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第三十七話(後編): 四コマ目が完成する

前編では、思わぬ事件に巻き込まれたエリックたち。


果たして、二人だけでは足りなかったものとは?


そしてエリックは、何を「足す」のか。


それでは、後編をどうぞ。

「四コマ目。」


「俺が足してやる。」


エリックは杖を振った。


すると。


淡い光を纏った魔法陣が一つ。


ミーナの足元へ飛んでいく。


「……?」


ミーナが視線を落とす。


魔法陣が。


地面に触れる。


「踏め。」


「はい。」


ミーナが。


そのまま踏み込んだ。


――ズンッ!!


「……っ!?」


空気が沈んだ。


ミーナの身体が。


一瞬だけ地面へ引き寄せられる。


「何……これ……。」


「もう一度。」


エリックが杖を振る。


魔法陣が。


再びミーナの足元へ飛ぶ。


「!」


ミーナが踏む。


――ズンッ!!


「……!」


その瞬間。


ミーナが地面を蹴った。


ダンッ!!


今までとは。


明らかに違う。


速い。


そして。


重い。


「――ッ!」


男が剣を構える。


ミーナが懐へ入る。


「遅い!」


男が剣を振る。


ガキィン!!


防壁が受け止める。


ミーナは止まらない。


足元へ。


魔法陣が飛んでくる。


踏む。


――ズンッ!!


「――はぁっ!!」


ドゴォン!!


蹴りが。


男の腹へ叩き込まれた。


「ぐおっ!?」


男の身体が。


宙へ浮いた。


そのまま。


壁へ叩きつけられる。


ドォン!!


「……。」


ミーナが。


自分の足を見る。


「……重い。」


エリックは頷く。


「お前は速い。」


「だから。」


また。


魔法陣を飛ばす。


「重さだけ足した。」


ミーナが。


ゆっくりと笑った。


「……なるほど。」


男が。


壁から身体を起こす。


「ぐ……。」


「まだ……だ。」


ミーナが構える。


ルチアも。


杖を握り直した。


「ミーナ。」


「はい。」


「次は私も。」


ルチアの足元にも。


魔法陣が飛んでくる。


「……?」


ルチアが見る。


エリックが言う。


「お前も踏め。」


「私もですか?」


「うん。」


ルチアが。


魔法陣を踏む。


――ズンッ!!


「……。」


ルチアの身体が。


わずかに沈む。


「なるほど。」


杖を握る。


「攻撃魔法にも使えるんですね。」


「たぶん。」


「たぶん?」


エリックは。


少し考える。


「試してみれば分かる。」


「……。」


ルチアが。


敵を見る。


「では。」


杖を向ける。


「試します。」


魔力が集まる。


先ほどまでとは。


明らかに違う。


空気そのものが。


重くなる。


「《雷槍》。」


バチィィィッ!!


青白い閃光が。


一直線に走った。


男が剣を構える。


「こんなもの――」


ガァン!!


受け止めた瞬間。


男の身体が。


床を滑った。


「な……!?」


ルチアが目を見開く。


「……重い。」


エリックが。


小さく頷く。


「そう。」


「これが。」


一拍。


「四コマ目。」


ミーナが。


楽しそうに笑った。


「エリックさん。」


「ん?」


「もう一つ。」


エリックが。


魔法陣を飛ばす。


「はい。」


ミーナが踏む。


――ズンッ!!


ダンッ!!


今度は。


さっきより速い。


男の目の前へ。


「――ッ!」


ミーナが跳ぶ。


空中で身体を捻る。


そして。


もう一つの魔法陣を踏む。


――ズンッ!!


「はぁぁっ!!」


ドゴォォン!!


男が。


再び吹き飛んだ。


ルチアが。


その着地点へ杖を向ける。


「《雷槍》。」


バチィィィン!!


二人の攻撃が。


完全に繋がった。


男の身体が。


床へ叩きつけられる。


「……。」


静寂。


ミーナが着地する。


ルチアが杖を下ろす。


二人は。


互いを見る。


「……。」


「……。」


そして。


小さく頷いた。


「今の。」


「はい。」


「綺麗でしたね。」


「ですね。」


その後ろで。


エリックが。


ぽつり。


「ほら。」


「四コマ目があると違うだろ。」


二人は。


同時に頷いた。


「「はい、ボス。」」


エリックは。


少しだけ嫌そうな顔をした。


「……まだボスって呼ぶのかよ。」


戦闘は。


終わった。


男たちは。


床に転がっている。


「……。」


ミーナが杖を収める。


ルチアも。


ゆっくりと杖を下ろした。


エリックは。


倒れている男たちを見回す。


「よし。」


杖を地面へ向ける。


淡い光が広がった。


魔法陣が。


男たちの足元へ展開する。


「《拘束》。」


カチッ。


魔法陣が光る。


男たちの身体が。


動かなくなる。


「これでいい。」


エリックは立ち上がった。


「後は領主に任せよう。」


「はい。」


「分かりました、ボス。」


二人が頷く。


三人は。


古びた建物を後にした。


大通りへ戻る。


すると。


少し先に。


エリシアたちの姿が見えた。


「エリック!」


エリシアが気づく。


「どこへ行っていたのですか?」


「ちょっとな。」


エリックは。


それだけ答えた。


「そうですか。」


エリシアは深く追及しなかった。


レイナが二人を見る。


「……何かあったのか?」


「ちょっと悪党を捕まえた。」


「……。」


レイナが目を細める。


「そうか。」


それ以上は聞かなかった。


やがて。


出発の準備が整う。


八台の馬車が。


再び街道へ並んだ。


「それでは、次の町へ向かいます。」


騎士の声が響く。


馬車が動き出す。


ハルネの町を抜け。


次の目的地。

自国最後の町へ。


エリシアの乗る馬車。


エリシアが中央に座っている。


その右隣。


ミーナ。


左隣。


ルチア。


二人とも。


当然のようにエリシアを挟んで座っていた。


「……。」


エリシアが二人を見る。


「今回は、お手柄だったようですね。」


「当然です。」


「はい。」


二人が同時に答える。


その後ろで。


二人の尻尾が。


パタパタ。


嬉しそうに揺れていた。


そして。


二人はエリックを見る。


「ボスのおかげです。」


「ですね。」


「……。」


エリックは。


少し考える。


「まあ。」


「役に立ったならいいけど。」


「はい!」


「ありがとうございます、ボス!」


二人が嬉しそうに頷く。


レイナが。


向かいの席から二人を見る。


「……ずいぶん気に入ったな。」


「はい。」


「当然です。」


即答だった。


エリックは。


窓の外を見る。


ハルネの町が。


少しずつ遠ざかっていく。


「次の町って、どんなところなんだ?」


エリシアが微笑む。


「まだ私も詳しくは知りません。」


「そっか。」


エリックは。


また窓の外を見る。


街道が。


ずっと先へ伸びている。


馬車は。


ゆっくりと。


次の町へ向かって進んでいった。


その頃。


ハルネの町。


食堂裏の倉庫。


「……。」


衛兵が。


扉を開けた。


ギィィ……。


中には。


男が数人。


床に転がっていた。


「……。」


「……。」


衛兵たちは。


言葉を失う。


「こいつら……。」


「生きてるのか?」


「生きてます。」


「しかし……。」


男たちは。


見事なまでにボコボコだった。


「誰がやったんだ?」


「分かりません。」


「この人数を……?」


衛兵が。


周囲を見る。


「……。」


そして。


一人が呟いた。


「本当に……。」


「あの小柄な少女がやったのか?」


その頃。


街道。


次の町へ向かう馬車の中。


エリックは。


懐から小さな巾着を取り出した。


「……。」


巾着を開く。


中に入っているのは。


小さな種籾たねもみ


「……。」


エリックは。


しばらく眺める。


そして。


口元が。


少しだけ緩んだ。


「……へへ。」


巾着を。


大事そうに閉じる。


「……これで、増やせる。」


エリックは。


満足そうに呟いた。

今回は、エリックの「漫画家脳」が少しだけ活躍する回でした。


戦いを見ながら、


「一撃足りない」


ではなく、


「四コマ目が足りない。」


と考えるあたりが、なんともエリックらしい。


そして事件が解決した後。


本人が一番嬉しそうだったのは――。


……やっぱり、お米でした。


次の町では、何が待っているのか。


引き続き、お楽しみいただければ嬉しいです。

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