第四十二話(前編):その杖について
ついに。
ドワーフ王国の王都――グランベルドへ。
巨大な城壁に、巨大な門。
そして。
エリシアたちは、王都の中心へと足を踏み入れます。
そこで待っていたのは。
ガルリィア第一王子、ヴァルド・ガルリィア。
エリックたちを呼び出した理由とは……?
それでは、第42話前編です。
二日後。
一行は。
グランベルドへ続く街道を進んでいた。
馬車の車輪が。
街道を静かに進んでいく。
しばらくすると。
前方に。
何かが見えてきた。
「……。」
エリシアが。
窓から外を見る。
レイナも。
視線を向ける。
そして。
ミーナとルチアも。
顔を上げた。
「……大きい。」
誰かが。
呟いた。
そこにあったのは。
巨大な城壁だった。
平地を横切るように。
どこまでも続いている。
その手前には。
さらに。
巨大な堀。
水面が。
陽の光を反射している。
対岸まで。
かなりの距離がある。
「……これ。」
エリックが。
窓から身を乗り出す。
「堀?」
「そうです。」
エリシアが。
答える。
「グランベルドを守る外堀ですね。」
街道が。
堀へ向かって伸びていく。
その先には。
巨大な跳ね橋。
橋の両側には。
分厚い石造りの門柱。
そして。
その奥。
巨大な門が。
こちらを見下ろしていた。
「……。」
エリックが。
黙って見上げる。
門の高さだけでも。
普通の建物より高い。
レイナが。
小さく息を吐く。
「さすが王都だな。」
ボルグが。
窓の外を見る。
「グランベルドじゃ。」
「ドワーフ王国の中心じゃからな。」
馬車が。
ゆっくりと。
跳ね橋へ進む。
ギギギギギ……。
巨大な機構が。
低い音を立てた。
跳ね橋が。
ゆっくりと下りていく。
「……。」
エリックが。
その機構を見ている。
「……すごい。」
ボルグが。
笑う。
「気になるか?」
「うん。」
「なら。」
ボルグが。
少しだけ胸を張る。
「これがドワーフの仕事じゃ。」
橋が。
完全に下りた。
馬車が。
その上を進んでいく。
門へ近づくにつれて。
城壁の大きさが。
さらに分かってくる。
その向こうには。
無数の建物。
煙突。
工房。
塔。
そして。
遠くに見える。
巨大な王城。
エリシアが。
静かに呟いた。
「……グランベルド。」
馬車は。
そのまま。
巨大な門へ向かっていった。
巨大な門の前。
馬車が。
ゆっくりと止まった。
門の脇には。
ドワーフの兵士たちが並んでいる。
その中央から。
一人のドワーフが歩いてきた。
立派な髭。
整えられた服。
胸元には。
王家の紋章。
馬車の前で。
深く頭を下げる。
「ようこそ。」
「グランベルドへ。」
エリシアが。
馬車から降りる。
姿勢を正し。
穏やかな笑顔を浮かべた。
「ありがとうございます。」
ドワーフは。
顔を上げる。
「事前に知らせを受けております。」
「第三王女殿下。」
その言葉に。
兵士たちが。
一斉に姿勢を正した。
「本日は。」
「王家より。」
「皆様をお迎えするよう命を受けております。」
エリシアが。
小さく頷く。
「よろしくお願いします。」
ドワーフが。
再び頭を下げる。
「それでは。」
「ご案内いたします。」
馬車が。
再び動き出す。
巨大な門が。
ゆっくりと開いていく。
ゴゴゴゴゴ……。
その先に。
グランベルドの街が広がっていた。
「……。」
エリックが。
窓から外を見る。
街道の両側には。
大きな石造りの建物。
工房。
商店。
そして。
あちこちから聞こえてくる。
カン。
カン。
カン。
金属を打つ音。
「……。」
エリックが。
じっと見ている。
レイナが。
横から覗く。
「気になるのか?」
「うん。」
馬車は。
大通りを進んでいく。
行き交う人々が。
馬車を見て。
足を止める。
「王国の馬車だ。」
「第三王女様らしいぞ。」
小さなざわめきが。
街に広がっていく。
エリシアは。
その声を聞くと。
背筋を伸ばした。
窓を少し開ける。
そして。
街の人々へ。
穏やかな笑顔を向けた。
小さく。
手を振る。
「……。」
一人のドワーフが。
目を見開く。
「第三王女様だ。」
「手を振ってくださったぞ。」
その声に。
周囲の人々が。
次々と手を振り返す。
エリシアは。
もう一度。
ゆっくりと。
手を振った。
その表情は。
いつもの彼女とは少し違っていた。
王国の第三王女。
その立場に相応しい。
凛とした姿。
それでいて。
人々を安心させるような。
柔らかな笑顔。
馬車が。
大通りを進んでいく。
エリシアは。
しばらく手を振り続けた。
そして。
街並みが少し落ち着いたところで。
窓を閉める。
「……。」
エリシアが。
小さく息を吐いた。
レイナが。
横を見る。
「王女らしかったな。」
「当然です。」
エリシアが。
少しだけ胸を張る。
しかし。
すぐに。
「……少し疲れました。」
レイナが。
吹き出す。
「やっぱりな。」
エリシアも。
小さく笑った。
その向かいでは。
ミーナとルチアが。
顔を見合わせている。
「……格好よかったですね。」
「ですね。」
二人は。
小さく頷いた。
その頃。
エリックは。
窓の外を見ながら。
ぽつり。
「……鍛冶屋。」
レイナが。
振り返る。
「そこか。」
エリックは。
頷いた。
「うん。」
馬車は。
そのまま。
グランベルドの大通りを進んでいく。
やがて。
大通りから。
少し離れた場所へ入った。
そこには。
大きな石造りの建物があった。
門には。
ドワーフ王家の紋章。
案内役のドワーフが。
馬車を止める。
「こちらです。」
「王家別館になります。」
エリシアが。
建物を見上げる。
「……立派ですね。」
「王族の皆様がお越しになった際に。」
「使用される場所でございます。」
扉が。
開かれる。
中へ入る。
広い玄関。
高い天井。
重厚な石造り。
そして。
大きな暖炉。
エリックが。
辺りを見渡す。
「……広い。」
レイナが。
笑う。
「王女用だからな。」
エリシアが。
少し困ったように。
微笑む。
「私も。」
「こんな場所が用意されているとは思いませんでした。」
ミーナとルチアが。
小声で。
「……すごいですね。」
「ですね。」
そして。
二人は。
顔を見合わせる。
「「楽しみですね。」」
王都グランベルド。
一行は。
その中心へ。
足を踏み入れた。
夕食前。
王家別館。
エリシアとエリックが。
部屋で休んでいると。
扉が。
コンコン。
と叩かれた。
「失礼いたします。」
扉が開く。
先ほどの案内役とは違う。
ドワーフの男が立っていた。
「エリシア様。」
「エリック様。」
二人が。
顔を上げる。
「ガルリィア第一王子殿下より。」
「お二人にお話がございます。」
エリシアが。
少し驚く。
「私たち二人に?」
「はい。」
エリックも。
首を傾げる。
「レイナは?」
「……。」
「ボルグは?」
男は。
少しだけ間を置いた。
「お二人だけで。」
エリシアが。
エリックを見る。
エリックも。
エリシアを見る。
「……。」
エリシアが。
小さく頷いた。
「分かりました。」
「では。」
「こちらへ。」
二人が。
部屋を出る。
廊下を進む。
エリックが。
小さな声で。
「なんで僕も?」
エリシアが。
少し考える。
「分かりません。」
「王子殿下からのお話ですから。」
二人は。
そのまま奥へ進んでいく。
やがて。
一つの扉の前で。
足を止めた。
「こちらです。」
扉が開く。
部屋の中央に。
一人のドワーフが立っていた。
エリシアが。
その姿を見る。
男は。
ゆっくりと頭を下げた。
「お初にお目にかかります。」
「ガルリィア王国第一王子。」
「――ヴァルド・ガルリィアと申します。」
エリシアも。
姿勢を正す。
「ガルリィア国王第一王子殿下。」
「王国第三王女、エリシア・ルミナスです。」
「お会いできて光栄です。」
第一王子が。
微笑む。
「こちらこそ。」
そして。
エリックを見る。
「そして。」
「君がエリックか。」
エリックは。
少しだけ首を傾げる。
「うん。」
「エリック。」
「よろしく。」
ヴァルドが。
一瞬だけ目を丸くする。
そして。
小さく笑った。
「……なるほど。」
「聞いていた通りだ。」
エリシアが。
礼をする。
「お呼びいただきありがとうございます。」
ヴァルドは。
二人をしばらく見ていた。
そして。
静かに口を開く。
「おそらく。」
「なぜ二人だけなのか。」
「そう思っているだろう。」
エリシアが。
少し驚く。
「……はい。」
ヴァルドが。
頷く。
「理由は。」
「二人に聞きたいことがあるからだ。」
エリシアを見る。
「第三王女殿下には。」
「王族として。」
そして。
エリックを見る。
「君には。」
「別の理由がある。」
エリックが。
首を傾げる。
「僕?」
「ああ。」
ヴァルドの視線が。
エリックの手元へ移る。
そこには。
一本の杖。
「その杖についてだ。」
グランベルドへ到着しました。
エリシアは王女らしい姿を見せつつ。
エリックは相変わらず、鍛冶屋が気になっているようです。
そして最後に。
ヴァルドが口にした「その杖について」。
エリックの杖に、一体何があるのか。
次回へ続きます。
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