↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

78/80

第39話(後編):国境の盗賊と子供たち

第39話後編です。


ガルリィア王国へ向かう旅の途中。


国境近くの村を通り過ぎ、丘の上で野営することになったエリックたち。


しかし、その夜。


静かな野営地に、思わぬ来訪者が現れます。


そして、エリシアが見つけたのは――。


今回は少し緊張感のある展開です。


それでは、第39話後編をお楽しみください。

ミューレを出発して。


小一時間ほど過ぎた頃。


街道の先に。


それが見えてきた。


「見えましたね。」


エリシアが。


前方を指さす。


「……想像以上に重厚で、凄いですね。」


巨大な石造りの関所。


圧倒的な存在感で。


国境の街道を塞ぐように聳え立っていた。


レイナが。


エリックの隣に並び。


じろりと横顔を見る。


「……おい、エリック。」


「ん?」


「言っておくが、余計なことは言うなよ?」


「何も言わない。」


「本当だろうな……。」


レイナは。


まだ少し疑わしそうな目を向けている。


そうこうしているうちに。


関所の手前へと到着した。


重厚な門の前には。


長蛇の列ができていた。


ドワーフの兵士たちが。


並んでいる八台の馬車を。


一台ずつ丁寧に確認している。


「次。」


順番が巡ってくる。


エリシアが。


身分証を提示する。


兵士は。


手元の書類とエリシアの顔を見比べ。


深く頷いた。


続いて。


全員の武具や魔道具の確認が進む。


その途中。


兵士の視線が。


ボルグで止まった。


「……。」


ドワーフの兵士が。


一瞬、眉を動かして反応する。

だが。


特に追及することなく。


視線を書類に戻した。


「……王都へ向かわれるので?」


簡単な確認。


エリシアが答える。


「はい。」


「よし、通ってよし。」


何の問題もなく。


一行は関所を通過した。


関所を抜けて。

しばらく街道を進む。


やがて。

街道の先に小さな村が見えてきた。


エリシアは。


窓の外を見つめていた。


「……子供たちも働いているのですね。」


ボルグが。


少しだけ村へ目を向ける。


「この辺りでは珍しくない。」


「学校は……?」


「国境から離れた場所ならある。」


一拍。


「じゃが、この辺りでは十分に行き届いておらん。」


「……そうなのですね。」


エリシアは。


もう一度、村を見る。


子供たちは。


大人たちの仕事を手伝っていた。


「……。」


ボルグは。


何も言わず前を向く。


村を抜けて。

さらに街道を進む。


日が傾き始めた頃。


エリックが。

前方の小高い丘を見る。


「あそこ。」


エリシアが。

丘を見上げる。


「あの丘ですか?」


「うん。」


馬車が。

丘を登っていく。


やがて。


丘の上に到着した。


周囲を見渡せば。


街道も。

先ほど通ってきた村も。

遠くまで見える。


エリシアが。

周囲を見渡す。


「……見晴らしがいいですね。」


「うん。」


エリックは。

丘の下を確認する。


「盗賊が来ても分かる。」


「……なるほど。」


ボルグが。

周囲を見渡す。


「確かに、ここなら近づいてくる者を見落とさんのう。」


小高い丘の上。


一行は。


野営の準備を始めていた。


エリックは。


Gペン型の杖を見る。


「……。」


何度か。


軽く振る。


「やっぱり駄目だな。」


エリシアが。


エリックを見る。


「杖の調子が悪いのですか?」


「うん。」


エリシアは。


少し考える。


「では。」


杖を構える。


「私が防壁を張ります。」


「できる?」


「はい。」


エリシアは。


周囲へ魔力を広げていく。


一枚。


二枚。


そして。


三枚。


「……。」


レイナが。


防壁を見渡す。


「三重ですか。」


エリックは。


三重の防壁を見る。


「俺のと同じ。」


「分かりますか?」


「うん。」


エリシアが。


少し嬉しそうに笑う。


「魔鏡の森で。」


「何度も何度も、エリックさんの魔法陣を勉強しましたから。」


「ちゃんとできてる。」


「はい。」


エリシアが。


小さく笑った。


「はい。」


エリックは。


もう一度。


防壁を見る。


「じゃあ。」


「うん。」


「心配ないな。」


エリシアが。


目を丸くする。


「……それだけですか?」


「うん。」


エリックは。


それ以上気にする様子もなく。


野営の準備を始めた。


「……。」


エリシアは。


しばらく防壁を見る。


そして。


小さく笑った。


「……そうですね。」


防壁の内側では。


騎士たちが馬車を整え。


侍女や執事たちが。


食事の準備を始めていた。


三十人の近衛騎士も。


馬を降りることなく。


野営地の周囲へ散っていく。


魔法兵たちも。


それぞれの持ち場についた。


やがて。


火が焚かれた。


大きな鍋から。


温かな料理が運ばれてくる。


「……。」


エリシアは。


焚き火の前に座る。


いつものように。


食事を囲む。


レイナも。


ボルグも。


ミーナとルチアも。


それぞれ食事を取っていた。


エリックは。


黙々と食べている。


「……。」


夜が深くなる。


騎士たちは。


交代で見張りにつく。


侍女や執事たちも。


それぞれの天幕へ戻っていく。


そして。


一人。


また一人と。


眠りについた。


丘の上には。


静かな夜が訪れていた。


しばらくして――。


「……。」


見張りの騎士が。


街道の先へ目を向けた。


暗闇の中。


いくつもの人影が。


丘を登ってくる。


「……何だ?」


一人。


また一人。


その数は。


十数人。


見張りの騎士が。


目を細める。


武器を持っている。


「……盗賊か?」


見張りの騎士が。


すぐに声を上げる。


「起きろ!」


夜の静寂を。


鋭い声が切り裂いた。


天幕から。


騎士たちが飛び起きる。


眠っていた者たちも。


一斉に外へ出てくる。


馬が。


不安そうに嘶く。


魔法兵たちも。


杖を手に取る。


一号車。


エリシアも。


目を覚ました。


「……何が?」


ミーナとルチアが。


すぐにエリシアの前へ出る。


「エリシア様。」


レイナは。


すでに剣を手にしていた。


「エリック!」


「起きてる。」


エリックは。


外へ出る。


丘の下。


暗闇の中から。


十数人の人影が。


こちらへ近づいてくる。


その手には。


剣や斧などの武器が握られていた。


「止まれ!」


レイナが。


声を張り上げる。


盗賊たちは。


止まらない。


丘を。


一歩ずつ登ってくる。


「……。」


レイナが。


剣を構える。


その時。


一人のドワーフが。


前へ出た。


手には。


一本の剣。


迷いはない。


必死だった。


そして。


魔法防壁へ向かって。


剣を振り下ろす。


ガキィン!!


三重に張られた防壁。


その一枚目が。


大きく揺れた。


「……!」


エリシアが。


息を呑む。


もう一度。


ドワーフが。


剣を振り下ろす。


ガキィン!!


防壁に。


亀裂のような光が走った。


「……切れる。」


エリックが。


呟く。


ドワーフは。


止まらない。


もう一度。


剣を振り上げる。


その顔には。


余裕などなかった。


ただ。


必死だった。


ガキィン!!


一枚目の魔法防壁が。


大きく揺れた。


「……!」


エリシアが。


思わず息を呑む。


だが。


レイナは。


冷静だった。


「落ち着け!」


全員へ向けて。


声を張る。


「まだ一枚しか破られていない!」


騎士たちが。


一斉に動く。


「エリシア様の周囲を固めろ!」


「Sランクの二人は最後尾!」


「馬車と荷物を守れ!」


「魔法兵は周囲を警戒!」


それぞれが。


持ち場へ散っていく。


レイナは。


剣を構えたまま。


丘を登ってくる盗賊たちを見る。


その時。


ミーナとルチアが。


エリシアの左右に立つ。


二人とも。


すでに武器を構えていた。


「エリシア様に。」


ミーナが。


盗賊たちを睨む。


「刃を向ける者は。」


ルチアが。


静かに続ける。


「万死に値します。」


「やりますか?」


ミーナが。


レイナを見る。


「了解です。」


ルチアも。


頷く。


二人の殺気が。


一気に膨れ上がった。


「ちょっと待ってください!」


エリシアが。


声を上げる。


「……?」


全員が。


エリシアを見る。


エリシアは。


丘の下。


盗賊たちの後ろを見つめていた。


「……子供?」


小さな人影。


一人。


また一人。


その姿を。


エリシアは知っていた。


「今朝、村で見た子供たちがいます。」


レイナが。


目を細める。


「……本当か?」


「間違いありません。」


エリシアは。


静かに頷いた。


「私が見ました。」


ミーナとルチアも。


子供たちへ視線を向ける。


先ほどまでの殺気が。


ほんの少しだけ。


揺らいだ。


そして。


盗賊たちへ視線を戻す。


しばらく。


黙っていた。


やがて。


エリシアが。


レイナを見る。


「レイナさん。」


「はい。」


「なんとか……。」


エリシアは。


言葉を選ぶ。


「誰も殺さずに、捕まえてほしいです。」


レイナは。


すぐには答えなかった。


盗賊たちを見る。


「……難しいです。」


「人数はこちらが上です。」


「ですが。」


レイナは。


剣を握り直す。


「奴らは必死です。」


「追い詰められている者は。」


一拍。


「何をするか分かりません。」


そして。


エリシアを見る。


「下手をすれば、エリシア様のお命が危うくなります。」


「……。」


エリシアは。


黙ってしまう。


そして。


隣にいるエリックを見る。


「エリックさんは。」


「どう思いますか?」


エリックは。


盗賊たちを見る。


少しだけ。


首を傾げた。


「……もう捕まえてる。」


「…………は?」


レイナが。


固まる。


エリシアも。


目を丸くする。


「……どういうことですか?」

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


今回は、ガルリィア王国へ向かう途中で起きた夜襲のお話でした。


昼間に何気なく登場した村の子供たち。


その子供たちが、夜になって再び物語に関わってきます。


エリシアが「誰も殺さずに」と願ったところには、彼女らしい優しさを込めました。


そして最後のエリック。


「……もう捕まえてる。」


一体いつ?


そして、どうやって?


次回、その答えが明らかになります。


エリックのスローライフは、なかなか思い通りにはいかないようです。


次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。