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第39話(前編):国境を越えて、ガルリィア王国へ

第39話です。


ミューレでの不作の一件も無事に解決し、エリックたちは次の目的地へ向かいます。


今回から、いよいよ新しい国へ。


旅の途中には、これまでとは少し違った景色や出来事も待っています。


……とはいえ。


エリックは相変わらずです。


それでは、第39話前編をお楽しみください。

エリックは。


ネズミの死骸を見る。


「焼く。」


「え?」


「腐るし。」


エリシアが。


死骸を見る。


そして。


「……そうですね。」


小さく頷く。


「可哀想ですものね。」


エリシアは。


杖を取り出した。


「炎よ。」


杖の先から。


炎が静かに広がる。


何十体ものネズミの死骸を。


一つずつ包み込んでいく。


やがて。


炎が消える。


残ったのは。


わずかな灰だけだった。


エリシアは。


続けて水の流れを見る。


「こちらも……ですね。」


エリックが。


頷く。


「うん。」


エリシアは。


杖を水へ向ける。


「浄化。」


淡い光が。


水の流れを包み込む。


滝から流れ出る水が。


少しずつ澄んでいく。


「……。」


エリシアは。


しばらく水を見つめる。


「これで……大丈夫でしょうか?」


「たぶん。」


「……たぶん。」


エリシアは。


少し苦笑する。


エリックは。


すでに出口を見ていた。


「帰ろ。」


「はい。」


領主の館へ戻る道。


エリックは。

何も言わず歩いている。


エリシアは。

その隣を歩きながら、今日のことを思い返していた。


短剣。


「これにサインすれば使える。」


あの時。


エリックはレイナを煽っていた。


そして。


「そういえば、ボルグはこの辺りに詳しいんだったな。」


結果。


レイナとボルグが組んだ。


「……。」


エリシアは足を止めそうになる。


そして。


自分とエリックは。


湖へ向かった。


「……。」


さらに。


釣りをした。


湖を見て。


花を鑑定して。


水の異常を見つけた。


「……。」


エリシアは。

エリックの横顔を見る。


「まさか……。」


そんな考えが。

頭をよぎった。


レイナさんをボルグさんと組ませたのも。


私と二人きりになるため……?


「……。」


エリシアは自分で言ってから、少し頬を赤くする。


すぐに首を小さく振る。「考えすぎです

ね。」


「ん?」


エリックが。


エリシアを見る。


「なんでもありません。」


「そう。」


エリックは。


それだけ言うと。


また前を向いた。


「……。」


エリシアは。


その横顔を見つめる。


「……やっぱり。」


小さく呟く。


「分かりません……。」


領主館が見えてくる。


エリシアとエリックが。


そのまま歩いていく。


やがて。


館の前に。


人影が見えた。


レイナとボルグだった。


「おかえりなさい。」


エリシアが声をかける。


「どうでしたか?」


レイナが。


首を振る。


「何もなかった。」


「洞穴らしき場所はいくつか見つけたんじゃがのう。」


ボルグも。


肩をすくめる。


「魔物の痕跡はなかった。」


その時。


ガレスとロイドも戻ってきた。


「森には何もなかった。」


ガレスが答える。


「魔物の痕跡もなしだ。」


ロイドも。


大剣を担ぎ直す。


「こっちも収穫なしだ。」


さらに。


ミーナとルチアも戻ってくる。


「私たちも何もありませんでした。」


「勘が外れましたね。」


二人は。


少し悔しそうに笑う。


「そうですか……。」


エリシアが。


三組を見渡す。


そして。


自然と。


エリックへ視線が集まった。


「……。」


レイナが。


エリックを見る。


「で。」


「お前は?」


「俺?」


「何か見つけたんだろ?」


エリックは。


少し考える。


「うん。」


「……。」


全員が。


固まった。


「どこでだ?」


「滝。」


「滝?」


ボルグが聞き返す。


「滝の裏。」


エリックは。


淡々と答える。


「洞窟があった。」


「……。」


レイナが。


額を押さえる。


「私たちは裏山を探したんだが……。」


「森にも何もなかったぞ。」


ガレスが。


苦笑する。


「まさか滝の裏とはな。」


ミーナが。


小さく笑う。


「さすがボス。」


ルチアも頷く。


「やっぱりボスでしたね。」


「別に。」


エリックは。


興味なさそうに答える。


そして。


ふと思い出したように。


ローディンを見る。


「なぁ。」


「はい?」


「賞品。」


ローディンが。


目を丸くする。


「賞品……ですか?」


「釣竿。」


「……釣竿?」


エリックは。


頷く。


「持ってくるの忘れたから。」


「……。」


ローディンが。


しばらくエリックを見る。


「……そうですか。」


「はい。」


エリシアは。


思わず笑ってしまう。


「ふふ……。」


レイナも。


呆れたように笑う。


「結局、それか。」


「うん。」


エリックは。


当然のように頷いた。


ローディンは。


困ったように笑った。


「では。」


「最高の釣竿をご用意いたしましょう。」


「ほんと?」


エリックの目が。


ほんの少しだけ輝いた。


「はい。」


「やった。」


その一言だけ。


エリックは。


満足そうだった。


翌朝。


出発前。


領主館の一室。


大きな机の上に。


一枚の地図が広げられていた。


ローディンが。


地図の上へ指を置く。


「こちらがミューレです。」


そして。


さらに西へ指を動かす。


「ここから先が、ガルディア王国になります。」


エリシアたちが。


地図を覗き込む。


「まず。」


ローディンの指が。


国境付近を指す。


「こちらの国境関所を通過します。」


「その先に小さな町がいくつかありますが……。」


ローディンが。


少し言葉を濁す。


「宿泊はお勧めいたしません。」


「治安の問題ですか?」


エリシアが尋ねる。


「はい。」


「国境に近い町ほど、様々な者が集まりますので。」


「なるほど……。」


ローディンは。


さらに先へ指を進める。


「ですから。」


「国境を越えた後は、次の街まで進み、野営されるのがよいでしょう。」


「その先には鉱山都市があります。」


地図には。


いくつもの街が並んでいる。


「ここから先は比較的大きな街になります。」


「そして。」


指が。


さらに先へ進む。


「こちらの都市には、ガルディア王国の大使館があります。」


エリシアが。


地図を見る。


「そこで休むこともできるのですね。」


「はい。」


「王女殿下をお迎えする準備も、事前に連絡しておけば可能でしょう。」


「ありがとうございます。」


ローディンは。


最後に地図の端を指す。


「そして。」


「この先が――」


一拍。


「ガルディア王都です。」


「……。」


エリシアは。


地図を見つめる。


「ここまでで……十日ほどでしょうか?」


「順調に進めば、その程度かと。」


エリシアが。


小さく頷く。


その隣で。


エリックは。


地図を眺めていた。


「……。」


しばらくして。


「杖。」


「え?」


エリシアが振り向く。


「早く直したい。」


「……。」


エリシアは。


思わず苦笑した。


「そうですね。」


「まずは、無事にガルリィア王国へ入りましょう。」


「うん。」

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


今回から、エリックたちは新たな国へ向かう旅に入ります。


ここまで旅を続けてきましたが、少しずつ物語の舞台も広がってきました。


新しい街。


新しい人々。


そして、これまでとは違う出来事。


そんなものを少しずつ描いていければと思っています。


ただし。


どれだけ舞台が広がっても、エリックの目的は変わりません。


「杖を早く直したい。」


そして、できれば。


「スローライフしたい。」


そんなエリックたちの旅を、引き続き楽しんでいただければ嬉しいです。


次回もよろしくお願いします。

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