む光。


静かな廊下。


「……。」


時折。


懐に手を入れる。


そこには。


エリックからもらった。


なぞなぞの紙。


「……。」


エリシアは。


少しだけ笑う。


「帰ってきたら、答えを教えてあげましょう」


そんなことを呟きながら。


また。


歩き始める。


角を曲がる。


すると。


今まで来たことのない廊下が続いていた。


「……こちらは、まだ見ていませんね」


エリシアは。


興味深そうに辺りを見渡す。


そして。


そのまま。


廊下を進んでいく。


――その時。


「……?」


エリシアが。


足を止めた。


少し先。


廊下の奥から。


人の声が聞こえた。


「……。」


エリシアは。


耳を澄ます。


「……行きましょう」


声のする方へ。


一歩。


また一歩。


静かに近づいていく。


そして。


廊下の角から。


そっと顔を出した。


――そこに。


二人の人影があった。


一人は。


梟の仮面。


もう一人は。


鴉の仮面。


「……。」


エリシアは。


思わず息を止めた。


王族用の別館。


その中に。


仮面をつけた二人組。


「……何を、しているのでしょう?」


二人は。


エリシアには気づいていない。


そして。


何事もなかったかのように。


廊下の奥へ歩いていった。


エリシアは。


二人の姿を。


物陰から見つめていた。


「……。」


梟の仮面。


そして。


鴉の仮面。


どう見ても。


普通ではない。


二人は。


周囲を気にする様子もなく。


廊下の奥へ進んでいく。


「……。」


エリシアは。


少し迷った。


護衛を呼ぶべきか。


それとも。


このまま戻るべきか。


けれど。


二人が向かった先が。


気になった。


エリシアは。


そっと。


二人の後を追った。


足音を立てないように。


ゆっくりと。


そして。


廊下の突き当たり。


二人が。


一つの扉の前で立ち止まった。


梟が。


周囲を確認する。


鴉が。


扉を開ける。


ギィ……。


二人は。


中へ入っていく。


そして。


扉が閉じられた。


「……。」


エリシアは。


少し離れた場所から。


その扉を見つめる。


「……何の部屋でしょう?」


一歩。


近づく。


さらに。


一歩。


扉の前まで来た。


「……。」


耳を澄ます。


中から。


かすかな声が聞こえた。


「――だから、何度言っても無駄じゃ」


エリシアの目が。


わずかに見開かれる。


「……この声。」


聞き覚えがある。


けれど。


誰の声なのか。


まだ。


はっきりとは分からなかった。


エリシアは。


そっと。


扉へ耳を近づけた。


「――だから、何度言っても無駄じゃ」


やはり。


聞き覚えがある。


「……。」


エリシアは。


少しだけ考える。


そして。


小さく呟いた。


「……ガルフィさん?」


中から。


声が止まった。


「……。」


エリシアも。


固まる。


しばらくして。


扉の向こうから。


「……誰じゃ?」


やはり。


間違いない。


エリシアは。


扉の前で。


小さく息を吐いた。


「失礼します」


「待て!」


ガルフィの声が飛んでくる。


「その声……誰じゃ?」


「エリシアです」


「……エリシア?」


ガルフィが。


しばらく黙る。


そして。


「……まさか」


「はい」


「第三王女の……?」


「そうです」

「……。」


ガルフィが。


しばらく黙る。


そして。


声を落とした。


「エリシア殿」


「はい?」


「わしのことは構わん」


「……え?」


「早く逃げなされ」


「どうしてですか?」


「説明している暇はない」


ガルフィの声が。


初めて。


焦りを帯びる。


「早く――」


「……。」


エリシアは。


扉を見つめた。


けれど。


戻るつもりはなかった。


「……ごめんなさい」


髪に手を伸ばす。


髪飾りを一つ。


そっと外す。


細い金具。


それを。


鍵穴へ差し込んだ。


カチャ。


「……。」


動かない。


もう一度。


角度を変える。


カチャ。


「……やはり駄目です」


エリシアは。


周囲を見渡す。


誰もいない。


「早くしないといけませんね……」


もう一度。


髪飾りを。


鍵穴へ差し込む。


カチ。


「……!」


今度は。


何かに触れた。


エリシアの指が。


止まる。


ゆっくりと。


金具を動かす。


カチッ。


――カチャ……。


鍵が。


回った。


「……!」


エリシアの目が。


わずかに見開かれる。


「開きました……」


そっと。


扉へ手を伸ばす。


――その瞬間。


「……?」


背後に。


気配。


振り返ろうとした。


けれど。


遅かった。


ドンッ!!


「――っ!」


首筋に。


強い衝撃。


エリシアの身体から。


力が抜ける。


「……。」


そのまま。


ゆっくりと。


床へ倒れていった。


「……エリシア殿!」


ガルフィが。


エリシアの顔を覗き込む。


「気を確かになされ!」


「……。」


エリシアは。


ゆっくりと。


目を開けた。


「……ガルフィさん?」


「そうじゃ!」


「……私、どれくらい気を失っていましたか?」


「三十分程度じゃが」


「……。」


エリシアの表情が。


変わる。


「そんなに……」


「それが、何か?」


「……まずいです」


「何がじゃ?」


エリシアは。


答えない。


そして。


突然。


立ち上がった。


「お、おい!」


エリシアは。


ガルフィへ向かって。


まっすぐ指を差す。


「ガルフィさん!」


「な、なんじゃ?」


「あなたに聞きたいことがあります!」


ガルフィは。


ゆっくりと。


椅子へ腰を下ろした。


そして。


足を組む。


「……。」


チャラッ。


エリシアの手元で。


紙が揺れる。


ガルフィは。


その紙へ目を向けた。


表には。


『なぞなぞ』


そう書かれている。


「……。」


ガルフィの口元が。


にっこりと緩む。


「エリシア殿は」


一拍。


「とても愉快な方ですね」


「……?」


「暇つぶしに」


ガルフィは。


組んだ足を揺らしながら。


「お付き合いしましょう」


「本当ですか!」


「えーと……」


ガルフィが。


少し考える。


「確か……」


エリシアを見る。


「保守派と改革派のお話でしたね」


「はい!」


エリシアが。


元気よく頷く。


「ありますよ」


ガルフィの目が。


わずかに細くなる。


「非常に……深い関係がね」


一拍。


「昔は――」


ガルフィは。


静かに続けた。


「私も保守派だったんですよ」


「……!」


エリシアの目が。


わずかに見開かれる。


魔王現象を……一度、経験しています」


ガルフィの表情から。


笑みが消える。


「目の前で」


一拍。


「人が……バタバタと倒れていった」


「……。」


エリシアの表情が。


強張る。


「何が起きているのかも分からない」


「ただ……」


ガルフィは。


ゆっくりと。


視線を落とした。


「昨日まで普通に話していた者が」


「次々と倒れていくんです」


「……。」


「それを目の前で見れば」


ガルフィは。


小さく息を吐く。


「変えようなどとは……思えなくなりますよ」


「ただ」


「同じことを起こさないために」


一拍。


「何も変えないほうがいいと」


「そう思っていたんです」


「あなたも、分かるでしょう」


ガルフィは。


エリシアを見る。


「独自に魔王現象学を勉強している、エリシア殿なら」


「……。」


エリシアの目が。


わずかに細くなる。


「もし……」


ガルフィが。


一度、言葉を止める。


「もし魔王現象が」


静かな声。


「いつ引き起こされるのか分かれば」


「……。」


「いや」


ガルフィが。


小さく笑う。


「コントロールできるとしたら?」


「……!」


エリシアの目が。


大きく見開かれる。


「そう思ったことは……ありませんか?」


「……。」


エリシアは。


答えなかった。


「数十年前――」


ガルフィが。


静かに口を開く。


「前の王に、私は呼び出された」


「……。」


エリシアは。


黙って聞いている。


「そして」


ガルフィは。


ゆっくりと。


エリシアを見る。


「禁書庫にある魔法書を見せられた」


「魔法書……?」


「ええ」


ガルフィの声が。


少しだけ低くなる。


「そこには――」


一拍。


「魔王現象をコントロールできる」


「そのための設計図が……記されていた」


「まぁ……」


ガルフィが。


少しだけ笑う。


「この当時の私には」


一拍。


「興味がある話には思えなかった」


「なぜです?」


エリシアが。


首を傾げる。


「エリシア殿は」


ガルフィが。


逆に問い返す。


「魔法は、どうやって生み出され、放たれるかご存じでしょう」


「詠唱を唱え」


エリシアが。


答える。


「杖に取り付けられた魔法石を通して、放ちます」


「そうです」


ガルフィが。


頷く。


「それが何か、関係あるのですか?」


「大いにあります」


ガルフィは。


静かに続ける。


「あの時に見た設計図には」


一拍。


「こう書かれていたんですよ」


「魔王現象をコントロールするには――」


「魔法石を通してはならない」


「……。」


エリシアが。


黙る。


「つまり」


ガルフィが。


苦笑する。


「理論値が低い。低すぎる」


「……。」


「いや」


ガルフィは。


首を横に振る。


「当時の私には」


「あり得ない、お伽話にしか見えなかったんですよ」


「なるほど」


エリシアが。


小さく頷く。


「ありがとうございます」


「……?」


「少し、スッキリしました」


「スッキリした?」


「はい」


エリシアは。


そう答えると。


チラッ。


胸元の紙を見る。


その様子を。


ガルフィは。


見逃さなかった。


「……なるほどのう」


口元が。


わずかに緩む。


そして。


わざと。


少し難しい問いを投げかける。


「ならば――」


ガルフィが。


エリシアを見る。


「なぜ、私が改革派になったと思います?」


「……。」


エリシアは。


一瞬だけ考える。


そして。


紙へ目を落とした。


「改革派とは」


ゆっくりと。


顔を上げる。


「つまり、魔王現象を好きな時に呼び起こし」


一拍。


「そして、食い止めるための最善の日を選ぶということですよね?」


「……そうだ」


ガルフィが。


答える。


エリシアは。


じっと。


ガルフィを見る。


「では……」


「貴方は、おそらく見てしまったのでしょう」


「……何を?」


「私の国で」


エリシアの声が。


少しだけ低くなる。


「女神様の像の下で」


一拍。


「構図だの、背景だのと言いながら」


「棒きれ一つ持って」


「転移魔方陣を書いていた――」


「エリックさんの姿を」


「……。」


ガルフィの表情が。


止まった。


「これは……想像ですが」


エリシアは。


続ける。


「たまたま、自分の弟子であるボルグ様が」


「人間の弟子を取った」


「しかも、その弟子はなかなか筋が良いと」


「耳にしたのでしょう」


ガルフィの目が。


わずかに細くなる。


「それで……」


エリシアは。


もう一度。


紙をチラッと見る。


「少し、見に来た」


「噴水広場で」


「ボルグ様と待ち合わせをしていた」


エリシアが。


ガルフィを見る。


「そんなところに――」


一拍。


「エリックさんがいた」


「……。」

ガルフィが改革派になった理由。


そこには。


過去に起きた魔王現象と、古い魔法書が関係していました。


そして。


その話は、エリックへと繋がっていきます。


少しずつ見えてきた魔王現象の謎。


次回も楽しんでいただければ嬉しいです。


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